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ベース車両は1978年に登場した(1979年式)、“角Z(角ばったフォルムのカワサキZシリーズ)”の先駆け的なモデルとしても知られる「カワサキZ1000MKⅡ」。
ノーマル個所は、基本的にフレームとエンジン(シリンダーヘッド、シリンダー、クランクケース等)などのメイン部分のみ。その他はほぼ新品パーツで構成。
純正部品は、すでに製造中止で新品は入手不可。そのため同車はワンオフパーツや社外パーツを駆使。ピストンは最新鋭の特注品。パーツによっては鍛造品を使うなど、鋳造品の純正よりも基本的に高強度で高耐久。ボルト1本までチタンに変更するなど、細部まで手抜きなく徹底的にカスタマイズされている。
プロデュースしたのは、カワサキZ系などビッグバイクカスタムの大御所「BULL DOCK(ブルドック/栃木県足利市)」。オーナーでありカスタムの依頼者は、ワイドショーのコメンテーターやラジオDJなどで活躍し、部類のクルマ&バイク好きとしても有名なタレントのユージ氏。ユージ氏のカワサキZ1000MKⅡへの熱くて深い思い入れを見事に具現化したのが、このカスタムだ。
写真のZ1000MKⅡカスタムは、アメリカのカワサキ法人であるリンカーン工場(ネブラスカ州)で生産された1980年式がベース。カスタム前はかなりくたびれた、ボロボロの状態だったという。
1980年はユージ氏の奥様が生まれ年。またユージ氏はアメリカ生まれ。ユージ氏がこだわったのは、奥様の生まれ年と同じ年式。またベース車両は自分と同じアメリカ生まれで、日本人の血統も受け継いでいること(ユージ氏の父はアメリカ人俳優のマイケル・ゴードン。母は元モデルの日本人)。
さらにこだわったのは、1980年式に採用された純正のカラーリング。Z1000MKⅡ定番の人気カラーは、Z400FXなどにも採用された1979年式のダークブルーとレッドの2種類。
1980年、AMAスーパーバイク選手権において、当時21歳のエディ・ローソン(※注1)がZ1000MKIIで大活躍。当時エディが乗っていたZ1000MKIIは、1980年式の純正ブラックカラー。Z1000MKIIを知れば知るほど、ユージ氏は“1980年式の純正ブラックカラー”に魅了。このカスタムにも、1980年式のブラックカラーを導入した。
注1:エディ・ローソンはバイクレースの最高峰「世界GP500ccクラス」でも大活躍したアメリカ人のロードレーサー。世界GP500ccクラスでは1984年、1986年、1988年、1989年にシリーズチャンピオンを獲得。漫画「バリバリ伝説」にも主人公・巨摩郡のライバルとして登場した。
マフラーは手曲げチタンだが、「他人と違うことをしたい!」というリクエストで“ぜいたく”なブラックに塗装
ユージ氏はノーマル1000ccのカワサキZ1000MKⅡを、1200ccまで排気量アップするよう依頼。最終的に排気量は、同車の“限界値”である1230ccまでスープアップされた。
純正シリンダーのボア径を、限界まで「精密ボーリング加工(専用の治具を使った、専門の職人による極めて精度の高いボーリング加工技術)※注2」して拡大し、排気量を1230ccにアップ。
パワーアップに伴い、エンジン内の各パーツは耐久性・耐熱性を重視。コンロッドをドイツの名門・ヴォスナー製×Mccoy製(ブルドックのパーツブランド)のコラボレーションタイプ(純正よりも軽量で高強度)に交換する等々、ほぼ新品に交換。
分割された2つのクランクケースを密着(固定)させるロングボルトには、高強度なクロモリ(SCS435)を使用。
※注2:カワサキの空冷Z系を得意とするカスタムショップ「BULL DOCK(ブルドック)」では、エンジンのオーバーホールやチューニング後等には、基本的に5000kmもしくは1年の保証を付けている(2024年3月現在)。詳しくは同社に要問い合わせ。
排気量アップに伴う空冷エンジンの熱問題を解決するため、大型のオイルクーラーを装備。これらにより日本の真夏でもオーバーヒートの心配がなく、快適に走行できる仕様に仕上げている。
マフラーは手曲げのチタンタイプだが、「確かにチタン素材の焼き色もいい。でも他人と違うことをしたい」というユージ氏たってのリクエストにより、あえて“贅沢”なブラックに塗装。
左右のグリップはカワサキではなく、“ロッシ用”と呼ばれる握りやすいホンダの純正CBR用を採用。「純正は劣化しにくい」とはブルドック・和久井社長のコメント。
電装系の要となるバッテリーケースは純正を使わず、すべてオリジナル。Z系の純正バッテリーは特殊な場所が多く、あまり一般流通していないのが特徴。そのため、国内バイク4メーカー(ホンダ・ヤマハ・スズキ・カワサキ)純正の新品電装システムを丸ごとスワップ。信頼性が高く、整備&修理しやすい環境に移行している。
前後ホイールは機動性の向上を目指し、フロントはノーマルの19インチから17インチ、リアは18インチから17インチに小径化。ホイールのリム幅拡大により、フロントタイヤは3.25-19→120/70-17 リアタイヤは4.00-18→200/55-17へと大幅にワイド化。
フロントの倒立型フォークと、リザーブタンク付きのツイン型リアショックは、「ナイトロンのサスペンションは、車両に合わせて自由にチューニングできるのがポイント(ブルドックの和久井社長)」という理由からナイトロン製をチョイス。
