Volkswagen ID.Buzz

ノーマルとロングの2タイプがあり

往年のVWタイプII、通称「ワーゲンバス」をオマージュしたEVミニバンが上陸。2022年にドイツ本国で発表されてから首を長くして待っていたファンも多いはずだが、どうやら待っていた甲斐はあったようだ。このクルマ、それほど中にも外にも魅力が溢れている!
試乗したのはロングホイールベース版。ボディサイズは全長4965mm×全幅1985mm×全高1925mm。

「ID.バズ」の受注が好調だ。2025年の予定台数は早々に完売。追加で百数十台をオーダーしたという。ちなみにどのような車種からの乗り換えが多いのかを聞いたところ、あまり顕著な傾向はないそうだ。多少トゥーランやシャランといったVW系ミニバンの比率は高いようだが、アルファードなどの国産高級ミニバンからテスラ・モデルXといった電動SUVまで、ありとあらゆる層がサイズや動力を気にすることなく来ているとか。まさにクラスレス。そういう意味でもワーゲンバス、タイプIIの再来といえそうだ。個人的には価格の高さに驚いたけれど、全く杞憂だったようです。

さて、そんなID.バズに今回公道で試乗した。まずは日本仕様の概要について触れておこう。VWのEVとしてはSUVのID.4がすでに上陸済みだが、このID.バズはそれに続く第2弾。プラットフォームはシリーズ共通の「MEB」で、ボディは全長約4.7mのノーマル版と同5mのロング版が導入される。ドイツ本国には黒バンパーの商用車仕様からスポーティな「GTX」まで幅広いグレードが用意されるが、その中から日本仕様は「Pro」というGTXに次ぐ上級モデルが選ばれた。

モーターはリヤアクスルのみに設置され、後輪を駆動。その意味ではタイプII同様RRだ。モーターはID.4よりも強力な286PS/560Nm仕様で、これはより大きく重い車体に対応したものだろう。例によってフロア下に敷き詰められるバッテリーの容量は、ノーマルが84‌kWh、ロングが91‌kWh。“公称”航続距離はそれぞれ524kmと554kmとなる。充電は普通200Vと急速CHAdeMOに対応する。

試乗したのはロングの方で、オプションのラグジュアリーパッケージ(パノラマガラスルーフ&ハーマン・カードンサウンドシステム)を装着していた。ホワイト&イエローの2トーンカラーもオプション。総額1051万8000円。なかなかの高額車である。

上質な乗り味はID.4以上

インパネはビジネスライクだが、センスのいい色使いや素材の配置もあって安っぽさは感じさせない。ナビは装備されず、Apple Car PlayやAndroid Autoの機能を利用する。
インパネはビジネスライクだが、センスのいい色使いや素材の配置もあって安っぽさは感じさせない。ナビは装備されず、Apple Car PlayやAndroid Autoの機能を利用する。

とはいえ内装はチープ・シックな雰囲気で、ハードプラスチックが遠慮なく使われているし、シートもレザーではなく普通のファブリック。一方で内装パーツの堅牢な建て付けや成形部品のしっかりとした肉厚は、かつてのドイツ車を思わせるオーバークオリティぶりだ。このあたりはVWの商用車部門が担当したことが影響しているのかもしれない。いわゆる“いい道具感”は期待以上。ガンガン使ってナンボというわけだ。

街中を走らせて印象的なのは、駆動系のフリクション感が少ないこと。まるで精度の高いギヤやベアリングにクルマが乗っているような、と言えばなんとなくお察しいただけるだろうか。静粛性の高さや2.7tを超えるボディのゆったりとした動きも相まって、ID.4よりも乗り味はグンと上質な印象だ。

動力性能もこの乗り味に忠実にチューニングされており、アクセルの踏み込みに対して常に期待を少しだけ上回るような、適度な速さを提供してくれる。だからガンと踏み込んでも首を後ろへ持って行かれるような強烈な加速を披露することはない。またアクセルから足を離した途端、グッと回生が働いて減速するようなこともない。走りは全般的にエンジン車に近いフィーリングだ。ただしこれはPRND/Bのセレクターで「D」を選んだ場合のこと。よりEVらしく走りたいなら「B」を選ぶと回生が強くなり、いわゆるワンペダルに近いドライブが可能となる。

タイプⅡの精神性まで宿すクルマ

ロングはホイールベースと全長がノーマルより250mm長い。試乗車の前後重量配分は車検証ベースで前1330kg、後1400kg。ややリヤヘビーだがハンドリングはそれを意識させないものだった。
ロングはホイールベースと全長がノーマルより250mm長い。試乗車の前後重量配分は車検証ベースで前1330kg、後1400kg。ややリヤヘビーだがハンドリングはそれを意識させないものだった。

ハンドリングは低重心と良好な前後重量配分(49対51)のおかげか、クセがなくごく自然。とはいえ車重はヘビー級だから調子に乗るとアンダーステアが強く出るけれど、アシがそれほどガチガチに固められていない割にロールは少ない。適度に飛ばすくらいなら気持ちよくコーナリングを楽しめるだろう。もう少し前後方向のピッチングは抑えて欲しかった気もするが、これもよく観察すればという話。普通に乗っている限りはほとんど気にならないはずだ。

それにしても、往年の名車を最新のEVで甦らせるとはなんとウィットに富んだ商品企画だろう。しかもちゃんとタイプIIの精神性が受け継がれているじゃないか。だからカタチが気に入ったのなら即買いでOK。きっと期待以上のカーライフを送ることができるに違いない。

REPORT/市原直英(Naohide ICHIHARA)
PHOTO/神村 聖(Satoshi KAMIMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2025年9月号

SPECIFICATIONS

フォルクスワーゲン IDバズ・プロ・ロングホイールベース

ボディサイズ:全長4965 全幅1985 全高1925mm
ホイールベース:3240mm
車両重量:2720kg
モーター最高出力:210kW(286PS)/3581-6500rpm
モーター最大トルク:560Nm(57.1kgm)/2100-5500rpm
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前ストラット 後4リンク
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ドラム
タイヤサイズ:前235/50R20 後265/45R20
最高速度:160km/h
0-100km/h加速:7.9秒
車両本体価格:997万9000円

 【問い合わせ】
フォルクスワーゲン カスタマーセンター
TEL 0120-993-199
https://www.volkswagen.co.jp/

 

888.9万円から! 日本市場唯一のミニバンEVはドイツ製。 現代版ワーゲンバス『ID.Buzz』遂に国内で販売開始!

VWの象徴的存在であるワーゲンバス(タイプ2)がEVとして現代に蘇った。日本で買える唯一のEVミニバンで、6人と7人乗りの2タイプを設定する。