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国産モデルの新型も続々登場しラインアップが充実
バイクにはさまざまなカテゴリーが存在するが、「ストリートファイター」もその中のひとつ。従来、125cc~1000ccまで多様な排気量のモデルが存在しているが、前述の通り、2025年も新型モデルが目白押しだ。
たとえば、国産車でいえば、ホンダが1000cc・4気筒の「CB1000ホーネット/SP」を1月23日、750cc・2気筒の「CB750ホーネット」を2月13日にそれぞれ発売。また、ヤマハでは、MTシリーズのミドルサイズモデル「MT-07」の最新型と、それをベースに電子制御シフト機構を備えた「MT-07 Y-AMT」をいずれも2月26日に発売している。さらに、カワサキでは900cc・4気筒の「Z900 SE」のモデルチェンジ版を4月12日に国内導入するなど、ラインアップがさらに充実している。
そんなストリートファイターだが、まずは国産車を例に、どんなモデルがあるのか以下に紹介してみよう。
【国産ストリートファイターの主なラインアップ】
*2025年5月現在で発売中のモデル
●1000ccクラス
ホンダ・CB1000ホーネット
ヤマハ・MT-10/SP
スズキ・GSX-S1000
カワサキ・Z H2/SE




●600cc~900ccクラス
ヤマハ・MT-09/SP/Y-AMT
カワサキ・Z900/SE
カワサキ・Z7ハイブリッド
スズキ・GSX-8S
ホンダ・CB750ホーネット
ヤマハ・MT-07/Y-AMT
カワサキ・Z650






●300cc~400ccクラス
カワサキ・Z400
ヤマハ・MT-03


●126cc~250ccクラス
ヤマハ・MT-25
スズキ・ジクサー250
カワサキ・Z250
スズキ・ジクサー150




●125cc以下クラス
ヤマハ・MT-125
スズキ・GSX-S125
ホンダ・グロム
カワサキ・Z125プロ




このように、ストリートファイターは、小排気量から大排気量まで、さまざまなモデルが存在する。しかも、これらは、日本だけでなく、例えば、600cc〜1000ccの大型モデルなどは、欧米などでも大人気。また、250cc以下の小排気量モデルでは、アジアやインド、アフリカなど新興国でも数多く走っていることで、いわばグローバルモデルという位置付けとなっている。
ちなみに、カワサキが2025年2月15日発売に発売した「Z7ハイブリッド」は、フルカウルモデルの「ニンジャ7ハイブリッド」と共に、世界初のストロングハイブリッド機構を搭載したモデル。電動化スポーツバイクも登場することで、ストリートファイターの選択肢は益々広がっているといえるだろう。
元祖は1988年登場のススキ・ウルフ?
そんなストリートファイターだが、起源には諸説ある。例えば、1980年代から1990年代には、当時人気だったフルカウルのレーサーレプリカをベースに、カウルを取り外したカスタムが流行。元々のセパレートハンドルをバーハンドルに交換するなどで、街乗りでも乗りやすいようにしたカスタムバイクが人気となったが、それを源流という説もある。
ちなみに、その説がもし当たっているとすれば、1988年にスズキが出した「ウルフ」という2ストローク・250ccモデルは、ストリートファイターの元祖的な存在といえるかもしれない。

レーサーレプリカマシン「RGV250Γ」をベースに、カウリングのないネイキッドタイプとし、街乗りで乗りやすい味付けを施したのがこのモデルだ。エンジンには、RGV250Γと同じ249cc・水冷2スト90°V型2気筒を搭載。45PSという最高出力はそのままに、低・中速域を重視したセッティングに変更。当時の2スト250cc・レーサーレプリカには、ピーキーな高回転型エンジンを搭載することで、街乗りで扱いにくいマシンも多かったなか、シティユースでの扱いやすさも考慮していたことが特徴だといえる。

