Lexus LC500
2UR-GSEが購入できる数少ない選択肢


燃費やエミッションの規制が日に日に厳しくなる中、世界的に整理の対象となってしまった自然吸気V8ユニットだが、そこを踏み留まってきたのがレクサスだ。セダンの「IS500」とクーペの「RC F」、そして「LC500」に搭載している2UR-GSE型はもはや絶滅危惧種とみられ、彼らのラインナップにおける個性の源だった。
が、今年に入り、「RC F」と「IS」はこの5.0リッターV8ユニットの事実上終了を告げる限定車を相次いで設定。「RC Fファイナルエディション」については既に規定数を完売し、「IS500クライマックスエディション」の完売も時間の問題とみられている。
と、そんな機会で発表されたのが「LC」のマイナーチェンジと、それに伴い設定された限定車「ピナクルエディション」だ。ちなみにピナクルの意は頂点。ファイナルからクライマックスときてピナクルと、思わせぶりな命名の裏に終了の思惑があるか否かは推察するほかないが、現時点で2UR-GSEが買える数少ない選択肢であることは間違いない。
限定100台の半数はレクサスオーナー向け


ちなみにピナクルエディションが設定されるのは「LC500クーペ」と「LC500コンバーチブル」で、台数は各々100台。うち半数はレクサスの既納オーナーに向けて商談を開始しており、一般向けには各々50台が割り当てられ8月7日まで店頭で抽選の申し込みを受け付けた。カタロググレードについてはその後も販売は継続される見込みだ。
今回の「LC」のマイナーチェンジでは、ドアとピラーの締結力を高めるべく、ドアストライカーの土台部の肉厚を1mm増やし、それに合わせてダンパーの設定を変更したという。ピナクルエディションはその仕様をベースに、部品や組み付けの高精度化を果たした2UR-GSEユニットと手作業でバックラッシュ調整を施したリヤLSDを採用、フロントカナードとカーボンリヤウイングなどの空力架装が加えられている。更にクーペの側はリヤ側にアルミ中空サスメンバーを採用、ダイナミックリヤステアを搭載するなどスポーティネスのさらなる向上に拘った。
改良を重ねて生まれた清冽な乗り味


今回の試乗機会ではドアストライカーの変更による乗り味の違いも確認できたが、わずか1mmの土台肉厚が乗り味の違いに現れることに驚かされた。具体的には操舵ゲインの立ち上がりがより精細化されたほか、走行時のドアの揺れからくる低周波のこもり感が軽減されたことによるすっきり感の向上といったところがはっきりと伝わってくる。
これをベースに空力特性の変化を織り込みながら足まわりを再チューニングされたピナクルエディションは、足まわりやフロアからの微振動も限りなく抑え込まれた清冽な乗り味をみせてくれた。凹凸を通過する際のバネ下の追従性も高く、安心してアクセルやブレーキを踏んでいける柔軟性の高さが備わった。これは度重なる改変の賜物でもあるだろう。
この熟しきったシャシーと自然吸気V8との組み合わせが、旧態的な一面もあれど官能体としてのクルマにおける頂点像を見せてくれることは間違いない。こんなクルマが買える機会が確実に狭まりつつあるのはなんとも惜しいことだと思う。
REPORT/渡辺敏史(Toshifumi WATANABE)
PHOTO/LEXUS
MAGAZINE/GENROQ 2025年9月号

SPECIFICATIONS
レクサスLC500ピナクル
ボディサイズ:全長4770 全幅1920 全高1345mm
ホイールベース:2870mm
車両重量:1930kg
エンジン:V型8気筒DOHC
総排気量:4968cc
最高出力:351kW(477PS)/7100rpm
最大トルク:540Nm(55.1kgm)/4800rpm
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前245/40R21 後275/45R21
車両本体価格:1455万円
【問い合わせ】
レクサスインフォメーションデスク
TEL 0800-500-5577
https://lexus.jp
