連載

GENROQ BMW Mの軌跡

M5(F10)

初のターボチャージャー、初のDCT

5代目となるF10型「M5」。
5代目となるF10型「M5」。

オーソドックスなセダン、ツーリング(ワゴン)に先駆けて5ドアハッチバックのF07型グランツーリスモが2009年9月のフランクフルト・ショーで発表されるという変則的なデビューを飾った6代目「5シリーズ(F10型)」。続く11月にセダン、2010年にツーリングが発表されるのだが、いずれもF01型5代目7シリーズ、もしくはF06型6シリーズ・グランクーペと同じプラットフォームを使用している。

この6代目5シリーズに「M5」が加わったのは、2011年のことだ。ベースとなったのは4ドアセダンのみで、E60型とは異なり4.4リッターV型8気筒DOHC32バルブ・ツインスクロール・ツインターボ“S63B44TU”エンジンを搭載。これは既にX5 M、X6 Mに搭載されていたものをアップデートしたもので、M5としては初めてターボチャージャーを搭載したエンジンとなった。

BMW Mモデルとして初めてバルブトロニックを搭載したこのV8は、圧縮比をX5Mの9.3:1から10.0:1へとアップ。ブースト圧も1.3barから1.5barにアップすることで最高出力560PS/6000〜7000rpm、最大トルク680Nm/1500〜5750rpmを発生。ギヤボックスはM5初の7速DCT(ゲトラグ7DC1600)で、0-100km/h加速4.4秒を標榜していた。

またシャシーでは、専用にセットアップされたフロントストラット、リヤマルチリンクのサスペンションに加えて、DDC(ダイナミック・ダンピング・コントロール)や電動パワーステアリングのMサーボトロニックを採用。さらにDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)の介入を制限してドライバーの腕に委ねるMダイナミックモード、DSCやDDC、エンジンレスポンスなどが変更できるMドライブといったデバイスも搭載されている。

オプションでカーボンセラミックディスクブレーキも

そんなM5の特徴のひとつが、リヤアクスルには可変ロック機構によって左右リヤタイヤに配分されるエンジンパワーを適切に制御し、最大のトラクションを得る専用開発の電子制御式LSDのアクティブMディファレンシャルを標準装備していることだった。

そのほかオプションながらフロント265/35-20、リヤ295/30-20のミシュラン・スーパースポーツ、さらに標準のフロント6ポットキャリパーに組み合わせるカーボンセラミックディスクブレーキも用意されるなど、M5の名に相応しいメニューが用意されている。

エクステリアでは大開口の3分割インテークを備えたフロントバンパーを筆頭に、サイドスカート、リヤスポイラー、リヤディフューザー、そして4本出しのエキゾーストパイプで武装。一方のインテリアはレザーをふんだんにあしらったエレガントなもので、Mのロゴマークが入ったナッパレザーのスポーツレザーステアリングホイールなどが奢られている。

2015年モデルで最高出力600PSに到達

そして2014年には575PSへとチューンしたV8ツインターボを積み、ブッシュ、スプリング、ダンパー、アンチロールバーなどを改良して10mm車高を下げた「M5 コンペティション・パッケージ」を追加。2015年モデルでは、エンジン出力を600PSへとさらにファインチューンしている。

また2015年にはM5誕生30周年を記念した300台の限定車「30 Jahre BMW M5」を発売。その中身はM5 コンペティション・パッケージに準じており、ボディカラーに専用のBMWインディビジュアル・フローズンダークシルバーを採用。日本市場には左右ハンドルをあわせて11台のみが輸入されている。

ちなみにF10型M5の生産も、BMW M社のガルヒング工場ではなくスタンダードの5シリーズと同じドイツ・ディンゴルフィング工場が担当。2016年10月までに1万9533台が製造されているが、そのうち北米市場向けの中の577台が希少な6速MT仕様となっている。

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