目次
ヤマハ・SCR950 ABS ……1,060,560円
SCR950は941㎤の空冷Vツインエンジンを搭載するクルーザー、BOLTをベースに往年のスクランブラーを彷彿させるネオクラシカルな外観が与えられたモデルだ。ヤマハの中ではXSR700/900などと同じスポーツヘリテイジと呼ばれるジャンルで、懐かしさの中に新しい感性が織り込まれているのが特徴。SCRとはスクランブラーの略である。ちなみにスクランブラーとは、元々はオンロードバイクで荒地を走るために改造されたマシンのことで、最近のネオクラブームの中で人気が高まりつつある。
アメリカンベースの土系という変わり種
見た目的には、ゼッケンプレート風サイドカバーや小ぶりなタンクなどがアメリカで人気のダートトラッカーを思わせなくもない。ベースはいわゆる“アメリカン”(かつて日本ではクルーザーモデルをそう呼んだ)のBOLTなのだが、高めのワイドハンドルにスリムなのフラットシートを装備しているため、跨ったときのライポジはオフロードバイクに近い感じ。視界が広くて気持ちいいし、ついスタンディングで乗りたくなる。ボディは大柄で車重も252kgと重めなのでジャンプやスライド走行は流石に厳しいが、オン&オフ用のブロックタイヤなので、砂利道やちょっとした林道ツーリングぐらいなら十分楽しめそうだ。
ぐっとくる骨太な空冷Vツインサウンド
エンジンがいい味を出している。古典的とも言える空冷Vツインは挟角60度のSOHCということで、ヘッドまわりもコンパクトでシンプルな作りだ。空冷ならではのフィンや剥き出しのエキパイなど昔ながらのバイクらしい外観がぐっとくる。パルス感たっぷりのVツインらしい骨太なサウンドに包まれながら走るのが気持ちいい。モダンなデザインの丸型デジタルメーターには回転計すら付いていないが、カタログ値では最大トルクは3000rpmとかなり低めの設定。エンジン回転数は抑え気味にしつつ、高めのギヤでドコドコ言わせながらベルトドライブの滑らかな走りを楽しむのが本流だろう。最高出力は54psとけっしてハイパワーな値ではないが、豊かな低速トルクを活かしたシグナルダッシュの力量感はやはりリッタークラスだ。
ワインディングでは意外な俊足ぶりも
フロント19インチのスポークホイールと正立フォークによるハンドリングは大らかで牧歌的である。ただ、ベースとなったBOLTは元々かなりスポーティなクルーザーだったのに加え、SCRではリヤタイヤが17インチに大径化(ボルトは16インチ)されたことで、さらに走りに磨きがかかった。リヤタイヤが細め(140サイズ)なので、重量級にしては倒し込みが軽快かつ接地感が分かりやすいのもメリット。こうした素の良さを持っていることもあり、その気になればワインディングでも他のスポーツモデルと同等のペースで走れてしまう俊足ぶりも披露する。前後シングルディスクの効きも穏やかで扱いやすく、ABSが装備されているのでウエット路面でも心強い。
どこか懐かしいスタイルに味わいのある鼓動感。流行りの電子制御も付いていないが、逆にその単純さがいい。難しいことを考えずにただひたすら走るのが気持ちいい、バイクらしいバイクだ。