これらのチューニングにより、動力性能や最高出力などは、新車時のカワサキZ1000MKⅡを大幅に超えていると予測。40年以上前に生まれたカワサキZ1000MKⅡを、現代のスポーツモデルに引けを取らないレベルまで引き上げているのだ。
レーシーなフォルムにしたい! 前後ウインカーは車検対応の超ミニ型を採用
レーシーなフォルムにしたいというユージ氏のリクエストから、前後のウインカーは超ミニ型を採用。「ウインカーを取り付けるため、アルミ削り出しのワンオフパーツを4個製作してアルマイト処理。またボディ側の各部に加工を施すなど、作業に四苦八苦した(ブルドックの和久井社長)」というこのウインカーは見た目以上に明るく、車検にも対応したタイプ。
同車はキャブレターにレーシーなファンネルを採用。このファンネルをパワーフィルターに交換すれば(ファンネルはレース用のアイテムであり、一般公道走行の保安基準には不適合)、陸運局での車検も通過。ナンバーも取得でき、一般公道も可能となる。
ユージ氏は、「日米にルーツを持つ、1980年に生まれた憧れのカワサキZ1000MKⅡで。しかも憧れていたショップのブルドックでフルカスタム。ボクのすべての夢が叶った一台。大切に乗ってゆきたい。予算を遥かにオーバーしたけれど(笑)。でもこの満足度は、決してお金では買えないもの。気持ち的には安いと思っています!」と語った。
で、カスタムの費用はおいくら? ちなみにエンジンに組み込まれた新品の6速ミッションキット、また乾式クラッチキット(通常はレッドカラーだが、チェコ国のメーカーに依頼して特別に本体部をブラックに塗装)だけでも、部品代は100万円超。それを前提に、総費用は各自で予想してみて欲しい。
エンジンの中身やカスタム模様は、ユージ氏の公式YouTubeでも紹介中だ。
ユージずチャンネル https://www.youtube.com/@yujigordon
カスタムメニュー(一例)
■排気量:1230cc
■ピストン:Mccoy×PISTAL RACING
■コンロッド:ヨシムラ STL-1
■キャブレター:ヨシムラミクニTMR-MJN36
■クラッチ:Mccoy 乾式スリッパー
■マフラー:Win Mccoy NEO
■オイルクーラー:Mccoy
■チェーン:RK
■スプロケット:Mccoy×サンスター
■ホイール:LAVORANTE Sfidare
■ハンドル:Mccoy
■シート:Mccoy Supreme Seat
■Fブレーキ
→キャリパー:ブレンボCNCラジアル
→ローター:Mccoy ワークスエキスバンド
→マスター:RSC corsa
■Rブレーキ
→キャリパー:ブレンボ
→ローター:Mccoy ワークスエキスバンド
→マスター:Mccoy
■Fフォーク:ナイトロン NTF43CR2
■Fフォークブラケット:Mccoy
■Rショック:ナイトロン STEALTH Mccoy
■スイングアーム:Mccoy
■ステップ:Mccoy
■ペイント:Paint of JOKER
■タイヤサイズ:F120/70-17 R200/55-17
ベース車両の「カワサキZ1000MKⅡ」とは?……1978年発売(1979年式)
カワサキZ1000MKⅡは1978年に登場(1979年式)し、1980年まで生産された輸出専用モデル。Z1にも採用のティアドロップ型ガソリンタンクなど、丸みを帯びたZ1000の次期モデルとして設計。Z1やZ1000とは一線を画す、“角Z(角ばったフォルムのカワサキのZシリーズ)”の先駆け的なモデルとして現在でも幅広い層からリスペクトされている。Z1000MKⅡは、アメリカのカワサキ法人であるリンカーン工場(ネブラスカ州)で生産。発売当時は北米を始め、世界各国で高い人気を誇った。
カワサキZ1000MKⅡ 主要スペック
全長 (mm) | 2180 |
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全幅 (mm) | 900 |
全高 (mm) | 1180 |
ホイールベース (mm) | 1490 |
最低地上高(mm) | 155 |
乾燥重量 (kg) | 245 |
原動機種類 | 4ストローク |
気筒数 | 4 |
シリンダ配列 | 並列(直列) |
冷却方式 | 空冷 |
排気量 (cc) | 1015 |
カム・バルブ駆動方式 | DOHC |
内径(シリンダーボア)(mm) | 70 |
行程(ピストンストローク)(mm) | 66 |
圧縮比(:1) | 8.7 |
最高出力(PS) | 93.4 |
最高出力回転数(rpm) | 8000 |
最大トルク(kgf・m) | 9.1 |
燃料供給方式 | キャブレター |
燃料タンク容量 (L) | 17.8 |
エンジン始動方式 | セルフ・キック 併用式 |
点火装置 | フルトランジスタ式 |
点火プラグ標準搭載・型式 | B8ES |
搭載バッテリー・型式 | YB14L-A2 |
エンジン潤滑方式 | ウェットサンプ式 |
クラッチ形式 | 湿式・多板 |
変速機形式 | リターン式・5段変速 |
スプロケット歯数・前 | 15 |
スプロケット歯数・後 | 35 |
チェーンサイズ | 630 |
標準チェーンリンク数 | 92 |
キャスター角 | 30 |
ブレーキ形式(前) | 油圧式ダブルディスク |
ブレーキ形式(後) | 油圧式ディスク |
タイヤ(前) | 3.25-19 |
タイヤ(前)構造名 | バイアス |
タイヤ(後) | 4.00-18 |
タイヤ(後)構造名 | バイアス |