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ホンダ・CBR250RR…….821,700円
『直感、体感、新世代“RR”(ダブルアール)』としてデビユーしたのは2017年4月の事。当初の年間販売計画は3,500台。新色追加と1度のカラーリング変更を経て、今回2020年秋のマイナーチェンジでは、エンジンにも手が加えられ出力を向上。クラッチもアシストスリッパー付きに一新された。オプションながらクイックシフターも用意。なかなか力の入った進化熟成ぶりを披露している。
しかも本体価格は据え置かれており、商品力は一気に向上した。年間販売計画は4,000台とされ、安定した評価と人気を裏付ける台数である。
ちなみにCBR250RRはこのクラスのスーパースポーツモデルとしてトップレベルに位置づけられていた。価格的にも税込みで80万円を超える設定。他の2気筒スポーツより20万円程高く、ある意味ライバル無き存在だった。
しかしご存じの通り2020年9月にカワサキから4気筒エンジン搭載のNinja ZX-25Rが新発売。CBR250RRの牙城を脅かす存在の登場に多くの注目が集まる中、CBR250RRは4種のカラーバリエーションを持つこの新型で迎撃体制が整えられたのである。
右サイドカムチェーン方式、DOHC 8バルブの水冷ツインエンジンはハイコンプレッションを得るべくピストンを変更。吸排気系も専用チューニングされて、最高出力は38ps/12,500rpm~41ps/13,000rpmに向上。最大トルクも11,000rpmの発生回転数は変わらずに23~25Nmへとトルクアップを達成している。
ピークデータで比較するとZX-25Rの45ps/15,500rpmに及ばないが、トルクは21Nm/13,000rpmのZX-25Rより太い。しかもパワーウエイトレシオ、馬力当たりの重量で比較するとZX-25Rの4.09kg/psに対してCBR250RRは僅差ながらも4.07kg/psと優っているのである。
低速域から高速域まで力強い出力特性が追求され、スーパースポーツとして扱いやすい魅力的な進化を果たしていると言う。
クラウン形状も新しいピストンはリング溝に錫メッキ処理を追加。強度を高めた浸炭コンロッドを採用。フリクションロスの低減化も徹底され、クランク軸前方にレイアウトされた1軸1次バランサーシャフトも小径化。バルブスプリングも荷重負担を低減、シリンダー下端の切欠き追加等でエンジン内のポンピングロス低減も図られる等、性能向上策は多岐に及んでいる。
さらに操作力の軽いアシストスリッパークラッチを搭載。激しい減速時に後輪からのバックトルクを逃がすことで後輪のホッピングを防いでくれる。そして6速トランスミッションには前述の通り、オプションながらアップ/ダウン対応クイックシフターが設定された事も魅力的である。
また1速ローのギヤ比が変更されて3.272~3.181に少し高められているのも見逃せない。これは十分なトルクアップが達成された事に伴う自信の現れとも言えるが、各速繋がりの良い操作性向上策にも手を抜かない姿勢で、とことん熟成進化策が講じられた証拠のひとつとも言えるのである。
車体関係に大きな変更は無いがサスペンションはフリクションロスの低減とダンパーの最適化を実施。また燃費率は定地データこそ変化ないが、モード値では26.7km/Lから27.1km/Lに向上している。
デビュー当初CBR250RRは、発進加速、追い越し加速、最高出力ともクラスNo.1の3冠王を自負していた。ひとつはZX-25Rにその座を奪われたわけだが、今回の新型投入では残る2冠を死守する気概が感じられるのである。
進化の大きい魅力的なハイパフォーマンスを披露
トラス構造、赤いスチールパイプのダイヤモンド・フレームと塗装面の奥がキラキラと輝く上質なパールグレアホワイトのカウルを纏った試乗車を目前にすると250とは言えなかなかどうして立派な車格感を覚える。ガソリンスタンドでも「コレ、250なんですか」!?と驚かれてしまった程、ボリューム感は十分である。 ただ跨がると足つき性が良く、とても安心感がある。やはり2気筒の軽さは親しみやすいという点で好印象。低いノーズからヒップアップテールでフィニッシュするデザインのサイドビューは精悍。
