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レオンアート・PILDER 125……594,000円
今回、二日に分けて4台のレオンアートに試乗した、外観デザインも細部の仕上げも別格の高級感を醸し出されていたモデルが今回のPILDER 125である。
既に試乗記を掲載したHERITAGE 125よりもさらに大きく立派な車格を誇り、全長は実に2390mm。後輪には190/50扁平の極太17インチタイヤを履き、左片側で支持されるアルミスイングアームを採用。フロントは100/90扁平の19インチサイズを履く。
ロー&ロング・フォルムと、車体まわりの随所がカバーリングされて隙間が埋められたデザイン処理が新鮮。リヤショックの存在も外から見ることはできない。
同ブランド内の他のバリエーションモデルにも見られないデザイン手法の採用は、特別に上質な雰囲気を醸し出す事にも貢献している。
レオンアートに関する情報量は少なく、詳細データも把握できていないが、このPILDER 125はバルセロナにあるNACAR Strategic Design Agencyが手がけたそう。同社のWEBサイトにも作品例の一つとしてPELDER 125のリヤビュー写真が美しく掲載されている。
そのデザインコンセプトは「A ride that strides」である。大きくゆっくりと歩むイメージの中にカフェレーサーを融合した様な斬新なものとし、若いユーザーへの訴求を狙って作られたようだ。
製造は中国の力帆(LiFan)工場で、搭載エンジンは一連の水冷125ccの2気筒。ただ、これもチューニングの度合いが異なり、こだわりの高出力を発揮すると言う。
吸排気系が異なる等の違いがあるとは思うが、これも詳細データは不明。ただし、燃料噴射や点火制御を担うECU(エンジン・コントロール・ユニット)に、他のモデルとは異なるオリジナル部品が使われていることは間違いない。
価格は同ブランド最高の594,000円。リーズナブルな他のモデルと比較すると、また国産125ccスポーツモデルと比較しても、決して安くはないが、一見リッタークラスかそれ以上のボリュームと、それなりの高級感を感じさせてくれる異色モデルとして見ると、かなりリーズナブル。その商品力は侮れないのである。
ずっしり、どっしり、ゆったりを愉しむ。
先に掲載したHERITAGE 125は、その車体の大きさを400ccか750ccの様と表現したが、今回のPILDER 125は1Lかそれ以上の巨漢に見える。少なくともこれまでの常識的125ccクラスとは思えない立派で堂々たるサイズ感があり、不思議とそれが魅力的に思えてくる。
あえてハーレーダビッドソンのモデルに例えるとクルーザーカテゴリーに有る最新FXDR 114に少し似た傾向が見られる。もちろんスマートな仕上がりだが、どこかそれを手本にした部分がある様な雰囲気が漂う。
地上高が700mmのシートに跨がると、ライディングポジションは両手両足を前方に投げ出す感じ。どちらかと言うと足よりも手の方(ハンドル位置)が遠く感じられ、上体はやや前傾姿勢となる。
車両重量も180kg あり、ピンクナンバーの原2バイクであることがにわかには信じられない事だろう。
エンジンを始動すると、抜けの良い少々勇ましい排気音が耳に入る。車体からイメージされる図太く低い音質ではないが、それなりの音量がある元気の良いサウンド。どこか健気に発揮された高出力ぶりを主張しているかの様である。
実際クラッチミートした直後から、その吹け上がりは十分にパワフル。大人しい出力特性だったHELITAGE 125と比較すると重い車重をカバーしてなお余る高性能ぶりを発揮。あきらかに特性の異なるハイパフォーマンスが楽しめるのである。
有効なパワーバンドも3,500から8,500rpmまでと広く、吹け上がり速度も少しシャープになっている。上は9,500rpmあたり迄で同じだが、頑張れば10,000rpmまでは回りそう。
ちなみにローギヤで5,000rpm回した時の速度は20km/h。HERITAGE125やDAYTONA125とは異なりPILDER125には6速ミッションが採用されており、全体的に高めなギヤリングが採用されている。
残念ながらPILDER125のギヤレシオに関する詳細データが無いので、正確な事は言えないが、パワーアップされたエンジンに合わせて、低い回転でいくらか静かにクルージングできるように考えられているようだ。
これまでの固定観念や開発コンセプトから言えば、すこしヤンチャに見える程元気の良いエンジンは、全体の雰囲気に似合っていないような気もするが、上まで回しても結構楽しめるエンジンであったのが印象深い。それは市街地でも存分に発揮して楽しむ事ができるのである。
前後サスペンションはしっかりしており、乗り味はハード。ステアリング回りにもドッシリッと重量感が伴う。操舵フィールと直進性も落ちつきがあった。
バイク好きの方だろうか。信号待ちしていると、何度か遠くから視線を集めている事に気付く。もし近くに居たなら、おそらく「コレ、何ccですか?」と訪ねられることだろう。まだ見慣れぬ珍しいブランドとデザイン、その特殊な商品力で話題が広がり、「LEONARTのプレミアムモデルなんです」!等と、しばしバイク談議に花が咲くことは請け合いなのである。