シグナスXをはじめとするスクーターカスタムで有名な埼玉県三郷市のSteel LAB 956。同店は地面スレスレのロー&ロングや極太のタイヤを組んだファットマシンなど、度肝を抜かれる様々なカスタムマシンを世に放っているが、同店の神髄は「チューニング」にある。その最たる例が今回紹介するBW’S100だ。

今季のドラッグレース参戦予定マシン!

注目のパワーユニットは4スト化され、なんと308ccまでスープアップされている。じつはこのエンジン、数年前に製作され、モトチャンプ誌などバイク雑誌の表紙も飾ったBW’S125改の心臓部を移植したもの。

同店代表の熊坂氏によると「この車両はドラッグレース(0-400m)用に作ったものです。少しでも軽くしたいのでベース車両(フレーム)はBW’S100(4VP)を利用しました」。

コンペティションにおいて“軽さは正義”だ。50ccと骨格を共通とするBW’S100は軽量で、当車両の総重量は100kgを下回り、ノーマル(約96kg)とほぼ同等となっている。その代わり、剛性に難が生じるため、カーボン材のサブフレーム(センターバー)を追加するなど各部にしっかりと補強を加えている。

BW’S125エンジンのボア×ストロークを最大限まで拡大!

気になるエンジンについては、ヤマハの空冷4ストスクーターBW’S125をベースに使用。ピストン径は52.4→76mm、クランクシャフトは57.9→67.9mmとして、124ccだった排気量の308cc化を実現している。腰上はTTMRC製のビッグバルブシリンダーヘッド、通称“G5ヘッド”と呼ばれる特別なものをチョイス。なお、このエンジンに使用されているものは市販前のプロトタイプとなっている。

φ76mmピストンを使用するにあたり、スリーブなども考慮するとクランクケース側も80mmほどに拡大する必要があるが、純正ケースのままでは対応できないため、わざわざ台湾のTTMRCまでクランクケースを送ってケースそのものに“肉盛り”したうえでボーリング加工し、シリンダーヘッドとマッチングさせている。腰上、腰下ともにスペシャル品というわけだ。

ちなみに、BW’S125のエンジンはシグナスXと同型だが、クランクケースが長い設計のため、ドラッグフォルムのロンホイにもうってつけなのだ。

ツーブラザーズレーシング製の他車用サイレンサーを流用してワンオフしたマフラー。エキパイともにショート形状でスタイリッシュ!
人気急上昇中の台湾、WF製を中心にセットした駆動系。KOSO製カバーはステッカーボムで華やかに演出!

吸気はSWRのビッグスロットルボディ(φ40オーバー)を採用し、容量160ccのインジェクターをダブルで装着している! 「エンジン製作当時は今のように大容量のインジェクターやツインインジェクターのスロットルボディがなかったので苦肉の策ですね」。これをaRacer製RC1フルコンで制御して対応させている。

さらに、大幅な排気量アップで重要となるのがクランクケースの減圧だ。ワンウェイバルブの「T-REV」を、ピストンの動き(往復)に対して1つずつ備えて圧力を一定に保っているのもアイデアだ。

燃料タンクは約1.5ℓサイズをアルミ材でワンオフ。オイルキャッチタンクは軽量化を兼ねてペットボトルを再利用している。

足周りは13×12インチの異径サイズ!

「以前は超ロングフォルムで8Jサイズのワイドリムを組んでいましたが、今回は外装も含めて抑え気味にしました。リヤはシグナスX4型のものを流用していますが、車体が軽いし、後半で伸ばす算段なので、加速でのタイヤの食いつきはこれで十分ですね」と熊坂氏。

リヤタイヤは、ピレリのディアブロロッソスクーターSC(120/80-12)を装着。フロントの13インチ化に伴い、タイヤのメーカーや扁平率を考慮して前後をほぼ同径に仕上げている。

フロント足周りはマジェスティS用に換装して13インチ化し、インナーチューブのみシグナスX用を使うことでショートストローク化させている。闇雲に加工してローダウンするのではなく、しっかりと動く機能性を持たせているのはオミゴト!

さりげなく保安部品を装着済み!

「基本はドラッグレース仕様ですけど、ストリートドラッガースタイルとするために保安部品も残しています」という熊坂氏の言葉を受けて車体を見渡すと、保安部品の装着は重量増となる反面、見栄えは良し!

フロントはテープタイプのシーケンシャルウインカーをフォークアウターに張り付け、リヤは純正レンズのみを残して、シート後方にLEDテールランプ&ウインカーが備えられている。

BW’Sのアイデンティティである2灯ライトはそのままに、メッシュガードを追加してワイルドに!

これはUSDMを意識したドレスアップテクでもあり、ハンドルもUSDMカスタムでも大人気のズーマー(ZUMA)用ラックアス製セパレートタイプを採用。ステム中央にフルコン(aRacer)のコントローラーを配し、下位置にはGPSでタイムや速度計測などを行うためのスマホをセット。

左右ブレーキのマスターシリンダーはタンクレス化してスッキリと! これはMT車のリヤブレーキ用でも人気のカスタムだ。

“やりすぎない”のが吉! カジュアルに楽しむスクーターライフ

よりタイムを刻むならば、さらなるチューニングも可能ではあるが、過度な軽量化やドレスアップに走るのではなく、スマートに仕上げたのはSTEEL LAB956のセンスの成せる技だ。同店では今回紹介したハードな競技用チューニング以外にも、街乗りに適したパワーアップチューニングまで、4スト系を中心としたチューニングを主に手がけている。

取材協力:Steel LAB 956
埼玉県三郷市新和4-577-1
Tel:048-950-8997

 

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