ゴールドに輝く倒立式フロントフォークやブレーキキャリパー、そしてキッチリと肉抜きされている7本スポークタイプのキャストホイール等、各部には上質な装備パーツが奢られている。基本的にデザインは変わっていないが、改めて上級モデルである商品力の高さが印象深い。
エンジンを始動して軽くブリッピングすると弾けるような乾いたエキゾーストノートがいかにも元気ハツラツな感じ。明らかにパワフルなイメージが強調されており、以前とは別物である事がわかる。
実際、操作感が軽くなったクラッチを握り走り始めると、ローのギヤ比が高められているにも関わらず、低速域からトルクが十分に太く発進時のクラッチワークが楽。
するするとかつ力強い加速力で立ち上がり実に簡単にテキパキ走れてしまう。だいたい4,000rpmも回せば市街地では十分なパフォーマンスを発揮。6,000rpm前後まで引っ張ると実に歯切れの良い排気音と共にクラストップレベルの動力性能が実感できる。
ローギヤで5,000rpm回した時のスピードは24km/h。6速トップギヤで100km/hクルージング時のエンジン回転数は7,000rpm。120km/hクルージングなら8,500rpm。ちなみにレッドゾーンは14,000rpmから。低いギヤでは難なくその領域に飛び込むだけに、トップギヤで伸びを待てば最高速度は200km/h に迫る計算になる。クラストップレベルの動力性能を誇るポテシャルはやはり侮れないのである。
しかしそれよりも魅力的なのは、トルクバンドが広い事。発進時は2,000rpm台でも加速力にストレスは無い。4,000rpmを超えるとモリモリと加速力が増して行く出力特性は頼り甲斐がある。さらに8,000rpmを超える領域はエキサイティングな吹き上がりを披露、そのスロットルレスポンスは強烈である。
ライディングモードを「スポーツ+」にすればさらに抜けの良い排気音と共に元気ハツラツな走りを披露してくれるので、サーキットでスポーツ走行を楽しむ上でもまるで不足のないポテンシャルを備えている。
ついつい気になるライバルと比較してしまうが、高回転まで回る(回せる)楽しみと、その小気味良さでは4気筒の咆哮を耳にできるZX-25Rに一歩譲るが、走りの性能と扱いやすさはCBR250RRも決して負けていないと思えたのが正直な感想。
実際CBR250RRは、発進停止の多い渋滞した市街地から高速でのクルージング性能まで、より柔軟で扱いやすく快適だったのである。
クイックシフターもギヤ比のギャップが大きなローからセカンドへのシフト時は多少ショックが発生したが、それ以降のシフトワークは実に小気味よく決まり快適に走れた。シフトダウンも同様で、エンジン回転数を巧みにシンクロさせてくれて気持ち良い。
通常のライディングモードはスポーツだがコンフォートにするとスロットルレスポンスが穏やかになる。同時に排気の弾け音もいくらか静かになるので、早朝の住宅街を抜ける時や雨中、タンデム走行等に有効である。
操縦性も素直でブレーキ操作も含めて総じて扱いやすいのはこれまでの定評通り。前後サスペンションのフットワークも優秀で荒れた路面でも乗り心地は良かった。
ライディングポジションも前傾姿勢は適度なレベルでツーリングにも適応できる。しかしやや後退したステップ位置の関係で、下半身の筋力を活かしてスポーツライディングにも自然と対応できる。タンクやシートとライダーとの接点も気持ち良くフィットし、スポーツ走行も違和感なくこなせてしまう。郊外の峠道では気持ち良く各コーナーを自由自在に走れるし、高速クルージングも気になる振動が少なく十分な快適性が確保されていたのも見逃せないわけだ。
4気筒エンジン搭載という強敵の出現で、しのぎを削るべく、今回の新型CBR250RRはかなり気合の入った熟成進化を果たした事が理解できた。ツインエンジンの魅力を遺憾なく発揮していると思えたのが印象的。その魅力には改めて感動した程なのである。