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ぜい肉をそぎ落としたネイキッドスポーツらしいスタイリング
骨格であるトレリスフレームを露出させ、曲線を生かしたボディラインとしたTNT249Sのフォルムは、いかにもイタリアンバイクといったスタイリングデザインです。押しの強さはありませんが、だれにでも親しみやすく時流にとらわれないシンプルさが魅力的です。今回試乗したモデルは、赤いフレームにホワイトボディ、そして水冷パラレルツインエンジンという組み合わせのカラーでした。他にレッド、ブラック、グリーンがラインナップされていて、フレームやホイールなどそれぞれに異なったカラーリングが施されています。さらにもうひとつのデザイン上の特徴では、シュラウドの装備があります。これによってスポーティさが高まっています。
250㏄クラスのネイキッドスポーツとしては大柄なボディとなっています。400㏄あるいは600、800㏄クラスとさほど変わらないボリューム感です。しかし実際に跨ってみると、シート高が795㎜と低めになっているので不安を感じません。車重は204㎏となかなかの重量級なのですが、サイドスタンドを払うために車体を引き起こしたときに、想像したよりは重さを感じませんでした。押し歩きは重いのですが、通常の使用ではとくに大きさや重さは気にならないと思います。 ハンドルはアップタイプのテーパードハンドルが装着されていて、手前側に角度が与えられています。そのため自然な上体を生んでくれます。近年はフラットハンドルのストリートファイターがネイキッドスポーツの主流になっていたので、TNT249Sのようなリラックスできるポジションだとほっとします。しかし、上体がアップライトなのに対してステップ位置はかなり後ろにあり、さらに外側に張り出しているので足元がどうも落ち着きません。この1点がポジションで気になりました。
エンジンは360度クランク式の水冷DOHC4バルブ並列2気筒で、22kW(30ps)/11000rpm、21.0Nm/9000rpmというスペックです。日本製モデルと比較するとかなり控えめな数値です。加えて車重が200㎏オーバーなので、俊足なタイプじゃないなと予想して走りだしてみました。
ショートマフラーから吐き出されるサウンドは重低音でなかなか力強いものです。ボディサイズ同様、250であることを感じさせません。パラレルツインのレスポンスはそれほど俊敏さはなく、アクセル操作にスムーズに追従するタイプです。高回転型というより低中速域で程よいパワーを発揮する感じで、ストリート走行では必要十分なトルクを発生してくれます。 全域においてフラットなエンジン特性なので、パワー感に乏しい印象はありますが、穏やかなパワーフィーリングは雨天時の走行でも不安を与えないはずです。ただし、最近のバイクとしてはクラッチレバー操作が重く感じました。
フロント120/70ZR17、リア160/60ZR17と250にしては太いタイヤを装着しています。当然のことながらそれはハンドリングにも影響し、軽快性はあるもののバンクのモーションはゆったりしています。いわゆるキレのある操縦性ではなく、車体のバンクに応じて旋回していくような感覚です。
そんな安定性志向のハンドリングは気持ちを急かしません。市街地でもワインディングでもバイクと一体となって走る楽しさを味わわせてくれます。
サスペンションは、倒立フロントフォークにリアにリンクレスモノショックを組み合わせていて、若干硬い乗り味でした。プリロード調整などでもう少しソフトな方向にしてやれば、乗り心地も良くなるし、メリハリのある走りができるようになると思いました。
ブレーキはフロントにダブルディスクを装備しているので制動力に不足はありません。もちろんABSを前後に装備しているので、雨天時にも安心です。
ベネリTNT249Sはネイキッドスポーツのカテゴリーに属しているモデルですが、安定感のあるゆったりとした乗り味や、16L容量の燃料タンクが、快適なツーリングを実現してくれるのではないかと思います。高速道路の120㎞/h区間も問題なく走行できるエンジン性能はありますし、一般道ではトルクに乗った走りを披露してくれます。さまざまな部分でライダーに優しい性格のバイクなので、市街地からツーリングまで気を遣うことなく乗ることができます。