目次
両車とも空冷4ストSOHC単気筒エンジンを搭載。2台のビッグシングルマシンを比較
ホンダ GB350…….価格未定 ●排気量:348cc
ヤマハ SR400……Final Edition 60万5000円(年間国内限定5000台)/Final Edition Limited 74万8000円(国内限定1000台) ●排気量:399cc
GB350はレトロな外観ながら、豪華な最新の電子制御システムも装備
国内で発売予定のNEWモデル・ホンダGB350は、高級感を前面に押し出したネオクラシックスポーツ。空冷4ストローク単気筒SOHC 348ccエンジンを搭載した、レトロフォルムのビッグシングルモデルだ。
生産国のインドでは、2020年9月30日にオンラインで発表。インドでは現在、H’ness(ハイネス)CB350の名称で発売中だが、4ヶ月で1万台をリリースするなど爆発的なヒットとなっている。
GB350には、
●ブレーキング時におけるタイヤのロックを防ぐ、デュアルチャンネルABS
●アシストスリッパークラッチ……通常のクラッチ機構に比べて負荷の少ないアシストスリッパークラッチを搭載。このシステムは、スリッパー機能によってシフトダウン時の突然のエンジンブレーキによる不快なショックを軽減。頻繁なシフトチェンジ時の疲労を軽減し、快適性を高めた最新機構
●ホンダ・セレクタブル・トルク・コントロール(HSTC)……トルク制御システムのHSTCは、急激なスロットルグリップ操作による後輪のスリップを軽減し、様々な状況において安心感をアップ
●ホンダ・スマートフォン・ボイス・コントロール・システム(HSVCS)……Bluetooth接続で連携できるHSVCSは、スマートフォンにインストールされたライディングインターフェイスを提供し、ナビゲーション、音楽再生、電話、着信メッセージなどの主要機能をサポートする画期的なシステム
など、イマドキのバイクに相応しい最新機能も採用。
GB350には実用性や整備性に優れたメインスタンドを標準装備。シフトペダルはミドルバイクには珍しい、踏み込みだけでアップ・ダウン操作が可能な、カブシリーズにも採用のシーソー式を導入。シフトアップ時に、靴のつま先を傷めないで済むのが特徴だ。
キック始動のみのクラシカルなSR。スカチューン、カフェレーサー、トラッカー、アメリカン等々、数々のカスタムも派生
一方、SR400は、言わずと知れたヤマハの超ロングセラーモデル。1978年に登場以来、これまでエンジン形式やフレーム形状を変更することなく(排ガス規制クリアのため、4型よりキャブレターからFIに変更されたものの)、シンプルな構造のまま生産を継続。
この変わることのない一貫した姿勢も支持され、これまでSR400は多くのフリークを輩出。ノーマルフォルム重視派はもちろん、スカチューン(サイドカウルやバッテリー等を外してスカスカにするカスタム術)、カフェレーサー、トラッカー、アメリカン等々、SR400をベースにした様々なカスタムも数多く生み出してきた。
SR400のエンジン始動方法は、昔ながらのキックスターターのみ。発売以来、便利な電動モーターのセルフスターターは採用されてこなかった。
キック始動によるSR400のエンジン始動は、4サイクルの大排気量車ならではの、一連の“儀式”が必要。
1:デコンプレバー(下記参照)を握り、クランキング(キックアームを何度か踏み込む)
2:カムシャフト右端に設けられたキックインジケーターを見て、ピストンを上死点にセット(慣れればキックインジケーターを見なくても、感覚で分かる)
3:ピストンの上死点を出したら、キックアームを一気に踏み込む
SR400のエンジン始動(1~3)には、コツや慣れが必要。セルボタンを押せば一発で簡単にエンジン始動できる、イマドキのバイクとは対極にあるのが特徴だ。
人によっては、何ともアナログで面倒くさいと感じるであろうSR400だが……一方で懐かしく、シンプルで新鮮なこの感覚が、こだわり派のユーザーを魅了し、愛され続けてきた理由の1つなのだろう。
最終モデル・SR400 Final Editionの予約台数は、発表後数日で6000台に到達!
