カジュアル系250ccバイク選び|ベネリ・レオンチーノ250とホンダCL250、スクランブラーならどっちを選ぶ?

輸入車といえばかつては大型バイクが大半でした。しかし現在は、アジア地域はもとより欧州メーカーからも中小型バイクが数多く輸入販売されています。(株)プロトが輸入販売するイタリアンブランド『ベネリ』もそのひとつで、現在、小排気量モデルを中心に8機種のラインナップが日本国内で発売されています。カテゴリーもクラシックからアドベンチャーまでさまざまありますが、スクランブラーに位置づけられているモデルがレオンチーノです。以前125のインプレを掲載しましたが、今回は上位モデルとなる250で街中から郊外まで走ってみました。さらに、同じスクランブラーでライバルとなるホンダCL250とも比較してみることにしました。

写真:徳永茂
協力:(株)プロト https://www.plotonline.com/benellimotorcycle/
ベネリ東京練馬 https://www.benelli-tokyo.jp/

オンロード走行を中心に置いたストリートスクランブラー

スクランブラーというとワイドなハンドルにブロックタイヤ、それにアップマフラーを装備したバイクを思い浮かべるのですが、レオンチーノ250のスタイリングはどちらかといえばネイキッドモデルとしたほうがしっくりきます。せめてブロックタイヤでも装着していればスクランブラーっぽさが出るのでしょうが、スタンダード状態のボディを見る限り、CL250のほうがスクランブラーらしさを実現していると思います。オフ色を求めるならCL250が適切な選択になるはずです。

一方のレオンチーノはといえば、デザインや装備面でスクランブラーらしさはあまり感じられないものの、いかにもヨーロピアンデザインといった独特のスタイリングが印象的で、これはこれで個性的で希少性があります。他とはちがうバイクに乗りたいと考えるライダーには興味深いモデルになるはずです。ともあれストリートで目立つこと請け合いです。

シャープでインテグレートされたボディデザインがヨーロピアンスタイルを表現。エンジンを中心にマスの集中化を図ったスリムでコンパクトなボディは、スクランブラーというよりネイキッドスポーツの構成で、個性的かつ新鮮な印象を与える
レブル250ベースながらスクランブラーという別ジャンルのバイクにうまく仕上げている。ボディはレブルよりやや大柄になったように見えるが、スリムで乗りやすそうな印象を与えている

トレリスフレームに水冷DOHC4バルブ単気筒エンジンを搭載したボディはスリムでコンパクトです。マスの集中化も図られていて、スポーティな印象を受けます。

シート高は800㎜とちょっと高めですが、スリムなので乗降性は悪くありません。足つき性に関してもスクランブラーとして見れば良好な部類でしょう。サスペンションの初期作動がソフトじゃないので、跨ってシートに腰を下ろしてもあまり車体の沈み込みは大きくありません。まあそんなちょっとした不満はありますが、アップライトな上体もあってポジションは自然で快適です。これなら街乗りもしやすいしツーリングにもいいんじゃないかと思います。

CL250はフロント19インチタイヤを履いていることもあって、ポジションはもう少しオフロードバイクに近い感じです。しかしシート高は790㎜で前後サスペンションの沈み込みも大きいことから、足つき性、乗り心地の面ではレオンチーノ250に優っていると思いました。

スリムでコンパクトなボディは、800㎜のシート高ながら乗降性が良く、足つき性も良い。上体はわずかに前傾するタイプで、スクランブラーというよりネイキッドスポーツのポジションに近い。車体のサイズを含めて親近感を覚える

水冷シングルエンジンは低中速で扱いやすくフラットな特性

心臓部のエンジンは水冷4ストDOHC4バルブ単気筒。CL250も同じ形式のエンジンを搭載しています。ちなみにスペックは、レオンチーノが最高出力19kw/9,250rpm、最大トルク21.0Nm/8,000rpmで、CLのほうは最高出力18kw/8,500rpm、最大トルク23.0Nm/6,250rpmとなっています。性能面ではほぼ互角といえ、レオンチーノのほうがやや高回転型としています。
始動すると、ダウンマフラーから力強く小気味良いサウンドが放たれます。発進して排気音を高めながら加速させると、エンジンはストレスなく高回転へと上昇していきます。とはいっても強烈な加速性を発揮するわけじゃありません。全体にフラットな特性のエンジンは、あくまでもスムーズなレスポンスで、どの回転域からでもアクセルに素直に追従します。CLも似たようなパワーフィーリングですが、吹け上がりはレオンチーノのほうが軽やかだと感じます。  250㏄シングルエンジンは一般道を走るうえでとくにパワー不足を感じることはありません。発進加速で車に後れを取ることはありませんし、120㎞/hでの高速道路巡航も十分にこなしてくれます。ただし微振動はグリップを通して伝わってくるので、長時間の高速走行では不快に感じるかもしれません。でも、それによって疲労が増幅することはないと思いますので、ツーリングの相棒として乗るにも手ごろなバイクじゃないかと感じます。

