LAND ROVER DEFENDER OCTA
肝要は6Dダイナミクス・サスペンション



昨年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで初披露された「ディフェンダー・オクタ」は、ディフェンダー史上もっともパフォーマンス志向で、かつタフネスを極めたモデルである。グレード名は強靭性、希少性を象徴するダイヤモンドの原石が持つ八面体結晶「オクタヘドロン」に由来する。
そんなオクタの試乗機会を得た。しかも試乗場所は、ディフェンダーが本領を発揮する環境、つまりオフロードコースだ。このSUVがその名に恥じぬ性能を備えているかチェックしてみよう。
オクタは最高出力635PS/6000〜7000rpm、最大トルク750Nm/1800〜5855rpm(ローンチコントロール作動時800Nm)を発揮するBMW製4.4リッターV8ツインターボエンジンに8速ATとモーターを組み合わせるマイルドハイブリッド車(MHEV)である。だが、その肝要は動力性能だけではなく、油圧でロール、ピッチ、ダイブをリアルタイムで可変制御する6Dダイナミクス・サスペンションシステムにある。
ちなみに前述のパワートレインからサスペンションに至るまで、実は「レンジローバースポーツ SV」に採用されたパッケージである。すでにリポートしたように、富士スピードウェイのショートサーキットでSUVらしからぬ挙動を披露したレンスポSVのオフロード版なのである。
ノーマルモードから発揮する高性能



その高性能はエクステリアからも滲み出ている。ベースとなった「ディフェンダー110」と比べて30mm高められた全高、70mmワイドになった全幅、さらにエンジン冷却性を高めるために開口部が拡大したフロントグリルやアプローチ/デパーチャーアングルを改善する前後バンパーを備える。なお前述の車高もあって、ランプブレークオーバーアングルも高められた。
今回の試乗車は、南アフリカの国際試乗会にも供された個体で、グッドイヤー・ラングラーのラギッドテレーンタイヤを装備していた。先導車に続いてオフロードコースに入る。インストラクターが乗る先導車はノーマルのディフェンダー110で試乗中無線で指示される。
まずはノーマルモードで走り出した。前日まで一般顧客向け試乗会が開催されていたため、コースは轍が深く掘れて過酷な路面となっていたが、ノーマルモードでも走破性は十分高く、伸びやかなストロークが路面の情報を正確に捉え、車体の挙動を巧みに安定させて安心感があって走行が楽しい。しかし、無線の指示でステアリングのホーンパッド下部にあるオクタスイッチを長押ししてオクタモードへ切り替えると、その走りの安心感と楽しさは倍増した。
2.6t超とは思えぬブレーキング




オクタモードでは、スイッチとパドルが赤く点灯し、車両全体が戦闘態勢に入ったことを教えてくれる。滑りやすい路面でもトラクションがいいのは、足まわりがダート走行に最適化されたからだ。硬く引き締まるのではなく、しなやかに強く、路面を確実に捉える。大きなギャップのある直線をハイスピードでドシンバタンと越える際も、ノーマルよりむしろ乗り心地が良い。
加速時もアクセルレスポンスが鋭くなってエンジンが活発になり、4輪が的確に駆動力を発揮している。400mm大径フロントディスクを採用するブレンボ製ブレーキもさることながら、ABSの制御がややロックを許容するダート向きのセッティングになり、2.6t超とは思えぬブレーキングができる。
コーナリングでもロック・トゥ・ロック約2.4回転というクイックなステアリングギアレシオもあって、旋回性は軽快だ。ラリーに夢中だった学生の頃、ダートコースを駆け回った青春を思い出してしまった。
標準モデルとは桁違いの実力


それと較べるとノーマルモードは、振り返れば接地感のなさからくるふわつきがあり、加速時はトラクションも不足していたと感じた。あいにく比較試乗はできなかったが、先導する標準のディフェンダー110では、オクタと同じペースで荒れた路面の直線を走ると、クルマが道を外れてどこかに飛んでいってしまうような不安感があったという。
約2100万円という価格はまさに“走るダイヤモンド”と言っていい。なお、今回試乗したのは2025年モデル(MY25)だが、2026年モデル(MY26)ではマイナーチェンジによって、タッチディスプレイが13.1インチになるなど内外装に改良が施され、価格もMY25の2099万円からややアップして2105万円となっている。未確認だが、もしかするとMY26の方がブラッシュアップされているかもしれない。納期を確認して、在庫(があれば)MY25で決めるか、MY26を待つかよく吟味して欲しい。
PHOTO/平野陽(Akio HIRANO)
ランドローバー ディフェンダー オクタの走りを動画でチェック!
SPECIFICATIONS
ランドローバー・ディフェンダー・オクタ(MY25)
ボディサイズ:全長4940×全幅2065×全高2000mm
ホイールベース:3020mm
車両重量:2610kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:4394cc
エンジン最高出力:467kW(635PS)/6000〜7000rpm
エンジン最大トルク:750Nm(76.5kgm)/1800〜5855rpm
モーター最高出力:13kW(18PS)/5000rpm
モーター最大トルク:42Nm(4.3kgm)/2000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
タイヤサイズ:275/60R20
0→100km/h加速:4.0秒
最高速度:250km/h
車両本体価格:2099万円
