16歳から10数モデルのバイクを乗り継いできた筆者が、2020年に辿り着いたモデルは「CT125」だった。すでに50代も半ばに差し掛かっていたし、自分のライフスタイルを考えた時に下駄代わりになる乗り物があるといいなと思ったからだ。さらにかつてよりCT110に憧憬があり、モーターショーで発表されたプロトモデルに一目惚れしてしまったのである。

果たしてCT125は非常によくできたバイクで、様々な“弱点”も含めて愛おしいものだった。何よりカスタムパーツが充実しており、自分でイジるのも手軽なのである。10代20代の頃は、とにかく毎日バイクに乗って、毎日何かしらをイジるという生活だったが、社会に出ると段々と物ぐさとなり、整備やカスタムはバイク店に丸投げというのがずっと続いていた。

CT125は筆者を10代の頃に戻してくれた車体であり、オヤジのバイク趣味にはちょうどいいモデルだった。自転車の延長のような構造なので、自分でイジるのにはそれほど敷居が高くない。最近はプロの整備の様子を詳細に解説している動画がYouTubeにアップされているので、それを見ておけばまず失敗することもない。

しかし、CT125ライフを楽しんでいくうちに、自分の中に大型バイクへの帰還という禁断の欲望が湧いてきてしまった。それを抑えきれずに購入してしまったのが、CB1300スーパーフォアだった。

購入はホンダドリームだが、納車時に店長に宣言した。「おおがかりな修理以外のメンテナンスは自分でやる」と。

バイク乗りには2通りの考え方がある。「メンテや修理を自分でやるのは不安だし、きっちりと仕上げたいからプロショップに任せる」というものと、「自分で日頃から面倒を見ていれば、愛車の状態を自分で把握できる」という考え方。クルマの場合は電子制御化、アッセンブリー化が進んで、自分でイジれる部分がどんどん減っているが、その点ではバイクはまだまだイジれる余白が大きい。その余白をせっかく楽しむのも、バイク趣味なのではないかと思った次第なのだ。

筆者の仕事仲間の中には、サスペンションの分解整備や点火タイミングの調整まで行う猛者がいるが、残念ながら自分はそこまでの知識と道具がない。CT125同様に、まずはできることからスタートすることにした。

その中で頻度が多いのが、やはりオイル交換だ。ちょっとした点検がてらショップに依頼というのもいいが、実はこれだと交換頻度が下がるのでは…と筆者は思う。バイクのオイルは、エンジンのみならずトランスミッションにもはたらいているため、クルマよりも交換の重要度が高い。劣化したオイルを使い続けていると、ギアの入りが悪くなり、さらに劣化するとクラッチも滑り始めてしまう。

使うオイルのチョイスも大切だ。バイクの走らせ方によってオイルの性格も変える必要があり、どのブランドのどのオイルを使うかは実に悩ましい。自分はサーキットを走らないツーリング派。エンジンを回すのはせいぜいワインディングロードだけだ。

純正指定はホンダの「ウルトラG3」だが、これが純正のわりには高い。1L 2200円ほどで、ショップで交換すると工賃込みで1万円近くになってしまうのだ。ショップのスタッフに聞いても、「有名ブランドの100%合成油を入れても、そんなに値段は変わらない」というのだ。

紆余曲折の末に、筆者はエルフ「モト4テック」を選んだ。これも最初は4Lずつ買っていた。しかしどんどん高騰していったので、ペール缶、つまり20L買った方がリーズナブルということに気がついた。缶は邪魔になるが、中途半端な“余り”が出ることが気にならないし、CT125と共有できるのでいちいち購入する手間もなくなった。

ちなみに、自分でオイル交換をするためには、以下のものを揃える必要がある。

・エンジンオイル
・オイル受け皿
・エンジンオイルフィルター
・フィルターレンチ
・オイル受け皿
・オイルジョッキ
・ドレンボルトワッシャー
・トルクレンチ
・廃油処理ボックス(袋)
・パーツクリーナー

廃油処理ボックスとパーツクリーナーの2点はなくても何とかなるが、あとは必要なものばかりだ。ちなみに、筆者はCBのオイル交換をきっかけにトルクレンチを購入したのだが、これは正解であった。ボルトの締め付けは「手加減」でも止むを得ないと思っていたのだが、やはり指定の締め付けトルクで整備しておくと安心感が違う。重要保安部品まわりは、なおさら。

オイル交換は真夏を除けば、オフタイムにやるには手軽な“娯楽”だ。ドレンから流れ出る廃油を見たら、エンジンオイルの管理がいかに大切かを理解できるし、一生懸命エンジンが働いていることに対する愛おしいさも湧いてくる。

ちなみに、自分は走行距離4000kmごと、もしくは3か月ごとで行っている。あまり走行距離が伸びない時もあるが、オイルは自然と酸化、劣化するので、季節ごとに換えるようにしている。換えないと、エンジンやミッションのフィーリングに如実に影響が出てしまう。

