連載

GENROQ BMW Mの軌跡

X5 M(F85)
X6 M(F86)

ハイエンドスーパーSUVによる性能競争

2009年に「X5 M」「X6 M」が登場し成功を収めたおかげで、ライバルたちを巻き込んだハイエンドスーパーSUVシーンは、スーパースポーツ顔負けのパワー競争、パフォーマンス競争の時代へと突入する。

そんな中、BMWは2013年のフランクフルト・ショーで3代目となるF15型「X5」を発表した。2935mmのホイールベースをはじめ、前後トレッドの数値が同じであることからも察せられるとおり、その基本骨格自体は先代から大きく変わっていないものの、ヘッドライトとキドニーグリルを一体化したフロントマスクをはじめ、永島譲二が担当したボディデザインはBMWの最新のスタイルへと大きく進化。また軽量化への努力が各部に払われた結果、100kg近いダイエットに成功したほか、エアブリーザーと呼ばれるフロントフェンダー後ろのエアアウトレットの装着などエアロダイナミクス面での改良も図られたことで、ドライバビリティが向上したのもトピックであった。

そして2014年10月のパリ・モーターショーでクーペ版のX6(F16型)がデビューすると、11月のロサンゼルス・ショーでBMWは2015年モデルとして「X5 M」「X6 M」を発表する。

2.3t超ながら驚異的なパフォーマンス

その最大の特徴は、BMW M社が製造する4395cc V型8気筒DOHCターボ “S63B44T2“ユニットを搭載することだ。これはM5やM6に搭載されていたMツインパワー(ツインスクロール)ターボとバルブトロニックを備えるV8ターボの改良版というべきもので、M5を上回る最高出力575PS/6000rpm、最大トルク750Nm/2200〜5000rpmを発生。それはまたBMWの4輪駆動モデルとしては史上最もパワフルなエンジンで、Mモデル初となる8速トルコンATを介して、X5 M、X6 Mともに車重2360kgの巨体ながら0-100km/h加速4.2秒という驚異的なパフォーマンスを実現していた。

それでいながら、エンジンオートスタート&ストップ機能の装着や、各部の効率化を図ることで燃費性能が従来比20%向上。CO2排出量も258g/kmと同様に20%の削減を果たしているなど、環境性能にも配慮がされているのも特徴である。

一方シャシーでは、前後アクスル間の駆動を0〜100%の範囲で配分できる(さらにダイナミック・パフォーマンス・コントロールを通じて左右にも最適な配分が可能)専用チューンのBMW xDriveを装備。さらにフロントダブルウィッシュボーンサスペンションを改良してキャンバー角を増加させるとともに、ベアリング類を強化するなど、ハイパワーと重量に耐えるための改良も施されている。

スポーティで高級なMモデルらしい世界観

インテリアにおいては、ブラックパネルテクノロジーを用いたM専用メーターパネル、BMW Individualメリノレザー採用のMスポーツシート、レザーフィニッシュダッシュボードを標準装備しており、スポーティで高級なMモデルらしい世界観を演出。

さらに歩行者検知機能付き衝突回避・被害軽減ブレーキ、前車接近警告機能、レーンデパーチャー・ウォーニング、BMWヘッドアップディスプレイ、そして車載の通信モデュールを介して接続するBMW SOSコールといった安全装備が充実しているのも特徴といえる。

これらの改良はX6 Mにも同様に施されている。なおX5 MはF85型、 X6 MはF86型とモデルナンバーも独立したものが与えられた。

X5 M、X6 Mともに日本市場には発表直後に導入を開始。2019年の生産終了まで販売が続けられたが、輸入車としては珍しくハンドル位置を左右でセレクトできるようになっていたことでも好評を博した。

BMW X6 M(左)とX5 M

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