連載

GENROQ BMW Mの軌跡

X5 M/X6 M

BMW初のクロスオーバーSUVとして

BMWは1999年、SAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)と呼ぶ、同社初のクロスオーバーSUVとなる「X5」を発表した。そのきっかけになったのが、1994年のローバー買収劇だった。そこでBMWはローバーの技術を用いたクロスオーバー開発プロジェクトを始動。パワートレインをはじめとするE39型「5シリーズ」のコンポーネンツと、3代目レンジローバーのオフロード・システムを流用したE53型「X5」を開発したのである。

このE39型X5の特徴のひとつが、当時のSUVとしては珍しい(高級SUVとしては初)モノコックシャシーを採用していたことで、併せて前後トルク配分を38:62と後輪寄りにしたAWDシステム、DSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)、オートマティック・ディファレンシャル・ブレーキ、ヒル・ディセント・コントロールなども採用。敢えてオフロード性能よりもオンロード性能を重視していたことが評価され、当時のF1ドライバーたちがこぞって愛用したことでも話題となった。

1999年に、ル・マン24時間優勝を記念してLMPマシン「V12 LMR」のV12ユニットをデチューンした「X5 LM」がワンオフで製作され、ニュルブルクリンクでのラップレコードに挑戦したものの、特にスポーツモデルが製作されることはなかった。

BMW M社初のクロスオーバーモデルは2代目がベース

2006年7月、X5は2代目となるE70型へとモデルチェンジを果たす。ボディサイズは全長4855mm、全幅1935mm、全高1650mm、ホイールベース2935mmと先代よりひと回り大型化した3列シートが実現。一方、その中身は初代の後期から投入された前後トルク配分をオンデマンドで調整可能なBMW xDriveなど、基本的に先代を進化させたものとなっていた。

そんな2代目X5の特徴は、2008年に派生モデルとしてクーペSUVの先駆けというべき「X6」がデビューしたこと、そして2009年にBMW M社初のクロスオーバーモデルとして「X5 M」「X6 M」がラインナップに加わったことだ。

X5 M、X6 Mともにフロントに搭載するのは、シリンダーバンク・コンプリヘンシブ・マニフォールド(CCM)を備えた4.4リッターV型8気筒DOHC32バルブ・ツインスクロール・ツインターボ“S63”ユニット。その最高出力は555PS/6000rpm、最大トルクは680Nm/1500〜5650rpmで、2.4tの巨体ながら6速MスポーツATを介して、両車ともに0-100km/h加速4.7秒という俊足を記録する。

外観上ではワイドフェンダー、大きく開いたインテークを備えた専用デザインのフロントバンパーをはじめ、サイドステップ、リヤバンパー、エキゾーストパイプなどに専用パーツを採用することで迫力あるスタイリングを実現。また専用ホイールにフロント275/40-20、リヤ315/35-20と異サイズのタイヤを装着するほか、フロント395mm×36mm、リヤ385mm×24mmサイズの、BMW市販車では最大級となるベンチレーテッドディスクブレーキを備えた。

高いスタビリティと軽快なハンドリングを両立

一方、シャシーにはx Driveはもちろん、セルフレベライザー機能を備えたエアサス、左右リヤホイールに駆動力を配分するダイナミックパフォーマンスコントロール、電子制御ダンパーとの組み合わせでフラットな姿勢を保つアダプティブドライブ、ダイナミック・スタビリティ・コントロールを専用にセッティングしたうえで標準装備。高いスタビリティとFRのようなコントロール性を兼ね備えたハンドリングを実現していた。

さらに2010年にはブレーキエネルギー回生システムであるマイクロハイブリッド・テクノロジーを標準装備。2012年には新デザインのLEDヘッドランプやキドニーグリルを採用するなど、内外装をリファインしたマイナーチェンジを行なっている。

加えて2013年モデルからはxDrive35i、xDrive50iにX5 Mと同じワイドフェンダー、スポーツサスペンションなどを装着し、エンジンのパワーアップを図ったMパフォーマンス・パッケージも導入されるなど、M社の手がけたクロスオーバーは内外問わず大きな反響をもたらした。

E92型「M3」

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