【魅惑のタンク容量17L】スズキVストローム250とは、アドベンチャーの姿を借りたロングツアラーである。

フルカウルスポーツのGSX250Rと同時に開発され、日本では2017年7月に発売されたのがVストローム250だ。スポーツアドベンチャーツアラーのエントリーモデルに位置付けられ、エンジンや車体など多くの主要パーツをGSX250Rと共有している。2018年10月にはABSがタイプ設定され、現在のラインナップはこれに一本化。4シーズン目を迎えた今、あらためて魅力に迫ってみたい。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

※2021年4月12日に掲載した記事を再編集したものです。
価格やカラーバリエーションが現在とは異なる場合があります。
スズキVストローム250

スズキ・Vストローム250 ABS……613,800円

スズキVストローム250
スチール製のセミダブルクレードルや24psを発揮する248cc水冷並列2気筒エンジンなど、GSX250Rとの共有パーツは数多い。車重は189kgで、ホンダのCRF250ラリーより37kgも重い。
スズキVストローム250
こちらが同時に開発されたフルカウルスポーツのGSX250R。10本スポークのアルミキャストホイールや標準装着タイヤ(IRC・RX-01)までVストローム250と共通だ。なお、車両価格は536,800円~。
スズキVストローム250
スズキVストローム250
スズキVストローム250
スズキVストローム250
スズキVストローム250
これを執筆している2021年4月現在、4種類のカラーリングをラインナップ。撮影車両はパールネブラーブラック×ソリッドダズリンクールイエローだ。

疲れにくいエンジン特性と優れた防風効果はまさにツアラー

スズキVストローム250

鳴り物入りでデビューするも、爆発的に売れたのは初年度だけだった、というモデルが珍しくない中、年々販売台数を増やしているバイクがある。それがスズキのVストローム250だ。軽二輪の枠を超えた本格的なアドベンチャースタイルや、旅に特化した豊富な純正アクセサリー群、大容量タンクと低燃費エンジンのタッグによる航続距離の長さ、そして価格の安さなどが人気の理由のようだ。

まずはライディングポジションから。アドベンチャーモデルは最低地上高を稼ぐためにどうしてもシート高が高くなりがちだが、車体をGSX250Rと共有するVストローム250はシート高が800mmと低く、足着き性は抜群にいい。これも多くのライダーに支持されている理由の一つだろう。ハンドルバーはグリップ位置が高くて狭く、この部分はアドベンチャーのイメージからやや離れるが、これによって形成されるコンパクトなライポジは一般道で操縦がしやすく、むしろ都合がいい。
続いてエンジン。180度クランク採用の248cc水冷SOHC2バルブエンジンは、最高出力24psを公称する。同じスズキのジクサー250が油冷SOHC4バルブ単気筒で26psを発揮することから、決してパワフルとは言えない。さらに車重が189kgもあることから、発進加速はそれなりだ。だが、アイドリングのすぐ上、2,000rpmでクラッチミートできるほど低回転域から扱いやすく、8,000rpm付近までスムーズにパワーが増していく。スロットルを急開してもグンッとは加速しないが、FIでありながらCVキャブのような優しいレスポンスが心地良く、気が付けばパラツインの鼓動感を味わいつつ流れる風景を楽しんでいる。
なお、トップ6速・100km/hでの回転数はメーター読みで7,500rpmあたり。単気筒のホンダ・CRF250Lが約6,000rpmなので、高速巡航時はけっこう回している感あり。とはいえ微振動はかなり抑えられており、ロングツーリングでも疲労は少ないはずだ。

主戦場はあくまで舗装路。オフロードでの過信は禁物だ!

ハンドリングは、エンジンと同等以上に扱いやすい。ディメンションをチェックすると、GSX250Rに対してキャスター角がわずかに立っており、さらにトレールとホイールベースが短くなっている。ホイールトラベル量は未発表だが、フロントフォークは専用セッティングが施されているという。これらがうまく作用しているのか、250ccとしてはやや重めのバイクでありながら走り出してしまえば動きは軽快で、まるでネイキッドのようにスムーズに向きを変える。

スズキVストローム250

そして、80km/h以上になると軽二輪とは思えないほど安定性が高まり、路面のギャップや横風を食らっても走行ラインが乱されにくい。なお、ウインドスクリーンとナックルカバーによる防風効果は非常に高く、距離を延ばすほどにありがたみを実感する。
さて、アドベンチャーモデルと言えば未舗装路の走破性も気になるところ。だが、メーカーの公式WEBサイトを見ると、ダートを走行している画像は1点も掲載されていない(ちなみに兄貴分のVストローム650/XTも同様だ)。実際に走ってみても、標準装着タイヤはGSX250Rと共通のIRC・RX-01なのでグラベルでのグリップ力は多くを望めず、またダートに入った途端に189kgという車重が顔を出すのでどうしても尻込みしてしまう。感覚的には、車重が35kg軽いネイキッドのジクサー250の方が安心して走れそうだ。
とはいえ、足着き性の良さと優しいエンジン特性、扱いやすいブレーキにより、それなりに走れることも事実。例えばキャンプ場などはダートの先にあることが多いので、そういう場面で慌てずに済むというのは非常に心強い。
国内4メーカーの軽二輪クラスにスポーツツアラーが存在しない今、その代わりとなるのがVストローム250であり、ツーリングライダーに支持されているというのも納得だ。刺激こそ薄いが、乗り込むほどにバランスの良さに気付かされるはずだ。

