江戸時代後期に山林業で財をなした小机家。その七代目当主・小机三左衛門が建てた自邸を喫茶室としたのが「小机邸 喫茶室 安居」です。秋川街道沿いに建つこちらのカフェは石畳のエントランスと石垣の存在感が抜群なので、何となくその存在を知っていた方も多いのではないでしょうか。
喫茶室のある母屋は2階建てで、2階部分には眺めのよさそうなバルコニーがあります。レトロな趣があるこの洋館が建てられたのは、なんと明治8年頃。そのため完全な西洋建築ではなく、土蔵造りの伝統的な技法の中に洋風の意匠を取り込んだ和洋折衷様式となっています。
入口のアーチをくぐると、内部の意匠は意外にも和風で、なんだか落ち着く雰囲気。玄関の土間では、兎と波をあしらった鏝絵が出迎えてくれました。座席は1階のみで、板張りの洋室と畳敷きの和室があります。2階はイベントの時など特別な場合に開放しているそう。
ここがカフェとして開放されたのは2011年5月のこと。それまでは個人の居宅として、また、見学できる近代建築として使われていたのだそう。板張りの洋間もカフェのために改装したわけではなく、60年ほど前に家族団らんのためにリフォームしたものなのだとか。
カフェのドリンクメニューは、抹茶・紅茶・コーヒー・りんごジュースの全4種で、フードメニューは自家製チーズケーキがあります。元々は建物の見学に来る方に現当主の奥さまがサービスでお茶を出していたことがきっかけで始められた喫茶室なのだとか。
「安居」とは、僧が一定期間出歩かないで一カ所で修行すること。「建物をながめながら、せっかくだからゆっくりとくつろいで欲しい」そんな思いで付けられた店名の通り、お茶を頂きながら静かでゆったりとした時間を過ごすことができました。
明治時代に建てられた和洋折衷様式の建物でお茶を頂くことができる「小机邸喫茶室 安居」。気さくなオーナー夫妻が温かく迎えてくれる素敵なお店でした。これからもこの街の歴史を伝える建物として受け継がれていくことを願っています。
●小机邸喫茶室 安居
〒190-0162 東京都あきる野市 三内490
TEL:042-596-0068
営業時間:11:00~16:00
定休日:火・水・木曜