43年間で累計12万台以上を売り上げたというSR400も、厳しい排ガス規制、ABS装着義務化によるコストダウン等々の理由により、上記の「Final Edition」と「Final Edition Limited」をもって惜しまれつつも生産終了。両車は2021年3月15日発売で、すでに予約が開始されている。
ヤマハの発表(2021年2月)によれば、「Final Edition」の予約台数は、発表後数日で6000台に到達。この数値は、何と前回の年間国内生産量の2倍を上回るものだという。
なお、限定1000台の「Final Edition Limited」は、2021年3月1日現在、メーカーでの予約はすでに完売との噂。同じくロングセラーモデルだったホンダ・モンキー(50cc)の最終限定モデルと同様、発売前の段階ですでにお宝バイクとなっている模様だ。
筆者がかつてヤマハ関係者から聞いたことだが、ヤマハ社内にも多くのSR400オーナーがいるという。SR400は、カタチを変えて、いつか復活するかもしれない(筆者の願いを込めて)。
車体はGB350がやや大柄。外観・サイズ・足周りの違いをチェック
【ホンダGB350(インド仕様のハイネスCB350)】
全長×全幅×全高:2,163mm×800mm×1,107mm
軸距 :1,441mm
最低地上高:166mm
シート高:800mm
車両重量:181kg
タイヤ:前100/90-19M/C 57H、後130/70-18M/C 63H
ブレーキ:前 Φ310mm油圧式シングルディスク+2POTキャリパー 後 Φ240mm油圧式ディスク+1POTキャリパー ※デュアルチャンネルABSを装備
懸架方式:前 テレスコピック 後 スイングアーム式2本ショック
フレーム:セミダブルクレードル
【ヤマハSR400(Final Edition Limited)】
全長×全幅×全高:2,085mm×750mm×1,100mm
軸距 :1,410mm
最低地上高:130mm
シート高:790mm
車両重量:175kg
タイヤ:前90/100-18M/C 54S 後110/90-18M/C 61S
ブレーキ:前 Φ298mm油圧式シングルディスク+2POTキャリパー 後 機械式ドラム
懸架方式:前 テレスコピック 後 スイングアーム式2本ショック
フレーム:セミダブルクレードル
外観は両車とも、バイクの王道を行くクラシカルな雰囲気。車体はホンダGB350がヤマハSR400に比べ、全長が78mm長く、ホイールベース(軸距)も31mm長くてやや大柄。車両重量もGB350が6kg重い。数値のみでみた場合、渋滞路やエンジン停止時の取り回し性は、SR400が上。
なお、GB350を実際に押し歩くと、操舵フィーリングも含めてそれなりにズシっと重い手応えを覚える。諸元によると車両重量は181kg。今、ファイナルエディションが販売されているヤマハSR400は175kgなので6kg重い。しかし、GB350の方が、それより少しばかり車体が大柄な事もあってか、扱いが重過ぎるとは思わない。
フレームはどちらもセミダブルクレードル式を採用。ホイールはGB350が軽快なアルミキャスト型。SR400がクラシカルなスポーク型を装備。フロントブレーキは両車とも、片押し2POTの油圧式ディスクを採用。リヤブレーキはGB350が油圧式ディスクだが、SR400は機械式ドラムが導入されている。
なお、GB350にはタイヤのロックを防ぐ、デュアルチャンネルABSも装備済み。
ビッグシングルエンジンを比較!GB350はロングストローク型、SR400はショートストローク型
【ホンダGB350(インド仕様のハイネスCB350)】
エンジン:空冷4ストロークSOHC単気筒4バルブ
排気量:348cc
ボア×ストローク:Φ70.0mm×90.519mm
圧縮比:10.5
最高出力:21PS/5,500rpm
最大トルク:3.05kgf-m/3,000rpm
燃料タンク容量:15L
変速機形式:5速リターン
始動方式:セルフ式
【ヤマハSR400(Final Edition Limited)】
エンジン:空冷4ストロークSOHC単気筒2バルブ
排気量:399cc
ボア×ストローク:Φ87.0mm×67.2mm
圧縮比:8.5
最高出力:24PS/6,500rpm
最大トルク:2.9kgf-m/3,000rpm
燃料タンク容量:12L
変速機形式:5速リターン
始動方式:キック式
どちらもシンプルな空冷4ストロークSOHC単気筒。SR400は簡素な吸気バルブ1本+排気バルブ1本=2バルブだが、GB350は吸排気効率に優れた吸気バルブ2本+排気バルブ2本=4バルブのシリンダーヘッドを採用。
エンジン始動方式はSR400がキックのみで、“あえて”セルフスターターを省略。一方、GB350は「イマドキのバイクに相応し」キックスターターを省いた、電動のセルフスターターのみ。この点は、伝統を重んじたSR400の個性であり、こだわりとも呼べる点だ。
SR400のボア×ストロークは、Φ87mm×67.2mmのショートストローク型(絶版となったSR500はΦ87mm×84mm)。両車のボア×ストローク比(ストローク長÷ボア径=高いほどロングストローク度が高い)を数値で換算してみると、
・ヤマハSR400……0.772
・ホンダGB350……1.270
つまり、ショートストローク型のSR400と、ロングストローク型のハイネスCB350は、同じ4ストローク単気筒SOHCながら、その特性や乗り味はやや異なる模様。
数値だけを見る限り、SR400はやや回転を上げてパワーを稼ぐタイプ(MAXパワーは6500回転)だが、GB350はロングストロークらしい、中回転域(MAXパワーは5500回転)で楽しめる特性だといえる。
「ロングストローク」や「ショートストローク」の違いとは?
ボア(径)とはピストンとシリンダーの直径。ストローク(長)とはピストンが上下運動する距離(長さ)を示す。
ロングストローク型とは、ボア径よりもストロークの長いタイプ。低中回転域でネバリ強い、街乗りしやすいエンジン特性。ショートストローク型は、ストローク長よりもボア径のほうが大きいタイプ。高回転までスムーズに回るレーシーなエンジン特性。スクエアストローク型、ボア径とストローク長が同じサイズのタイプ。
一般的に排気量の大きなロングストローク型は、低中回転域でのモリモリとした太いトルクを活かした、突き上げるような乗り味が楽しめるのが特徴(登り坂でもスロットルをひねれば、力強く走るイメージ)。「回転を上げて走るのではなく、トルクで走る」大排気量でV型2気筒のハーレーダビッドソンは、まさにこれに当てはまる。
一方、排気量の大きなショートストローク型は、高回転域でパワーを稼ぐ、スポーティーでレーシーなエンジン特性(登り坂ではシフトダウンして高回転をキープすれば、スムーズに走るイメージ)。4気筒エンジン搭載のスポーツモデルなどが典型的な例。