ライディングポジション&足着き性(175cm/64kg)

スズキVストローム250
ハンドル位置が高いために一般的なネイキッドよりも上半身はアップライトであり、さらにスタンディングもしやすい。ただし、多くのデュアルパーパスよりもハンドル幅が狭いので、未舗装路での抑えが難しい。
スズキVストローム250
シート高は800mmと低いため足着き性は抜群にいい。しかもステップ位置が低いので膝の曲がりが緩やかなのもロングツーリング向きだ。

ディテール解説

スズキVストローム250
2012年に発売されたGSR250に端を発する水冷SOHC2バルブ2気筒は、発進~90km/hまでの加速性能を重視したカムプロフィールを選択。ステムをウエスト化したインテークバルブやローラーロッカーアームなどを採用する。
スズキVストローム250
2in1のエキゾーストシステムは集合部に触媒をレイアウト。その上流に設けたチャンバーの形状を最適化することで、中間加速を向上させながら排ガス浄化性能も両立することに成功。
スズキVストローム250
前後ともペタルタイプのブレーキディスクを採用。現行ではABSモデルのみに。φ37mm正立式フロントフォークはVストローム250専用セッティングとされる。
スズキVストローム250
スイングアームはスチール製の角断面パイプで、リヤサスはリンクレスのモノショック。プリロードは車載工具に含まれるフックレンチで7段階に調整可能だ。センタースタンドを標準装備する。
スズキVストローム250
防風効果に優れたウインドシールドとナックルカバーを採用。ブレーキレバーは開き角を5段階に調整可能だ。燃料タンク容量は17ℓを公称し、1回の給油で400km以上の走行も余裕でこなす。
スズキVストローム250
フルLCDの多機能メーターはGSX250Rと共通のため、アドベンチャーモデルでは珍しくシフトアップインジケーターまで備える。左側面にはDCソケット(12V/36W)をレイアウト。
スズキVストローム250
ヘッドライトリムやガード風ライトステーは本格的アウトドアギヤをイメージしたもの。ヘッドライトや前後のウインカー、ナンバー灯は昔ながらのフィラメント球だ。
スズキVストローム250
面発光LEDのテールランプはGSX250Rと共通。大型アルミ製リヤキャリアにはフックが備えられており、積載性は非常に高い。なお、最大積載量は8.5kgだ。
スズキVストローム250
シートは前後一体型で、キーロックにて取り外し可能。座面が広いので座り心地が良く、お尻が痛くなりにくい。その下にヘルメットホルダーが用意されている。
スズキVストローム250
純正アクセサリーのトップケースとサイドケースを追加するとアドベンチャーらしさが一気に増す。なお、ケース3つ合わせての容量は63ℓだ。

Vストローム250 ABS 主要諸元

型式 2BK-DS11A
全長/全幅/全高 2,150mm/880mm/1,295mm
軸間距離/最低地上高 1,425mm/160mm
シート高 800mm
装備重量 189kg
燃料消費率 国土交通省届出値:定地燃費値 39.0km/L(60km/h)2名乗車時
WMTCモード値 31.6km/L(クラス2、サブクラス2-2)1名乗車時
最小回転半径 2.7m
エンジン型式/弁方式 J517・水冷4サイクル2気筒/SOHC2バルブ
総排気量 248cm3
内径×行程/圧縮比 53.5mm×55.2mm/11.5:1
最高出力 18kW〈24ps〉/8,000rpm
最大トルク 22N・m〈2.2kgf・m〉/6,500rpm
燃料供給装置 フューエルインジェクションシステム
始動方式 セルフ式
点火方式 フルトランジスタ式
潤滑方式 ウェットサンプ式
潤滑油容量 2.4L
燃料タンク容量 17L
クラッチ形式 湿式多板コイルスプリング
変速機形式 常時噛合式6段リターン
変速比 1速 2.416
    2速 1.529
    3速 1.181
    4速 1.043
    5速 0.909
    6速 0.807
減速比(1次/2次) 3.238/3.357
フレーム形式 セミダブルクレードル
キャスター/トレール 25°10’/100mm
ブレーキ形式(前/後) 油圧式シングルディスク[ABS]/油圧式シングルディスク[ABS]
タイヤサイズ(前/後) 110/80-17M/C 57H/140/70-17M/C 66H
舵取り角左右 36°
乗車定員 2名
排出ガス基準 平成28年二輪車排出ガス規制に対応

製造国 中国

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著者プロフィール

大屋雄一 近影

大屋雄一

短大卒業と同時に二輪雑誌業界へ飛び込んで早30年以上。1996年にフリーランス宣言をしたモーターサイクル…