最高出力19kw/9,250rpm、最大トルク21.0Nm/8,000rpmという性能を持つ水冷DOHC4バルブ単気筒249ccエンジン。このクラスのシングルとしては平均的なスペックで、フラットなエンジン特性はクセがなく操作しやすい
レブル250と同じ水冷DOHC4バル単気筒エンジンを搭載している。ただし最高出力、最大トルクともにレブルより低い回転で発生する低中速型の特性としている。レオンチーノと比較してより低回転型となっている

安定性志向ながら素直なハンドリングでストリートからワインディングまで走りが楽しめる

コンフォート性よりスポーティさを狙ったのか、前後サスペンションはややハードな設定だと感じます。そのため乗り心地は硬めです。スクランブラーとして見た場合、サスペンションストロークが大きくてソフトに作動するほうが適切だと思うのですが、レオンチーノはロードスポーツに近いセッティングとしているようです。この点に関してはCLのほうがスクランブラーらしい足回りとしていると思います。
ロードスポーツとするならばハンドリングには切れがあるのかというと、そういう方向性でもありません。全体には安定性志向となっていて、落ち着きのある特性となっています。アップライトなポジション、フラットなエンジン特性と合わせて、このしっとり感のあるハンドリングは実によくマッチしています。サスペンションのプリロードをソフトな方向へアジャストしてやれば、さらにゆったりと走ることができるはずです。快適性をアップさせればよりツーリング向きのバイクになると思います。
ABSが標準装備された前後ディスクブレーキも、入力に応じた効きを示してくれるのでコントロールしやすかったですし、制動力に不足を感じることもありませんでした。
レオンチーノでわざわざ林道ツーリングする人はほとんどいないと思いますが、あえてフラットダートに乗り入れてみました。ハードライディングするには向いてないですが、普通に走行するぶんにはまったく不安はありません。道路工事などで未舗装となっているところを走ることもツーリングでは多いですが、そんな道も涼しい顔で走破できます。一方のCLは、フロント19インチでタイヤもオフロードタイプが装着してあるので、フラットダートはもちろん、林道ツーリングにも乗っていけます。ダート性能ではレオンチーノより上ということができます。

素直で軽快なハンドリングを実現しているが、基本的には安定性を重視したもの。落ち着きのある走りができるタイプだ
ゆったりとしたモーションでコーナーワークするタイプ。作動性の良いサスペンションにより快適な乗り心地を提供してくれる
タイヤがオンロードタイプなので、高いグリップ力は期待できないが、フラットダートの走破性に大きな不安はない

突出した性能はありませんが日常的に使い勝手がいいオールラウンダー。レオンチーノ250にはそんな印象を持ちました。そういう意味ではスクランブラー性を持ち合わせたバイクだといえるのかもしれません。ストリートからツーリングまで幅広いフィールドで走りが楽しめるバイク、そしてライダーに負担を強いない性能、それがレオンチーノ250の魅力なんじゃないかと思います。

ディテール解説

テーパードタイプのセミアップハンドルは手前にやや絞られた形状。そのためアップライトで快適な上体を生んでくれる
スイッチ類は全体に小さめ。左スイッチには上からヘッドライト上下切り替え、ウインカー、ホーンが並ぶ
縦型の楕円ヘッドライトが個性的な表情を作り出す。デイライトを含めてランプ類はすべてLEDだ
ホイールは前後とも細身の12本スポークキャスト。ブレーキはΦ280㎜ペータルディスクを装備したシングルディスク
燃料タンク容量は12.5Lで燃費はWMTCモード31.3km/L
フロントサスペンションにはΦ41㎜倒立フォークを採用。フロントフェンダー上にはライオンのアクセサリーが装備されている
中央に装備されたメーターは、スクエア形状の液晶ディスプレイで、昼夜を問わず視認性はいい
右スイッチは上からキル、ハザードが赤で、下にセルスタータースイッチが配置されている
テールランプ、ウインカーランプなどの灯火類はすべてLED。視認性、被視認性は良好
リアブレーキはΦ240㎜ペータルディスク採用。前後にABSを装備している。タイヤはメッツラーのラジアルを装着
着脱式のダブルシートは自由度が大きく、クッション性も良好
リアサスペンションにはリンクレスモノショックを採用している。スポーツ性を意識してか全体にハードな設定だ。もし快適性を重視するなら、プリロード調整でソフトな方向にアジャストしてやればいい

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著者プロフィール

栗栖国安 近影

栗栖国安

TV局や新聞社のプレスライダー、メーカー広告のモデルライダー経験を持つバイクジャーナリスト。およそ40…