ヨシムラのZ1。シリンダーヘッド+Φ72mmピストンの1,105ccフルチューン! 現代のテクノロジーをストリート向けに反映【ヨシムラジャパン】

ヨシムラ製シリンダーヘッド(プロトタイプ)を組み込み。シリンダーのボア径を拡大し、Φ72mmピストンで903ccから1,105ccに排気量アップ。吸気系はレーシングキャブレターのヨシムラミクニTMR-MJN38(TPS付き)とし、ストリート走行のためにK&Nパワーフィルターを組み合わせ。
1972年(昭和47年)から1976年(昭和51年)にかけ、にヨーロッパ及び北米市場向けに製造販売された海外専用モデル・カワサキZ1(正式名称:Z900スーパー4)。写真はロードレースでも活躍する名門バイクパーツメーカー「ヨシムラジャパン」がプロデュースしたカワサキZ1カスタム。Z1が持つ優れた資質と、70年代のヨシムラのイメージを大切にしつつ、長年のレース活動で培った最新の設計・製造技術を投入。“現在のヨシムラが持つテクノロジー”をストリート向けに反映させている。
PHOTO/REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
ヨシムラジャパン https://www.yoshimura-jp.com/

カワサキZ1(正式名称:Z900スーパー4)……1972年(昭和47年)~1976年(昭和51年)製造

カワサキZ1(正式名称:Z900スーパー4)
カワサキZ2(正式名称:Z750RS)

カワサキZ1(正式名称:Z900スーパー4)は1972年(昭和47年)~1976年(昭和51年)に製造された海外専用モデル。一般的に同車は、型式名であるZ1(ゼットワン)の名前で呼ばれている。

エンジンは空冷4ストロークDOHC 2バルブ4気筒903ccで、最高出力は82psを発生。当時の日本国内では、自主規制により750ccオーバーのバイクは販売禁止。国内でZ1に乗るには、「逆輸入」という方法しかなかった(当時の逆輸入車は、為替レートや関税の関係もあり、非常に高額だった)。そのため、国内では排気量をダウンさせたZ750RS、通称Z2(ゼッツー)がリリースされ、爆発的なヒットとなった。

2018年にZ1をイメージした「Z900RS」が発売され、元祖であるZ1は再び注目。中古車市場において程度の良いZ1は、“絶版車ナンバー1の超お宝ビンテージモデル”として、驚異的な高値で取り引きされている。

カワサキZ1 主要諸元

※カッコ内はZ2
全長x全幅x全高:2200mm x 865mm x 1170mm
ホイールベース:1490mm
シート高:815mm
排気量:903cc(746cc)
エンジン形式:空冷4ストロークDOHC8バルブ直列4気筒
内径x行程:66mmx66mm(64mm x 58mm)
圧縮比:8.5:1(9.0:1)
最高出力:82ps/8500rpm(69ps/9000rpm)
最大トルク:7.5kg-m/7000rpm(5.9kg-m/8500rpm)
始動方式:セル・キック併用
変速機:前進5速(リターン式)
サスペンション:
 前 テレスコピック式
 後 スイングアーム式
ブレーキ :
 前 シングルディスクブレーキ
 後 ドラム
タイヤサイズ:
 前 3.25-19インチ
 後 4.00-18インチ
最高速度:200km/h
乗車定員:2人
燃料タンク容量:18L

カワサキZ1改 製作:ヨシムラジャパン

ノーマルフォルムを崩すことなく、現代のカスタム術を随所に投入。艶消しブラックカラーのマフラーは、贅沢なオールチタンの「ヨシムラ機械曲げ チタン ストレートサイクロン(市販予定品 proto type)」。構造は4-2-1の集合管タイプ。
前後ホイールはノーマルと同じスポーク型で、ホイール径もノーマル同寸(フロント19インチ・リア18インチ)。フロントブレーキはシングル式からZ1カスタムの定番であるダブルディスク化。リアブレーキはドラム式からディスク式に変更。前後のブレーキキャリパーはブレンボ製を選択。
前後タイヤは高性能スポーツタイプのブリヂストン製バトラックス スポーツツーリング。タイヤサイズは前後とも“極細”の純正からワイドタイプに変更。フロントは110mm幅の110/80R19、リアは140mm幅の140/70R18を選択。

