PIRELLI P ZERO
耐摩耗性とグリップ力が劇的に進化

1985年にランチア・デルタS4のライン装着タイヤとして誕生したピレリPゼロ。世界初の超扁平タイヤ“P7”の後継モデルといってもいい位置づけだったPゼロは、フェラーリ、ランボルギーニ、マクラーレン、アストンマーティンなどの名門を足下から支えることにより、現在に至るまでピレリのフラッグシップモデルとして君臨してきた。
そんなPゼロにはスーパースポーツカーメーカーだけでなくプレミアムカーブランドからも熱いラブコールが寄せられた結果、いまではプレミアムモデル用のPゼロ、スーパースポーツカー向きのPゼロR、公道用タイヤであるにもかかわらずサーキット走行もこなすPゼロトロフェオRS、さらには環境性能に特に配慮したBEV向けのPゼロEと4モデルをラインナップ。プレミアムカーやラグジュアリーカーのセグメントではライン装着タイヤの50%以上がPゼロファミリーで占められているそうだ。
先ごろ、ファミリーのコアモデルというべきPゼロが5世代目にモデルチェンジしたことを受け、その技術的バックグラウンドを学ぶとともに試乗する機会を得たので、当日の模様を報告しよう。
一般道での際立つ静粛性

新型Pゼロはコンストラクションとトレッドパターンの開発に重点を置くとともに、コーナリンググリップを向上させるためグルーブと接地面を改良。結果としてブレーキ性能と耐摩耗性能が改善され、タイヤのライフサイクルを通じて安定した性能を発揮するという。
今回は新しいPゼロを履いたメルセデス・ベンツGLE450d(サイズは315/40R21)でコモ湖周辺の一般道を試乗した。
その印象は、とにかく乗り心地が快適で静か、というもの。しかも、ただゴツゴツ感が薄いだけでなくタイヤ自体のダンピングも良好で、路面のギャップを乗り越えてもイヤな微振動が残らなかった。
Pゼロのロードノイズが低かったのは、ピレリ独自の技術「PNSC」の効果でもあったはず。これはトレッド面の内側にスポンジを貼り付けることで、タイヤ内部の共鳴現象を抑制するもの。今回は技術者からPNSCに関する説明を受けたが、一つひとつのスポンジが10cmから20cm程度のランダムな長さとされているのは、一定周期としないことで共振を防止するのが目的という。
Pゼロファミリーの実力を存分に感じた試乗会

今回はコーナリング性能を試すような機会はなかったものの、高速道路では不満のない直進性と微舵応答を示し、長距離走行でも疲れにくいタイヤであるように思えた。
車両の持ち味を殺すことなく、むしろ快適性や静粛性などの改善に貢献するタイヤ。Pゼロが幅広いメーカーから支持を得ているのは、この辺に秘密がありそうだ。
REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/Pirelli
MAGAZINE/GENROQ 2025年8月号
【問い合わせ】
ピレリ・ジャパン
https://www.pirelli.com/tyres/ja-jp/car/homepage
