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BMW・R nineT……2,094,000円〜
古き良きカフェレーサーの現代版!
2013年のミラノショーで発表されてから早7年。基本構成を変えずにカスタマイズの提案を行い、今なお新鮮な輝きを失わないBMW・R nineT(アールナインティー)。
クラシックなデザインと1169ccの伝統的な空油冷の水平対向2気筒エンジン(フラットツイン)とスチールパイプ製4ピースフレーム、スポーク仕様のリムなどをみれば、時代をさかのぼったノスタルジックな印象を受けるが、φ46mm倒立フロントフォークやモノブロックのブレンボ製ラジアルマウントキャリパーなどは、最新のリッタースーパースポーツと同等の装備だから侮れない。さらに、2017モデルからETC2.0やグリップヒーターを標準装備。フロントサスペンションの調整機構やメーター周りのデザインも変更されて着実に熟成を遂げている。
このR nineTは、発表当初から世界中のカスタムビルダーから注目を集め、絶好のカスタマイズのベース車として人気を博している。当のBMWもヘリテイジシリーズを代表するベーシックモデルと位置づけ、派生種として往年のG/Sをモチーフにした“Urban G/S”、ロケットカウルを装着したレーサースタイルの“Racer”、シンプルさを追求した“Pure”、オフロードタイヤやハイマウントマフラーを装着した“Scrambler”といったバラエティに富んだモデルを次々と生み出してきた。
サラリと魅せる! モダンなカスタム仕様
今回試乗したR nineTは、Option719ポルックス・メタリック/アルミニウムという名のオプションカラーで、シングルシートやアクラポヴィッチ製マフラーをはじめ、オプションのビレットパーツ(Option719ビレット・パック・ストーム)が装着されていた。ちなみにOption719とは、ドイツ本国で生産されたカスタムメイド製品に使用されるコードネームだ。
メーカー純正カスタムなので一体感やデザインバランスなど、違和感なく車格のグレードアップに貢献している。素直にカッコいいと思うし、撮影しているとライダーだけでなく一般人からの熱い視線を受けるほど注目度も高かった!
フラットツイン独特のフィーリングを堪能!
ライディングポジションはコンパクトだ。大きな燃料タンクこそ威圧感があるが、絞られたタンク形状とスリムなシートによってシート高805mmの数値よりも足着き性はまずまず。ハンドルやステップ位置も無理がなく、小柄なライダーでも不満を覚えることはないだろう。
R nineTの空油冷1169ccエンジンは、最新のR1250GSの水冷1254ccエンジンからすると2世代前となる。それゆえに最高出力110psの数値は、リッタースポーツモデルとしてはさほど驚く数値ではない。しかし、このエンジン特性で驚いたのは、低速から十分なトルクがあったことだ。もともとフラットツインエンジンは低速域のトルクが少し薄いといわれていたが、発進から十分な押し出しが感じられた。最大トルク116Nmを6000rpmで発揮するのは、同型エンジンを搭載するR1200GSなどと同等だが、2000rpmも回転を上げればしっかりと応えてくれて、“使える加速”が得られる。フラットツイン独特の鼓動感を楽しんでいると、頑張っていないのにアベレージスピードが思ったよりも上がってしまうので注意が必要だ。
コーナーでは積極的に体重移動しなくても、スルッと曲がってくれるのはハンドリングと車体の素性の良さからくるものだろう。何も考えずにアクセルワークとブレーキ操作に集中するだけで街中から高速のクルージングまで快適に走れてしまう。乗り心地とスピードがしっかりとリンクしているのだ!
バイクブーム全盛の80年代、前傾姿勢のレーサーレプリカで必死に走っていた自分を、「なにを一生懸命頑張ってるんだい?」と言わんばかりに、アップライトなライディングフォームでいとも簡単に抜き去っていったビーマー(BMWに乗るライダーの意)の気持ちが今ならよくわかる(笑)。
スタイルアップして乗りこなしたい!
ただ、積極的にスポーツライディングをするのは難しい……。パワーも制動力も十分なのだが、剛性の高い倒立フォークを使いこなそうとすると前に重心をかけるか、相当なコーナリングスピードで荷重をかける必要がある。それはサーキットの領域になるだろう。
それよりは、自分好みのカスタマイズを追求し、ライディングウエアをコーディネイトして街中から高速道路、ワインディングまでさらりと速い、大人のライディングを楽しみたい。カスタマイズと大人のバイクライフを広げてくれるR nineTは、末永く付き合える相棒となってくれるはずだ。