ヨシムラ製シリンダーヘッドを導入! シリンダーのボア径拡大+Φ72mmピストンで903ccから1,105ccに排気量アップ

「Yoshimura F-TUNING HEAD」とΦ72mmピストンでチューニングされたエンジン。エンジンカバーはヨシムラのロゴ入り「アルミエンジンカバー」でドレスアップ。
ヨシムラジャパンから抽選販売(完売/生産終了)された「Yoshimura F-TUNING HEAD(TYPE-1 シルバー:70万4000円/TYPE-1 ブラック:71万5000円/TYPE-2 シルバー:97万9000円/TYPE-1 ブラック:99万円 ※すべて税込)」。吸排気ポート形状のコンセプトが違うType1とType2の2種類を設定。写真はTYPE-1 シルバー。
「Yoshimura F-TUNING HEAD」はエンジンに空気を、より早くより多く取り入れ、より早くより多く吐き出すことを目標に開発。写真はTYPE-2 ブラック。
写真左)排気ポート  写真右)吸気ポート
写真は「バルブリテーナー&コッターセット(丸溝)」。純正部品のみを使用した「インナーシム化」よりもリテーナー(STD比約50%)とコッター(STD比約75%)が軽量なため、動弁系の慣性重量を低減でき、耐久性もアップ。
ヨシムラジャパンの創始者であり、“ゴッドハンド(神の手)”と呼ばれたPOP吉村の口癖だった、「空冷大排気量車はパワーアップと軽量化」。その言葉を現代の技術力で実現した、Z1/Z2用の軽量カムシャフト「ST-L1」と「ST-L2」。非常に高度な技術を必要とする大口径中空加工により、2本で約20%(600g)もの軽量化を実現。
Z1/Z2用の軽量カムシャフト「ST-L1」と「ST-L2」は、表面加工にバレル研磨処理を施す事によりフリクションロスを低減させ、耐久性をアップさせることにも成功。
写真左)アルミエンジンカバー  写真右)アルミオイルポンプカバー  どちらも伝統的な砂型鋳造製法にて生産。梨地と呼ばれる鋳肌で仕上げられた製品はひとつひとつ同じものが無く、 表面の微細な凹凸が懐古的かつ独特な風合いを演出。

ノーマルのZ1フォルムをキープしつつ、“現在のヨシムラが持つテクノロジー”をストリート向けに反映させたカワサキZ1改。エンジンや足周りをメインに、走りのパートを入念にチューニング。ロードレースを知り尽くした、“イマドキ”のヨシムラ流カスタムが随所に施されている。

シリンダーヘッドはヨシムラで長年受け継がれてきた伝統的な手技と、最新のレース活動で培われた理論に裏付けされた技術を融合し開発を行い、ヨシムラの技術による吸排気のトータルチューニングを実現した市販の「Yoshimura F-TUNING HEAD Type2」のプロトタイプを導入。

シリンダーはボーリング加工を施してボア径を拡大し(ノーマルはΦ66mm)、Φ72mmピストンを組み合わせて903ccから1,105ccにボアアップ。吸気系はレーシングキャブレターのヨシムラミクニTMR-MJN38(TPS付き)とし、ストリート走行のためにK&Nパワーフィルターを組み合わせ。

シリンダーヘッドに組み込まれたバルブリテーナー&コッターセットやカムシャフト、マシン全体のフォルムを引き立てる4-2-1の機械曲げ集合マフラー(開発中)など、Z1オーナー憧れのアイテムが目白押しだ。

右サイドカバーは大口径キャブレター「ヨシムラミクニTMR-MJN38(TPS付き)」とK&Nパワーフィルターの装着に合わせ、Z1エアフィルター対応の専用サイドカバー(試作品)を採用。
社外の大型オイルクーラーを導入し、熱量の増えたボアアップエンジンの冷却効率を向上。

フロントブレーキはWディスク化、リヤはドラム式からディスク式に進化

フロントブレーキはZ1カスタムの定番であるダブルディスク化。リアブレーキはドラム式からディスク式に変更。前後のブレーキキャリパーはブレンボ製を選択。ブレーキホースも変更するなど、制動力のアップを徹底的に重視。

リアサスペンションは高性能なオーリンズを導入。前後ホイールはノーマルと同径のスポーク型だが、前後タイヤは高性能スポーツタイプのブリヂストン製バトラックス スポーツツーリングを選択。前後のタイヤサイズは“極細”の純正から、ワイドタイプに変更。フロントは110mm幅の110/80R19、リアは140mm幅の140/70R18がチョイスされている。

シングルディスク式からダブルディスク化。ブレンボ製4POTキャリパー、サンスター製320mmディスクローター、グッドリッジジャパン製ブレーキホース、BS製バトラックス スポーツ ツーリング T32(サイズは110/80R19)、ヨシムラジャパン製リフレクターカバーでカスタマイズ。
オーリンズ製リアショック、BS製バトラックス スポーツ ツーリング T32(サイズは140/70R18)、アールケー・ジャパン製♯525ドライブチェーンでチューンナップ。
Z1ならではの砲弾型メーターケースはアルミ削り出しの試作品。フロントフォーク前に設置されたYOSHIMURAのロゴ入りステムエンブレムも試作品。
外装デザイン&ペイントはWoodeye Designが担当。
シートはフラットな形状ノーマルに比べ、ライダーシート~タンデムシートに緩やかな段差を設けたフォルムにカスタマイズ。テール部のタンデムバーはレス化されている。

