155ccなのに本格派! しかも輸入車! YZF-R15M試乗記|走りも装備もR25より刺激的 !?

かつて2012年と2013年にYSPを通じて国内販売されたこともある、ヤマハの軽二輪スポーツモデル・YZF-R15。その最新型にバイク館のメディア向け試乗会で触れることができた。155ccの単気筒とあなどることなかれ。可変バルブVVAやスリッパークラッチ、トラコンを採用するほか、試乗した上位仕様のR15Mはクイックシフターまで標準装備する。同じ軽二輪枠のYZF-R25よりも約23万円安く、27kgも軽い。走りは正統派スーパースポーツだ!

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●バイク館イエローハット、三共自動車教習所

ヤマハYZF-R15M……439,000円(インド仕様)

2008年に登場した初代からスチール製デルタボックスフレームを採用するYZF-R15。2011年の2代目でスイングアームがアルミ製となり、2017年の3代目でフロントフォークが倒立式に。2021年9月に発表された最新の4代目は、YZF-R7を彷彿させるスポーティなフロントフェイスを獲得した。エアインテーク内にバイファンクショナルLEDヘッドライトを、その左右にLEDのポジションランプをレイアウトする。なお、インド本国では標準仕様について第4世代を意味する「R15 V4(VERSION 4.0)」、上位仕様を「R15M」と呼称。「YZF-」が省略されているのが興味深い。
同じYZFシリーズで軽二輪クラスのYZF-R25(66万8800円)。こちらは正規販売されており、鋼管製ダイヤモンドフレームに35psを発揮する249cc水冷DOHC4バルブ並列2気筒エンジンを搭載。シート高はR15Mよりも35mm低い780mmで、車重は27kg重い169kgを公称する。

可変バルブVVA採用の水冷シングルはシームレスにパワーが伸び上がる

このWGP 60thアニバーサリーモデルは先行予約で完売とのこと。

インド国内のワンメイクレースでも活躍しているというYZF-R15。最新の第4世代のラインナップを整理すると、まず標準仕様「R15 V4」のブラックとレッドは38万9000円。同じくR15 V4のレーシングブルーはクイックシフターが標準装備のため42万9000円。グレーメタリックの上位仕様「R15M」は、クイックシフター以外にゴールドのキャリパーや車名ロゴの入ったタンデムシート&フォークトップキャップなどを採用し、43万9000円のプライスタグを付ける。そして、R15MのWGP 60thアニバーサリーモデルであるホワイト×レッドは45万9000円だ。

まずはエンジンから。7,400rpmを境に吸気側のカムを低中回転用と高回転用に切り替える可変バルブVVAを採用した155cc水冷シングルは、最高出力18.4psを公称。これはEUのA1ライセンスにおける125ccの上限出力、15psをほんの少し上回る程度だが、ギヤをローに入れてクラッチをつないだ瞬間から原付二種とのトルクの違いを見せつけてくる。

15psを絞り出す125ccのスポーツモデルは高回転域重視の特性のため、低回転域からの発進加速では同排気量のスクーターに遅れを取ることも。そのため、流れの速い幹線道路では、常にスタート時に中回転域以上でのクラッチミートを余儀なくされる。これに対してYZF-R15Mは、排気量が30cc多い分だけ低中回転域のトルクが厚く、125cc勢よりも明らかに出足の元気がいいのだ。

そして、高回転側のカムに切り替わる7,400rpm以上では、パワーカーブの盛り上がりがしっかりと感じられ、いわゆる「カムに乗る」フィーリングが味わえるのだ。秀逸なのは、そのVVAの切り替わりが非常にスムーズであること。7,400rpmを境に急激に加速力が変化するわけでも、またエンブレが高まるわけでもないので、ビギナーを慌てさせることがない。また、今回は介入させられるまでのテストはできなかったが、トラクションコントロールが採用されているのも大きな安心材料と言っていいだろう。付け加えると、アシスト&スリッパークラッチによるレバー操作力の軽さも魅力の一つだ。


素早く舵角が付き、フロントからグングンと向きを変えるキレの良さ

小排気量車では珍しくデュアルホーンを採用。インドというお国柄か。

YZFシリーズにおいてR15Mのすぐ上位にあたるYZF-R25は、2019年モデルでカートリッジ式の倒立フロントフォークを採用。作動性は正立フォーク時代よりも上質になり、旋回力と旋回速度が高まったが、軸足はあくまでストリートにある。これに対してR15Mは、車体の傾きに対する舵角の入り方が素早く、フロントタイヤにしっかり面圧を掛けながらグングン向きを変える様は、完全にスーパースポーツのそれだ。R25よりもフロントタイヤが1サイズ細く、ホイールベースが55mm短いことなどがその要因だろう。

