カワサキ ニンジャ1100SX SE……198万円

カワサキケアモデル、2025年3月29日発売
撮影車両は純正アクセサリーのパニアケースキット(18万7308円)やラージウインドシールド(クリア、2万4420円)、フロントアクスルスライダー(1万1110円)、フレームスライダー(1万9470円)、タンクパッド(8580円)、ニーパッド(8580円)などを装着。試乗もこの状態で行った。なお、トップケースキット(17万7430円)も用意されているが、パニアケースとの同時装着は不可だ。
車体色は写真のエメラルドブレイズドグリーン×メタリックディアブロブラックの1種類。STDモデルにはグリーンを主体としたカラーリングがないので、もしカワサキらしい色が欲しいのであれば、SEを選ばざるを得ないことになる。なお、車重はSEの方が1kg軽い。
同日に試乗したニンジャ1100SX(177万1000円)。基本的な走りのインプレッションはこちらをご一読あれ。

純正アクセサリー追加で真のスポーツツアラーに変身

「パーソナルジェットファイター」をコンセプトに、初代となるニンジャ1000(欧州名:Z1000SX)が発売されたのは2011年のこと。欧州ではパニアケースを標準装備した「Z1000SXツアラー」や、トップケースを装着した「Z1000SXシティ」といったバリエーションモデルも販売された。また、2024年には初代ニンジャことGPZ900Rの誕生40周年を記念して、「ニンジャ1000SX 40th Anniversary Edition」という特別仕様も登場。そして今年は、ニンジャ1100SXの上位モデルとして「SE」が用意された。

STDモデルとの違いは、ブレンボ製のフロントブレーキセット(キャリパー、ディスク、ステンメッシュホース)とオーリンズ製のS46ショックアブソーバー、そして専用のカラーリングだ。パーツリストで単体価格を調べつつ計算したところ、差額20万9000円はお買い得と言える内容だった。

フロントフォークはφ41mm倒立式で、1本あたりのパーツ単体価格はSTDモデルと同じ6万4790円だが、SEのボトムパーツには「SHOWA」の鋳出し文字が入る。フロントキャリパーはブレンボ製のM4.32で、パーツ単体価格は4万4220円。ちなみにSTDモデルのキャリパーは2万9370円だ。ブレーキホースはステンメッシュを採用。マスターシリンダーはSTD、SEとも共通だ。標準装着タイヤはブリヂストンのバトラックス ハイパースポーツS23。
フロントフォークはフルアジャスタブルで、プリロードと伸び側減衰力のアジャスターは左右両側のトップキャップに、圧側減衰力は右側のボトムパーツに設けられている。
リヤサスペンションはホリゾンタルバックリンク式のモノショックで、SEはオーリンズ製のS46ショックアブソーバーを採用。STDモデルのリヤショックの単体価格が7万3920円なのに対し、オーリンズは21万78000円となっている。どちらも伸び側減衰力および油圧コントローラーによるプリロードが調整だ。

今回はSTDのニンジャ1100SXと同日に試乗し、SEの方は純正アクセサリーを装着したままとした。乗り比べて最初に感じたのは、基本的なハンドリングの差異が非常に小さいことだ。これだけ大きなパニアケースを追加しているのだから、多少なりとも操舵に影響がありそうなもの。もちろん、どれだけ荷物を入れたかによっても変わるが、バイクから降りる際に足がパニアケースにぶつかった瞬間、「あっ、こっちがSEだったか」と思い出すぐらいには違いが少ないのだ。これは純正アクセサリーも含めてハンドリングが煮詰められている証拠であり、特にこのパニアケースは実用性も込みで推せる逸品だ。

パニアケースの容量は片側28L。フルフェイスのヘルメットが収納できるほど大きく、ワンキーシステムによりイグニッションキーでの解錠・施錠が可能だ。パニアケースを取り付けた状態でスタイリング設計を行っているのでまとまりが良く、さらにクリーンマウントパニアシステムによって外した際にも美観を損ねるようなステー類が残らないのもポイントだ。

標準装着品と比べて24mmアップするラージウインドシールドについては、高さだけでなく面積もワイドになるので、体感的な防風効果は2~3割程度アップする。ただ、個人的には標準ウインドシールドによる前方視界の広さも捨てがたいので、ロングツーリングや寒い時期の移動など、シチュエーションに応じて付け替えるのが良さそうだと感じた。

ラージウインドシールドはクリア(2万4420円)とスモーク(2万6510円)の2種類。このほかに標準装着品と同形状のスモークシールド(1万7270円)も用意する。

STDモデルも優秀だが、より快適性を求めるならSEもアリだ

ニンジャ1100SXは、STDモデルでも前後サスペンションは優秀だ。荒れた路面を平滑に感じさせるほど作動性が良く、ワインディングロードではスムーズかつ自然に車体がピッチングする。これに対してSEのオーリンズは、より動きが上質であり、動き始めからしっとりと減衰力が発生するイメージだ。

試乗したSEは、パニアケースによる慣性ダンパー効果もあってか、ギャップ通過時にはバネ下だけがススッと動いてショックを吸収してくれるので、これも上質に感じさせる要因だろう。一方で、峠道でペースを上げても破綻を来すことはないことから、STDのリヤショックに対してよりワイドレンジに対応できるのがオーリンズと言えそうだ。

ブレンボ製のブレーキセットについては、STDモデルともまだ十分に慣らし運転が進んでいなかったようで、大きな違いは感じられなかった。それだけSTDのブレーキセットが優秀なのか、それともKIBS(カワサキ・インテリジェントアンチロック・ブレーキ・システム)の介入によって差が小さくなっているのかは分からないが、コントロール性は高いレベルにあるのは間違いない。

さて、ニンジャ1100SXと同SEにおける見逃せないポイントは、ドライブレコーダーが標準装備されたことだ。左ミラーステー付近のフロントカメラ、ナンバープレート右上のリヤカメラとも後付け感が否めないが、とはいえ製品自体はミツバサンコーワ製のプレミアムモデルであり、安心感は非常に高い。

STD、SEとも日本仕様のみに標準装備されるミツバサンコーワ製のドライブレコーダー「EDR-22G-K」は、前後2カメラ+GPSのプレミアムモデルだ。ちなみにEDR-22Gの希望小売価格は5万8080円となっている。

ニンジャ1100SX SEは、グリーン系のカラーリングが好きな人にとってはマストであり、ブレンボもオーリンズも差額以上の価値をもたらしてくれるのは間違いない。今回、パニアケースを装着した状態で試乗したことで、スポーツツアラーとしての完成度の高さをあらためて実感することができた。

ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)

STD、SEともライディングポジションは共通。乗り降りの際に足をパニアケースにぶつけやすいので要注意。
シート高も820mmで共通。乗車1Gでの沈み込みもほとんど変わらないようで、足着き性はご覧の通り良好だ。