見ため良し! 走りも超快適! DUCATIのアドベンチャーツアラー、デザートX試乗

アドベンチャーモデル市場は世界的に活況のようです。中心となっているのは800~1200㏄クラスの大型モデルで、国内外のメーカーから多機種が販売されています。まさに百花繚乱といった感じですね。そんな大型アドベンチャーモデル市場に注目のモデルが登場しました。ドゥカティ・デザートXがそうです。ドゥカティには世界中で人気のムルティストラーダがすでにありますが、デザートXはよりオフロード性を重視した設計としているのが特徴です。

ドゥカティ・デザートX……1,999,000円〜

往年のパリダカマシンを彷彿させる本格派オフロードモデル

かつてはビッグオフローダーという呼び名で世界中のラリーストから支持を得ていたジャンルのバイクは現在、アドベンチャーモデルと称されるようになっています。しかしそれらアドベンチャーモデルにも、オンロード寄り、オフロード寄りといった違いがあり、ユーザーの選択肢を増やしています。イタリアのドゥカティではこのジャンルに長年ムルティストラーダを投入していて、日本国内でも高い人気を誇っています。そして、そのドゥカティから新たに登場したのがデザートXです。

ムルティストラーダとライバル関係になってしまうのでは?と危惧しましたが、デザートXはよりオフロード性を重視したものとしていて、エンジンはモンスターと同型の937㏄水冷V型テスタストレッタ11°を搭載しています。ムルティストラーダV2とも共通していますが、タイヤサイズがフロント21インチ、リア18インチとしていることからも、明らかにオフ志向を強めた設計であることが理解できます。なのでライバルとなるのはムルティストラーダではなく、国産モデルなら、ホンダCRF1100Lアフリカツイン、スズキVストローム1050DE、そして外国車ならBMW・F850GSアドベンチャー、トライアンフ・タイガー900ラリーあたりになるのではないでしょうか。そこで、これらライバルモデルに対してデザートXにはどんなアドバンテージがあるのか見てみました。

目に付いたのは車重です。デザートXは徹底した軽量化によって202㎏を実現しています。この数値はライバルモデルと比較して約20~50㎏も軽量なのです。この軽さがオフロード走行で優位に働くことは明白です。そればかりか、ストリートユースやツーリングといった一般的な使い方においても、軽量であることはメリットが多いのです。

いくら軽量だとはいっても、そこはビッグオフローダーのこと、実際にデザートXを目の前にすると車高のあるボディに圧倒されます。オフロード性を高めるために250㎜の最低地上高としていて、シート高は875㎜あります。跨るのも容易ではありません。フロント230㎜、リア220㎜のホイールトラベルを持つサスペンションを装備しているのですから、高さがあるのは仕方ありません。ところがひとたびシートに腰を下ろしてしまうと、875㎜という数値から想像するより足は着けやすいと実感しました。前後サスペンションは1Gの初期作動で程よく沈み込んでくれるからです。ライダーの体重にもよりますが、20㎜くらい低くなってくれるのではないかと思いました。ポジションもゆったりしていて、ロングツーリングも快適に走れそうです。

デザートXはスタイリングデザインも独特です。レトロという表現が適しているかはわかりませんが、往年のパリダカマシンを連想させるフォルムなのです。燃料タンクを大きく見せているのも特徴で、結果的に堂々とした存在感を実現しています。

ビッグオフローダーらしくロングストロークの前後サスペンションを採用しているので、当然のことながら車高は高めです。シート高は875㎜となっていて、乗り降りの際にはなかなか苦労します。しかしシートに腰を下ろしてしまえば、サスペンションの沈み込みもあって足が着けやすくなります。といっても足つき性が良いとはいえないので、ダートなど足元が不安定な場所では注意しないと立ちゴケの危険性があります(ライダー身長:178㎝)

始動すると歯切れのあるVツインサウンドが頼もしく響きます。テスタストレッタ11°エンジンのパワフルさは実証済みで、性能に不足はありません。現代のバイクらしくデザートXにもさまざまな電子制御システムが導入されていて、ライディングモードに関しては、スポーツ、ツーリング、アーバン、ウエット、ラリー、エンデューロの6モードに切り替えができます。もちろんこれらは、それぞれの特性に適したABS、トラクションコントロール介入をするシステムとなっています。ちなみに、フルパワーである最高出力110psはスポーツ、ツーリング、ラリーモード時に発生し、アーバン、ウエットは95ps、エンデューロでは75psの最高出力にとどめられる設定です。

