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GENROQ フェラーリ名鑑

Ferrari 812 GTS / 812 Competizione / 812 Competizione A

フェラーリ・ファンが待ち望んだ12気筒オープン

RHT(リトラクタブルハードトップ)の812GTS。ルーフのオープン&クローズに必要な時間は約14秒。
RHT(リトラクタブルハードトップ)の812GTS。ルーフのオープン&クローズに必要な時間は約14秒。

諸般の事情により、2019年のフランクフルト・ショーにはブースを構えることがなかったフェラーリだが、もちろん彼らは同時期に自らのニューモデルを披露する場を設けていた。

それはマラネロの本社施設に隣接するフィオラーノ・サーキットに特設された会場で開催された「ウニベルソ・フェラーリ」、すなわち「フェラーリの世界」と題されたエキシビジョンで、フェラーリは8気筒オープンの「F8スパイダー」、そして「365GTB/4」つまりデイトナ・スパイダー以来となるシリーズモデルの12気筒オープン、「812GTS」を世界初公開したのだ。

改めて考えてみれば、フェラーリからそれまでに誕生した12気筒オープンは、どれもが限定生産車しかなかった。1969年にまずはワンオフモデルとして、そして最終的にはその圧倒的な人気を背景に125台が生産されたデイトナ・スパイダーを原点に、F50やラ フェラーリといったいわゆるスペチアーレ系のモデルを除いても、2000年に誕生した550バルケッタ、2005年のスーパーアメリカ、2010年のSAアペルタ、2014年にアメリカ市場のみにデリバリーされたF60スパイダーである。その意味では812のラインナップに追加設定されたGTSは、多くのフェラーリ・ファンが待ち望んでいたプロダクトと言えたのは当然のことだったのである。

トンネルバックのリヤウインドウ

812GTSのルーフはRHT(リトラクタブルハードトップ)で、オープン&クローズに必要な時間は約14秒。走行中でも車速が15km/h以下ならその操作は可能だというから、実用性は相当に高い。オープン時にはルーフは重なり合うようにリヤの収納スペースに収まり、かつてのフェラーリのミッドシップ車に見られたトンネルバックのリヤウインドウまわりのスタイルが再現されるのも趣味性の高さを伺わせるところだ。

さらにRHTが収納されるスペースの後方には、オープン時でも十分な容量を持つラゲッジルームが用意されており、短期間の旅行ならば十分にその役割を果たすのは確かだろう。

812GTSのメカニズムはベースとなった812のそれと共通だ。すなわちフロントに搭載されるエンジンは、6.5リッターV型12気筒自然吸気で最高出力は800PS。これに7速DCTを組み合わせ、後輪を駆動する。ビークルダイナミクスに関しても当時の最先端のメカニズムをフルに搭載。車重はクーペのスーパーファストから75kgほど増加しているが、0-100km/h加速は3秒フラットと、スーパーファスト比で0.1秒の差があるのみだった。

コンペティツィオーネの登場

2021年になると、フェラーリはさらに魅力的な812を、今度は限定車として発表する。新世代の空力デバイスを多数装備し、これまでの812シリーズよりもさらに戦闘的なエクステリアに変化したそれは、クーペの「812コンペティツィオーネ」と、同様のメカニズムを持つオープン仕様の「812コンペティツィオーネA」の両モデル。後者に掲げられるAの文字は、イタリア語でオープンを表すアペルタの意で、生産台数はクーペが999台、アペルタは549台と設定されていた。

搭載されるエンジンは、6.5リッターV型12気筒自然吸気と、これまでの812スーパーファストやGTSから変化はないが、最高出力はさらに30PSの強化を受け、830PSという数字に至った。最高回転数は実に9500rpm。これはコンロッドやピストン、クランクシャフト、バルブトレインなどエンジンの主要コンポーネンツを改良した結果であるとフェラーリは説明する。

ビークルダイナミクスもさらなる進化を果たし、いくつかの例をあげるのならば左右独立型の4WSシステムの採用やSSC(サイドスリップ・コントロール)の第7世代への進化、専用のミシュラン製カップ2タイヤの開発などがそれにあたる。軽量化もさらに徹底され、コンペティツィオーネとスーパーファストとの比較では、前者は38kgも軽い数値を実現している。またこのコンぺティツィオーネと同Aでは、フェラーリとしては初となるカーボン製ホイールのオプション装着も可能になったことも大きなニュースだった。

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