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SWM・SILVER VASE 400……682,000円(消費税10%込み)
重いクランクが生み出す低回転トルクが心地よい。
スクランブラーは個人的にも好きなカテゴリーで、今回試乗したSWMのSILER BASE400も以前から気になっていた。このマシン、実車を前にしてみるとネオクラシックな雰囲気がとてもいい。ゴージャスな作りではないけれど、それはカスタムする楽しみが残っているということ。実際、今回お借りしたマシンもBEAR SETAGAYAの手でいくつかのオプションパーツが装着されたことで、高級感が生まれている。
気になっていたのはエンジンのフィーリングだった。デザインはレトロだからエンジンのフィーリングもまったりしたものではないかと思っていた。ところが始動してみると偉く威勢が良い。スロットルレスポンスが鋭くて軽快に吹け上がる。
このエンジン、フライホイールマスが大きめなのだが、重いクランクを軽々と回すトルクを低回転から発生させている。その為、大して回転を上げずにクラッチを繋いでもドンとバイクが飛び出して行く。中速にかけてのトルキーな加速は文句なしに面白い。空冷エンジンなのにメカノイズも少ないし、嫌な振動もないから単気筒の鼓動感と排気音をクリアな感じで楽しむことができる。
その反面、高回転はそれほど楽しいわけではない。6000rpmぐらいから先は惰性で回っていく感じになるから、このバイクの特性を生かして低中速を使う方が良いだろう。ミッションのタッチも悪くないし、クラッチやスロットルの操作系も軽いから、こまめにシフトチェンジして一番美味しい回転域を楽しめば良いのである。同じ排気量帯のシングルには、SR400やロイヤルエンフィールドがあるが、この2台のエンジンは、どちらかといえばマッタリ系のシングル(こちらもそれぞれ個性的で楽しい)。元気の良さで言えばSWMに軍配があがる。
車体が軽く、コントロール性もリニア。
ブレーキのタッチはそれほど鋭くはないけれど、ストリートなら神経質さがなくて逆に使いやすいくらい。握り込んでいった時の制動力の立ち上がりはリニアでコントロールもしやすかった。
ハンドリングは個性的だ。車体が軽いので倒し込み自体は軽いのだが、フロントの安定性がとても高く、バンクさせると若干遅れてステアリングがついてくるようなフィーリングなのだ。これはステムのオフセットが19インチタイヤとしては非常に少ない為。 これはテスターの推測だが17インチホイールのGRAN MIRANOと同じステムを使用しているのではないかと思う。おまけにリーディングアクスル(フロントフォークの前にアクスルシャフトがついている方式)だから、安定性左右するトレールの数値がとても大きくなっているのである。結果、ヒラヒラと軽快に走るという感じではないけれど、これはこれで悪くはない。街中を安定して走るのに適したハンドリングになっている。
外車ながらカスタムも楽しめる貴重な存在
個人的には自分がオーナーだったら、パンチのあるエンジンにあわせて、もう少しスポーティなハンドリングにしたいところ。そんなことを考えながらマシンを見ていたら自然とカスタムのプランが浮かんできた。フロントを18インチのリムに張替え、リアショックをグレードの高いものにして車高調整で少しキャスターを立たせてやったらずいぶん変わるはず。
手っ取り早くフォークを左右逆にしてみてもキャスターは減るなあ、などと色々イメージが膨らむ。(ハンドリングに関する部分の変更はノウハウが必要なので、何かする場合は必ずプロショップに依頼することを強くおすすめする)
BEAR SETAGAYAに聞くと、兄弟モデルのカフェやツアラーのパーツを流用した純正パーツカスタムが楽しめるんだとか。カスタムし甲斐がありそうなマシンである。
このバイクなら、ビギナーからエキスパートまで、色々な楽しみ方ができるはずだ。弾けるようなシングルの鼓動感を楽しみたいと考えているライダーには、是非一度乗っていただきたいと思うマシンである。