まずはツーリングモードでスタートしました。Vツインのメリハリあるレスポンスで加速性が高く、アクセル操作が楽しめる特性です。それでいてアクセルのオンオフ操作でのギクシャク感はなく、信号が多い市街地でもストレスを感じることなく走ることができます。高速道路での走行性にもまったく不満はなく、本線への合流も素早く完了します。しかし日常的な使用なら、アーバンもしくはウエットモードが適切なパワーフィーリングで使いやすい印象です。

アップライトなポジションに加えて車高が高いデザートXでは、目線が高く視野を広く持てるので、たとえばツーリングでは眺望を楽しみながら走ることができます。また市街地では周囲の交通状況をいち早く察知できるので安全につながる走りができます。

重心が高いと安定性に難があるのではないだろうかと不安を抱くかもしれないが、直進でふらつくような動きはまったく見せないし、バンク操作も実に自然にできます。海岸線をたどるタイトなワインディングを走ってみたのですが、切り返しに力が必要なことはなかったし、コーナリング安定性も高いと感じました。フロントに21インチタイヤを履いているのでややアンダー気味のハンドリングなのかと思っていたのですが、実際には素直に追従してくれるので軽く感じるし、初めて乗ってもすぐに馴染むはずです。

前後サスペンションの動きが秀逸なことも、素直で安定性のあるハンドリング特性に結び付いていると感じます。低速であまり負荷がかかっていない状態でもソフトに作動してくれるし、それによって挙動変化が大きくなることもありません。つまり乗り心地が良いままタイヤはしっかりと路面をとらえている印象なのです。ペースを上げるとそれに合わせて減衰力が高まり、やはり路面をガッチリととらえてくれます。タイヤ自体はオフ志向のブロックパターンですが、オンロードでも不安はまったくありませんでした。

ダートは少ししか走らなかったのですが、ボクのようにあまりオフロードに慣れていないライダーでも、フラットダートを走るぶんにはまったくといっていいほど不安はありませんでした。日本の林道は狭いのでデザートXをはじめビッグアドベンチャーモデルで進入しようとは思いませんが、走破性だけでいえば荒れた路面でもクリアしていけると思います。もちろんウデのあるライダーが乗った場合ですが。

ドゥカティ初の本格的ビッグオフローダー、デザートXは、多くのオフロードファンをスタイリングデザインで、そして高いオフロード走破性で魅了すると思いました。さらにボクのようなツーリングファンにとっても、ロングツーリングの相棒に適していると感じさせました。キャンプツーリングが人気の昨今、デザートXでソロキャンプを楽しんでみるのもいいかも知れません。

ディテール解説

専用設計されたフレームに搭載するのは、937㏄テスタストレッタ11°エンジン。ライディングモードはスポーツ、ツーリング、アーバン、ウエットに加えて、オフロード走行に適したラリーとエンデューロの6パターンに切り替えできる
ライディングモードはエンジン特性に連動してABS、トラクションコントロールも制御する。つねに状況に応じて最適な走行ができるようにしてある
オフロード走行に対応するためフロントタイヤは21インチを採用。KYB製倒立フォークのホイールトラベルは230㎜。ブレーキはブレンボ製だ
リアサスもKYB製。ホイールトラベルは220㎜だ。タイヤはピレリ製スコーピオン・ラリーSTRチューブレスを履く
アップ/ダウンのクイックシフターを装備。ステップにはラバーが装着してあり、ツーリング時での快適性に配慮している
KYB製の前後サスペンションはフルアジャスタブルとなっていて、好みや走行状況に合わせてセッティングできる
フルLEDライティング・システムを装備。2灯式ヘッドライトは、デイタイム・ランニング・ライト(DRL)を備えた2つのツイン・ファンクション・ポリエリプソイダル(複合楕円形)モジュールを備える
固定式のウインドスクリーンは、効果的に走行風を抑制し、疲労を軽減してくれる
ハンドガードを装備し、ダート走行時での飛び石や枝葉などから手を保護してくれる
ステアリングダンパーを装備する
ライディングモード切り替えやクルーズコントロールなどのスイッチ類は左側に集中して配置してある
右手スイッチにはセル、キルスイッチ類が配置
シートはセパレートタイプを採用。あらゆる走行シーンを考慮して自由度が大きいものとしている
シートは着脱式で、シート下にはバッテリーなどの電装パーツが収納してある
テールランプには急ブレーキをかけたときに自動的にライトを点滅させて後続車に急減速していることを警告するシステムとしている
ドゥカティ・マルチメディア・システム(オプション)を統合可能な5インチTFTカラー・ディスプレイが装備されている。縦型のメーターパネルは、スタンディング・ポジションでも良好な視認性を確保

