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スズキ・ジクサーSF 250…….481,800円
発売に先駆けてスズキはプレス発表会の開催を予定していたが、新型コロナウイルス感染防止の配慮に則り去る3月19日にWebライブ配信形式での新商品説明に変更された。
スズキ二輪の浜本英信代表取締役社長を始めチーフエンジニアの野尻哲治さん、デザインの毛塚康太さん、エンジン設計の森 公二さん、技術品質評価の佐藤洋輔さんがリモートワークで登場しジクサーSF250と同250の開発に掛けた想いの丈を語ってくれた。
6月17日発売予定のネイキッドモデル(ジクサー250)と共に年間販売計画は1,800台。これによりスズキは軽二輪ロードスポーツに4機種もの品揃えを誇ることになる。
ジクサーSF250のメインターゲットは若年層だがベテランライダーにも納得できる仕上がりを達成。笑顔を届けるべく結成されたlol(エルオーエル/5人のダンス&ボーカルグループ)を起用しSNSを活用したプロモーションを展開する。
説明内容を簡単にお伝えすると、本誌既報のジクサー150と基本的に共通する車体に新設計の油冷エンジンを搭載。フルフェアリングを装備したスタイリッシュなスポーツモデルに仕上げられている。
もちろん250専用に要所要所が手直しされて車体剛性を向上。例えばダイヤモンドフレーム・メイン部分の板厚は0.3mm厚い。スイングアームも角断面パイプの太さを30×50mm~30×60mmへと専用設計されて捩じり剛性向上が図られた。
前後サスペンションやブレーキもサイズアッップされた専用品を奢り、ABSも前のみの1チャンネル式から前後共に作動する2チャンネル方式に。
さらに専用新開発されたSEP(スズキ・エコ・パフォーマンス)エンジンは、ロングストローク2バルブの150に対して250はショートストロークの4バルブを採用。
柔軟な扱いやすさには定評がある150の出力特性に加えて、それよりも良く回る高回転高出力な出力特性が加味されたと言う。排気量の拡大と高性能の追求で懸念される冷却性能をより確かなものにすべく新開発されたのが、新形油冷のSOCS(スズキ・オイル・クーリング・システム)である。
冷却ファン付きのオイルクーラーを備えて燃焼室周辺(シリンダー上部~シリンダーヘッド)に独自のオイル通路を設けた油冷方式を採用。空冷の様な冷却フィンは持たず、150よりもむしろコンパクトに仕上げられているのも見逃せない。
外観デザインもLEDランプを多用した斬新なスタイリングを始め、ライバルのどれよりも廉価な価格設定も注目の的だが、その開発コンセプトは「多用途に使える汎用性のあるスポーツバイク」と言う。
生産国のインド市場では、150がフラッグシップモデルであり、多くのユーザーの憧れの的となっていると言う。今回の250はさらにその上を担う上級モデル。流石に日本市場では上級仕様というニュアンスの位置付けではないが、軽二輪の市場ニーズを上手くとらえた逸材であることに間違いは無いのである。
誰でも長く付き合える万能スポーツモデルだ。
フルフェアリングをまとったフォルムはネイキッドスタイルの150よりやや大柄に感じられたが、実際の寸法はほぼ共通でとても親しみやすい。ただ、車重が19kg重いのとハンドル幅が60mm狭い関係か、取りまわしや引き起しの感覚にはクラスの違う手応えが感じられた。
SF250の扱いやすさも十分にフレンドリーだが、改めて思い起こすと150は125ccモデル並の軽快さが印象的だったと言うわけだ。
低く身構えたフルフェアリングや、リヤに装備されたトリプルフェンダー、斬新デザインの前後LEDランプ、液晶メーター等、今のトレンドを採用した仕上がりはなかなか立派な出来ばえ。一方で細部の使用部品には安っぽさが見える箇所もいくつかあるが、お値段を知ればそれも納得。それらもあまり気にならなくなってしまうから不思議。
跨がるとライダーの上体はほんの僅かに前傾する。見た目のフォルムはレーサーレプリカ系に近い低さがあるが、ライディングポジションはツアラー的。若干の前傾姿勢は高速クルージング時に前方から受ける風圧とちょうど良くバランスする感じである。
市街地に走り出すと直ぐに気づくのがシッカリとした直進安定性が発揮されている事。そしてもうひとつ、3,000rpmからモリモリ太くなるパワー感には流石に250ccならではのゆとりと力強さが発揮されていた。
ボア・ストロークは76×54.9mmというショートストロークタイプ。そのスクエア比から想像されるよりはエンジンの噴き上がりが穏やかでヤンチャな印象は皆無だ。クランクマスの調教も含め、柔軟で落ち着いた出力特性に仕上げられていることがわかる。
レッドゾーンは1万回転から。高回転高出力を加味した事で、150よりは頭打ち感の少ない伸びの良さも発揮できるが、ダイナミックな加速をしたい場面でも普通は7,000~8,000rpm程度でシフトアップしていくのが自然な感じであった。
フリクションも伴うシフトタッチの固さは気になってしまったが、エンジン自体は柔軟でとても扱いやすく、実用的なハイパフォーマンスが楽しめるのである。
低中回転域でも十分な粘り強さを発揮。シフトダウンを不精してもギクシャクすることなく加速してくれる余裕もある。市街地を3,000rpm前後で軽~く流す使い方がとても心地良い。ちなみにトップ6速3,000rpm時のスピードは44km/h。
ローギヤで5,000rpm回した時の速度は25km/h、トップ6速100km/hクルージング時のエンジン回転数は6,750rpm。エンジンの振動が若干気になり出すが、許容範囲。なかなか安定感のある乗り味が快適である。
前後タイヤにはタイランド産のダンロップ製スポーツマックスGPR300を装備。ハンドリングは軽過ぎないしっとり感が伴い、このクラスのライトウエイトスポーツとしては落ち着いた印象の味付けだ。
前後サスペンションは、大きなギャップを通過した時は、流石にガツンと衝撃が伝わって来たが、路面舗装の良い日本の道路でそれが気になる機会はそう多くはないだろう。また衝撃を受けても車体全体の剛性感としてやわな印象は感じられなかった。
ブレーキの扱いやすさと効きも十分。しっかりとしたシートクッションも十分な厚みが感じられた。
キャラクターとして上級上質を訴求するバイクではないが、日々実用的な移動道具として活用し、休日には骨休めに気ままなツーリングへ。そんなフル活用するにもってこいな逸材と思えた。
とてもリーズナブルな選択肢として魅力的である。