オイル交換以外にも、各部の増し締め、チェーンの張りチェック、プラグの清掃、ブレーキパッド&キャリパーの分解清掃、エアクリーナーの清掃なども休日の楽しみとして定期的に行ってきた。これらの作業行程やコツは、すべて動画で拾得。数十年前に比べれば、実に便利な時代になったものである。

ちなみにこれらのメンテをホンダドリーム店に頼めば、このような工賃が発生する(https://honda-dream-japan.co.jp/wp-content/uploads/2024/09/motorcycle-maintenance-fee_2.pdf)。それに、プラグやエアクリーナーの清掃といった簡単整備は、ショップではあまりやりたがらない。それぞれのバイクライフがあるので一概には言えないが、セルフメンテは間違いなく「楽しい趣味時間」+「工賃節約」の一石二鳥だと筆者は思っている。

加えて、自分でメンテをやるようになると、「工具趣味」も広がっていく。基本的な工具に加えて、それぞれの整備作業をラクにしてくれる専用工具が欲しくなっていくからだ。ひとつ買い、ふたつ買いとしていくうちに、用もないのに工具店にいく自分がいた。工具にはまるとは、数年前までは想像もつかなかった。

さて、なんだかんだと楽しくやっているうちに、あっという間に初回車検の年になった。車検に関しても、迷うことなく「ユーザー車検」を選択。ユーザー車検に臆するライダーは多いと思うが、転倒や事故を起こしていない良好な状態であれば、筆者はユーザー車検で十分だと思う。

すでにクルマでは何度もユーザー車検を体験しているので、特に抵抗は感じないのだが、そうではない人もいると思う。やはり愛車の整備、状態に不安を感じるのはもっともだ。そこで、ユーザー車検でも2タイプがあることを話していこうと思う。

まず、法定点検はバイク店でやってもらい、陸運局(自動車検査登録事務所)での検査は自分で受けるという方式だ。ちなみに法定点検は、車検を受ける前、後のどちらでも構わない。後でやってもらうという場合は、陸運局で書類提出時に「整備は後でやります」というひと言で済む。すでに整備済みの場合は、ショップでもらった「点検整備記録簿」を、申請書類などと一緒に提出すればOK。

この方式であれば、不安な整備はプロに任せて、申請、受検のみ自分でやるので安心感がある。ちなみに、ホンダドリーム店の法定点検料はCB1300SFの場合で26000円。ショップに車検代行を依頼すると、さらに25300円かかる。これ以外に、下記の費用が車検には必要だ(2025年7月現在)。

・保安確認検査料/8800円
・重量税/3800円
・自賠責保険/8760円

これにパーツ交換が必要な場合、そのパーツ代と交換工賃が必要となる。

もし自分で車検のすべてを行えば、相当なコスト圧縮になる。誤解されているフシがあるが、いわゆる法定点検は整備士有資格者でなく個人で実施しても問題ないのだ。もちろん、点検項目は多岐にわたり、実施後の状態は自己責任ということになる。だが、点検整備記録簿をネットからダウンロードして、これに沿って確認していけばいいのである。

ちなみに、ヘッドライトの光軸調整は専用の装置がないとできないので、陸運局周辺にある「予備検店」でやってもらおう。これには3000円程度の費用がかかる。

検査ラインに入る時は、事前に検査員に「ユーザー車検で、不慣れです」と言っておくと、やることを親切丁寧に教えてくれる。検査時間は、わずか15分ほど。もし不具合があった場合、整備後に再検査となるので、できれば午前中に受けた方がいい。

自分は、すべて自分で行ったので、車検費用2万5000円弱で済んだ。ショップに頼んだ時よりも5万円以上節約できたことになる(車検費用なショップによって異なります)。旧車や2回目以降の車検ではプロによる整備が必要なケースがあると思うが、新車初回車検でノーマル車両の場合は、事故などがなければまず問題が出ることはないはずだ。

筆者は車検にあたって、というか納車から3年経ったこともあって、基本的なパーツのみ交換しておいた。

・スパークプラグ/NGK イリジウムIX 1500円×4本
・エアクリーナー/純正タイプ 1800円
・チェーン/CYCシールチェーン イエロー 9300円

これらのパーツ交換も、工賃は十二分に節約できたはずだ(ホンダドリーム店の場合、工賃:14300円/1時間)。同時に充実したオフタイムも過ごせた。

旧車や輸入車の場合は、それなりの道具や設備が必要なケースもあるが、最近のバイクや小型車であれば、まずはできることは自分で整備することをオススメしたい。まずは丁寧な洗車でもいい。バイクをいつも“見ている”ことでリスクヘッジになるだけでなく、緊急時対応への知見も増える。そして何より、愛車への愛情が深まる。

最後に、自分でメンテする場合に注意しなければいけないこと3つをご紹介しておく。

1:ネジ類は絶対に無理に締め込まない
2:各パーツは必ずピッタリ装着できるようにできている
3:駆動部への油、ケミカル剤は極力使わない