こうしたキレの良いハンドリングは、スズキのGSX-R125に通じるものがある。海外では排気量を拡大したGSX-R150が販売されており、どうやらYZF-R15とはライバル関係にあるようだ。とはいえ、足回りを含むシャシー剛性はR15Mの方が明らかに高く、ブレーキングを残しながらコーナーへ進入する際の安心感はGSX-R125よりも上。付け加えると、旋回中にスロットルを開けていったときの良好なグリップ感は、リヤにラジアルタイヤを履いているおかげだろう。

ブレーキセットは、ブレンボの中小排気量モーターサイクル向けの専門ブランドであるバイブレ製だ。フロントは絶対制動力を、リヤは旋回中のコントロール性を重視した前後バランスとなっており、これもスーパースポーツのセオリーに則ったもの。シャシー剛性が高いので安心してブレーキングでき、リリース方向のスピードコントロールも優秀。試乗時間が短かったため、ABSの動作フィールに関しては未確認だが、前後とも介入するデュアルチャンネルを採用しているのはうれしい要素だ。

スポーティな走りとメカニズムにおいて、YZF-R25を超越する存在のYZF-R15M。スマホとの連携機能であるY-コネクトも魅力的であり、純粋にバイクとの対話を楽しみたい人や、ライディングテクニックを磨きたい人などにお勧めしたい秀作だ。


ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)

トップブリッジの下部にクランプされたセパレートハンドルにより、YZF-R25よりも上半身の前傾角は深めという印象。シート高は815mmとやや高めながら、車体が非常にスリムなので足着き性は良好な部類に入る。

ディテール解説

155cc水冷SOHC4バルブ単気筒は、7,400rpmを境に吸気側のカムを低中回転用と高回転用に切り替える可変バルブVVAや、アシスト&スリッパークラッチ、トラクションコントロールシステム、アップのみ対応するクイックシフターなどを採用。兄貴分のYZF-R25はこれらをいずれも装備していない(クイックシフターのみオプション設定)ことから、シングルながらR15Mはメカニズム的に大きくリードしていることが分かろう。
R25と同径のKYB製φ37.0mm倒立式フロントフォークを採用。標準装着タイヤはインド最大のタイヤメーカーであるMRFの製品だ。フロントキャリパーはバイブレ製のピンスライド片押し式2ピストンで、ブレーキディスク径はφ282mm。デュアルチャンネルABSを標準装備している。
スイングアームはR25のスチール製に対してR15Mはアルミ製であり、さらにインドならではのサリーガードを装着。リヤサスペンションはリンク式のモノショックだ。リヤタイヤのサイズはR25と共通だが、構造はR25のバイアスに対してラジアルとなっている。
フルデジタルLCDメーターを採用。表示パターンはストリートモードとトラックモードの2種類があり、前者は平均燃費/平均速度/クーラント温度/バッテリー電圧を、後者はラップタイム(最新/最速)が表示できる。スマホとの接続機能であるY-コネクトを搭載しているのも特徴で、スマホのバッテリー残量や着信状況などがメーターに表示される。
シートは前後別体式で、標準仕様のR15 V4に対し、上位バージョンにあたるR15Mのタンデムシートには刺繍ロゴがあしらわれる。なお、インド本国では先代R15Sの前後一体型シート(ユニボディシート)仕様が併売されている。

ヤマハ YZF-R15M(インド仕様) 主要諸元

全長/全幅/全高 1,990mm/725mm/1,135mm
シート高 815mm
軸間距離 1,325mm
最低地上高 170mm
車両重量 142kg
原動機種類 水冷・4ストローク・SOHC・4バルブ
気筒数配列 単気筒
総排気量 155cc
内径×行程 58.0mm×58.7mm
圧縮比 11.6:1
最高出力 13.5kW(18.4PS)/10,000rpm
最大トルク 14.2N・m(1.4kgf・m)/7,500rpm
始動方式 セルフ式
燃料タンク容量 11L
吸気・燃料装置/燃料供給方式 フューエルインジェクション
バッテリー容量/型式 12V, 4.0Ah
クラッチ形式 湿式, 多板
変速装置/変速方式 常時噛合式6速/リターン式
フレーム形式 デルタボックス
タイヤサイズ(前/後) 100/80-17M/C (52P)(チューブレス)/ 140/70R17M/C (66H)(ラジアルチューブレス)
制動装置形式(前/後) φ282mmディスクブレーキ/φ220mmディスクブレーキ
ABS デュアルチャンネル
懸架方式(前/後) φ37.0mm倒立式テレスコピック/リンク式モノクロス
ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ LED/LED
生産国 インド

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著者プロフィール

大屋雄一 近影

大屋雄一

短大卒業と同時に二輪雑誌業界へ飛び込んで早30年以上。1996年にフリーランス宣言をしたモーターサイクル…