装着パーツ一覧

商品名種類価格(税込)/商品名メーカー
エンジンシリンダーヘッドYoshimura F-TUNING HEAD Type2 proto typeヨシムラジャパン
カムシャフト&アジャスタブル軽量カムスプロケットパーツST-L1 パーツ No.211-291-S10313万9700円
ST-L2 パーツ No.211-291-S20314万1900円
カムシャフトST-L1 パーツ No.211-291-010212万6500円
ST-L2 パーツ No.211-291-020211万7000円
バルブリテーナー&コッターセット角溝 パーツ No.223-291-00004万1250円
丸溝 パーツ No.223-291-90004万1250円
オイルフィルターカバー薄型タイプ削り出しオイルっフィルターカバー(市販予定品 proto type)
エキゾーストパイプチタン製 4-2-1 集合方式ヨシムラ 機械曲げ チタン ストレートサイクロン(市販予定品 proto type)
燃料供給装置キャブレターヨシムラミクニTMR-MJN38 TPS付き K&Nパワーフィルター仕様
カムシャフト駆動方式チェーン式219KZアールケー・ジャパン
総排気量1,105ccΦ72mmピストン
潤滑装置トロコイド式オイルポンプZハイプレッシャーオイルポンプKITノーブレスト
エンジンオイルMOTUL 7100 10W-60 4TMOTUL JAPAN K.K.
オイルフィルターKN-1262310円K&Nエアフィルター
電装空燃比系PRO-GRESS3 A/F メーターヨシムラジャパン
点火装置フルトランジスタSPPⅡAS ウオタニ
データロガーAIM EVO45ベア
タコメーターThe chrono classicmotogadget
スピードメーターchrono classic speedo
冷却装置オイルクーラー空冷式Setrad / width:full Rows:13段グッドリッジジャパン
オイルホース♯8SPL Oil Hose / G-LINE XF 910
車体フォークブラケットΦ36用Z1 フォークブラケットkit(市販予定品 proto type)ヨシムラジャパン
サイドスタンドストッパー削り出しサイドスタンドストッパー Z1(市販予定品 proto type)
ハンドルバーエンドハンドルバーエンド Hight Line
フロントタイヤ110/80R19 M/C 59V TLバトラックス スポーツ ツーリング T32ブリヂストン
リアタイヤ140/70R18 M/C 67V TLバトラックス スポーツ ツーリング T32
フォークオイル15WMOTUL FORK OIL EXPERT MEDIUM/HEAVYMOTUL JAPAN K.K.
ブレーキフルードMOTUL RBF 600 FACTORY LINE
ドライブチェーン♯525XW SEALED MOTORCYCLE CHAIN 525XRE(ED.BLACKGOLD)アールケー・ジャパン
フロントブレーキホースSPL BrakeHose / Clear with Goodridge printグッドリッジジャパン
フロントブレーキホース クックカップリングDry-breaksG-LINK
リアブレーキホースSPL BrakeHose / Clear with Goodridge print
フロントブレーキディスクダブルディスク 320mmサンスター トラッドディスク T-22HF国美コマース
リアディスクシングルディスク 250mmサンスター トラッドディスク TR-13HZ
リアサスペンションツインショックオーリンズ Type 536DR1L BLACKLINE(KA756)カロッツェリアジャパン
フロントキャリパーダブルブレンボ Axial P4 30/34 Caliper Titan with Red Logoブレンボ・ジャパン
リアキャリパーシングルブレンボ P2 34 super sport
外装メーターケースアルミ削り出し SPL試作品ヨシムラジャパン
ステムエンブレムYOSHIMURA デザイン 試作品
リフレクターカバーYOSHIMURA デザイン 試作品
サイドカバーZ1 エアフィルター対応サイドカバー 試作品
アルミエンジンカバーパーツ No.280-291-A100 / 280-291-A2002万4200円
アルミオイルポンプカバーパーツ No.280-291-A500 / 280-291-A6002万4200円
バーボンナンバープレートホルダーパーツ No.599-021-00011万3200円
外装デザイン&ペイント専用SPLデザイン&ペイントWoodeye Design
Special Thanks:Wester Steven “Wes”Cooley 上記はすべて2024年3月現在 ※仕様や価格は変更となる場合あり

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