まさに、メーカーが手掛けたレプリカ・ベースのカスタム・ネイキッドといえるのがウルフ。当時は、ストリートファイターという言葉はなかったが、サーキットにも対応する高性能なマシンを、カウルレス化などでストリート向けにモディファイしたバイクという方程式は同じ。その意味では、ストリートファイターの「先駆け」と呼べるモデルであることは確かだろう。
スタント競技用カスタムバイクが始まり
ストリートファイターという名称の源流でいえば、2000年初頭頃から欧米で人気となったエクストリームバイクなど、アクションスタント競技用バイクを発祥とする説もある。
こうした競技では、前輪を浮かすウィーリーや後輪をホップさせるジャックナイフ、後輪を滑らせて走るドリフトなど、まるで曲芸のような動きを披露するのが特徴。また、競技用バイクには、主に、1000ccなど高性能なスーパースポーツをベースとしたカスタマイズ仕様車を使っていた。

競技用バイクの主なカスタムは、例えば、ハンドル。ベース車がグリップ位置の低いセパレートハンドルを装備していたのに対し、高い位置で小まわりなどもしやすいバーハンドルに交換。また、転倒しても割れないようにカウルを取りはずしたモデルも多かったようだ。
そして、これらバイクたちは、元来の高い動力性能をライダーが制御しながら、派手なアクションを披露し、とくに海外では大きな人気となった。その後、ストリートでも、同様のスタイルを採用したカスタムバイクが人気となり、ストリートファイターという名称で大きなブームとなったといえる。
そうした市場動向もあり、2輪車メーカーでも同様のスタイルを採用した市販車を数多くリリース。前述の通り、現在では、125ccなどの小排気量クラスから1000ccの大排気量クラスまで、さまざまなモデルを販売。まさに世界的な人気ジャンルのひとつとなったのだ。
ストリートファイターの特徴や魅力は?
ストリートファイターの特徴や魅力といえば、まず、スーパースポーツ譲りの高い動力性能を持ちつつも、低・中回転域でのパワー特性を重視するなどで、速さと扱いやすさを両立していることだろう。
たとえば、ホンダのCB1000ホーネットは、スーパースポーツの2017年型CBR1000RR用の高性能なエンジンを採用する。元々は最高出力192PSもの大パワーを発揮する999cc・水冷DOHC直列4気筒エンジンだ。


CB1000ホーネットでは、そのエンジンをベースに、最高出力をスタンダードで152PS、オーリンズ製サスペンションなどを採用する上級モデルのSPで158PSに抑えている。その一方で、軽量化を図った新開発ダイキャスト製ピストンを採用したほか、バルブタイミングおよびバルブリフト量を変更。トランスミッションとファイナルギアレシオも専用セッティングとするなどで、低・中速域のトルク特性と最高出力、巡航性能を高いレベルでバランスさせ、高い動力性能と市街地での扱い易さの両立を図っている。
ストリートファイターは、車体関係の装備でも、ストリートでの扱いやすさなどを重視していることが特徴だ。たとえば、バーハンドルやステップ位置など。これらを楽なライディングポジションとなるようセッティングしているモデルがほとんどだ。セパレートハンドルなどにより、前傾姿勢がきつめのスーパースポーツなどと比べると、街乗りはもちろん、長距離ツーリングでも快適で、疲労度が比較的少ないといったメリットがあるといえる。
もちろん、ベース車の動力性能は非常に高いため、ワインディングやサーキットなどでのスポーツ走行でも、かなり楽しめることも魅力。つまり、街乗りからツーリング、クローズドのコースまで、幅広いシーンで走りを堪能できるバイクだといえる。
そして、デザイン。フルカウルのスーパースポーツがベースなので、エッジが効いたフォルムを継承していることがポイントだ。たとえば、フロントのミニカウルなどで、まるで野獣のようなアグレッシブな顔付きを持たせているモデルも数多くある。また、ほとんどのモデルが、燃料タンクやリヤカウルなどにも、シャープなデザインを採用していることも特徴といえる。
もちろん、デザインの好みは、人によってさまざま。丸目一灯ヘッドライトなどでベーシックな雰囲気を演出する一般的なネイキッドに対し、より攻撃的でスポーティなスタイルが好きなライダーには、ストリートファイターは最適なバイクだといえるだろう。

いずれにしろ、ラインアップが拡大中のストリートファイターは、今後も注目ジャンルのひとつであることは間違いない。多様な排気量があることで、初心者からベテランまで幅広いライダーに対応。個性的なデザインはもちろん、高性能な動力性能を扱いやすく調教するなどで、ストリートに特化したスポーティかつ快適な走りを味わえるバイク群だといえるだろう。