主要諸元

●Engine

Engine:
 Ducati Testastretta 11°, L-Twin cylinders, Desmodromic valvetrain, 
 4 valves per cylinder, liquid cooled

Displacement:937 cc
Bore X Stroke:94 x 67.5 mm
Compression ratio
:13.3:1

Power:110 hp (81 kW) @9,250 rpm
Torque:92 Nm (68 lb-ft, 9.4 kgm) @6,500 rpm
Fuel injection:
 
Bosch electronic fuel injection system, 
 Ø53 mm throttle bodies with ride-by-wire
system
Exhaust:
 Stainless steel single mufler, catalytic converter and 2 lambda probes

●Transmission

Gearbox:6 speed

Primary:drive
Straight cut gears, ratio 1.85 : 1
Ratio:
 1=38/14, 2=31/17, 28=28/20, 4=26/22, 5=24/23, 6=23/25
Final drive:Chain, front sprocket Z15, rear sprocket Z49
Clutch:
 Slipper and self-servo wet multiplate clutch with hydraulic control

●Chassis
Frame:Tubular steel trellis frame
Front suspension:KYB Ø 46 mm upside-down fork, fully adjustable
Front wheel:Cross-spoked, tubeless, 2.15’’x21’’
Front tyre:Pirelli Scorpion Rally STR 90/90 - 21 M/C 54V M+S TL (A)
Rear Suspension:
 KYB monoshock, fully adjustable, 
 remote preload adjustment, aluminium double- sided swingarm
Rear wheel:Cross-spoked, tubeless, 4.5’’x18’’
Rear tyre:Pirelli Scorpion Rally STR 150/70 R18 M/C 70V M+S TL
Wheel travel (front/rear):230 mm (9.06 in) - 220 mm (8.66 in)
Front brake:
 2xØ320 mm aluminum flange semi-floating discs, 
 Radial mount Brembo monobloc 4-pistons calipers, Bosch Cornering ABS
Rear brake:Ø 265 mm disc, Brembo floating 2 pistons caliper,Bosch Cornering ABS
Instrumentation:5’’ TFT colour display

●Dimensions and Weights
Dry weight:202 kg (445 lb)
Kerb weight:223 kg (492 lb)
Seat height:875 mm (34.4 in)
Wheelbase:1608 mm
Rake:27,6°
Trail:122 mm
Fuel tank capacity:21 l (5.54 US gal)
Number of seats:Dual seat

●Safety equipment
Cornering ABS, Ducati Traction Control

●Standard equipment
Riding Modes, Power Modes, Ducati Wheelie Control (DWC), Engine Brake Control (EBC), Ducati Quick Shift up/down (DQS), Cruise control, full LED lighting system, DRL, Ducati brake light (DBL), USB power socket, 12V socket, self canceling turn indicators, Steering damper

●Ready for
Ducati Multimedia System (DMS), Antitheft system, Turn by turn navigation via app*, fog lights, heated grips, auxiliary fuel tank

●Warranty and Maintenance
Warranty:48 months, unlimited mileage
Maintenance:15,000 km (9,000 miles) / 24 months
Valve clearance check:30,000 km (18,000 miles)

●Emissions and Consumption
Standard:Euro 5
CO emissions 2:133 g/km
Consumption:5.6 l/100 km

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著者プロフィール

栗栖国安 近影

栗栖国安

TV局や新聞社のプレスライダー、メーカー広告のモデルライダー経験を持つバイクジャーナリスト。およそ40…