MotoGP第12戦イタリアGPが、7月18日から20日にかけて、チェコのブルノ・サーキットで行われた。

日本人ライダーの小椋藍(アプリリア)は、スプリントレースを16位、決勝レースを14位でフィニッシュした。

転倒から始まった5年ぶりのチェコ

チェコGPは、2020年以来5年ぶりに開催となった。5年前といえば、小椋藍(アプリリア)はMoto3クラスに参戦して2年目のシーズンを送っていた頃だ。2025年シーズンのMotoGPクラスのルーキーである小椋にとっては、今季のどのサーキットもMotoGPマシンで初めて走る場所だが、ブルノ・サーキットは走行自体がMoto3クラス以来だった、というわけだ。

チェコGPの週末、初日である金曜日は雨に見舞われた。午前中のフリープラクティス1はウエットからドライにコンディションが回復し、セッション後半はドライコンディション用のスリックタイヤでの走行となった。しかし、小椋はここで今季11回目の転倒を喫する。スリックタイヤでコースインして3周目のことだった。

「タイヤがまだ準備できていなかったのだと思います」と、小椋は初日を終えた後の囲み取材で答えている。

午後のプラクティスは、その前に行われていたMoto2クラスのプラクティス中に強い雨が降り出し、この天気によってセッションディレイ。フルウエットでの走行となり、小椋は20番手でQ2ダイレクト進出を逃した。

土曜日以降は天候に恵まれ、ドライコンディションとなった。Q1から挑んだ土曜日の予選では、11番手。21番手からスプリントレースをスタートし、16番手でゴールした。

「金曜日に比べたらいいですけど……。どこか特定の場所でタイムを落としているのではなく、全体的にタイムが遅いんです。何かがよくなってくれれば、改善する気がします」

土曜日の囲み取材でそう語っていた小椋だが、日曜日の決勝レースも14位で終えた。スタートからポジションを上げてポイント圏内の順位ではあったが、当然、満足のできる結果ではない。

「あまりよくなかったですね。(途中、ポジションを争っていたヨハン・ザルコに離されたのも)タイヤが垂れて自分のペースが落ちてしまったから。あとは、終盤にザルコのペースがまた復活して速くなったんです」

5年ぶりのブルノ・サーキットは路面が再舗装され、金曜日がウエットコンディションの走行となった一方、土曜日以降がドライコンディションとなったことで、貴重な初日をドライの走行にあてることができなかった。ドライのデータや走行時間が少なかったのは確かだ。ただ、それは全てのライダーにとって同じ条件だ。そして、小椋がここ数戦に苦しんでいた主な理由の一つは、金曜日の転倒の理由になったような、タイヤのパフォーマンスの引き出し方にある。小椋は今、タイヤを機能させる温度にもっていくまでのアプローチを模索している最中なのだ。

そんな小椋に、シーズン前半戦を終えての自分の評価を尋ねた。

「100点満点中、50点くらいですね。いいレースもあれば、悪いレースもあったから」

「(シーズン前半戦では)アルゼンチン決勝レースはよかったと思いますし、アメリカのスプリントレースもよかったです。ヘレスもそんなに悪くはなかったし、カタールのスプリントレースも……。いくつか(よかったレースが)あるくらい、でしょうか」

囲み取材で答えている小椋の表情は、はっきりと「この結果に満足していない」と語っていた。シーズンはここから約ひと月のサマーブレイクに入る。

「サマーブレイクは……、もっとオートバイを上手に乗れるように頑張ります」

小椋は、サマーブレイク中の過ごし方についてそう言った。MotoGPライダーである小椋が、「もっとオートバイを上手に乗れるようになりたい」と言う。今の自分に満足していないのだとわかる言葉だ。そしてまた、小椋が後半戦に向けて、自分をさらに向上させようとしているのだ、とも。

少しのブレイクとトレーニングを過ごして、小椋は8月のオーストリアGPから、ルーキーシーズンの残り10戦を戦う。

決勝レースは20番手からスタートし、14位でゴールした小椋(#79)©Trackhouse Racing
日曜日の囲み取材の様子 ©Eri Ito