目次
原付二種バイクとは?
まず、原付二種のバイクとは、どんなタイプのモデルなのかを簡単におさらいしよう。
排気量は、前述の通り、51〜125cc以下で、排気量50cc以下の原付一種と同様に、原動機付自転車に属する。原付一種に乗ることができる原付免許は、学科試験のみで取得できるほか、普通自動車免許などを取得すると付帯されるのに対し、原付二種は最低でも小型限定普通二輪免許の取得が必要。
ただし、スクーターのみに乗る場合は、AT小型限定普通二輪免許でも運転することができる。免許取得のハードルだけでみれば、50cc以下の原付一種のほうが手軽だといえる。
ただし、原付一種は、片側3車線以上の道路にある交差点で2段階右折が必要で、最高速度は30km/h以下。対する原付二種は、2段階右折は不要で、速度規制がなければ最高速度は60km/hまで出すことができる。
また、どちらも高速道路や自動車専用道路などを走行できないことは同じだが、2人乗りができない原付一種に対し、原付二種は一般道であれば堂々とタンデム走行も可能だ。
つまり、一般道を走るうえで、原付二種は原付一種より規制が少ないといえる。移動手段として、より利便性などに優れるという点も、近年人気が高い理由のひとつだろう。
国内4メーカーのラインアップ
では、実際に、どんなモデルがあるのだろうか? 国内4メーカーのラインアップ(2023年5月上旬現在)を例に、紹介してみよう。
【ホンダ】
・ビジネスバイク復刻系
スーパーカブC125/CT125・ハンターカブ/スーパーカブ110/クロスカブ110
・レジャーバイク復活系
モンキー125/ダックス125
・スポーツ系
グロム/CB125R
・スクーター系
PCX/リード125/ディオ110
【ヤマハ】
・スクーター系
アクシスZ/シグナス グリファス/ジョグ125/NMAX/トリシティ125
【スズキ】
・スクーター系
バーグマンストリート125EX/アヴェニス125/アドレス125
・スポーツ系
GSX-R125/GSX-S125
【カワサキ】
・スポーツ系
Z125プロ
ご覧のように、特に、ホンダでは、まさに11機種もの原付二種バイクを揃えている。また、バリエーションも、通勤・通学から買い物などの普段使いに便利なスクーターから、軽快な走りが楽しめるスポーツモデルなど、さまざまなタイプを用意する。
特に、60年以上前のビジネスバイク「スーパーカブ」を復刻させたシリーズや、ダックスやモンキーなど、その昔レジャーバイクと呼ばれていた50ccモデルの125cc版など、昭和レトロの雰囲気を持つバイクたちの人気はかなり高い。こうしたネオクラシックなバイクは、昭和を知らない若い世代には新鮮で、当時を知るベテランには懐かしいこともあり、より幅広い層に大きな支持を受けている。
また、ほかのメーカーでは、ヤマハでは現在、スクータータイプが主だが、前述したXSR125、MT-125、YZF-R125といったスポーツモデルを市販予定。
スズキでは、特に、スクーターモデルが充実。2022年10月には、インドで販売しているモデルをベースとした新型のアドレス125とアヴェニス125を発売。2023年3月には、高級モデルのバーグマンストリート125EXを追加している。また、スポーツモデルもフルカウルのGSX-R125とネイキッドのGSX-S125を揃え、全5機種をラインアップしている。
さらに、主に大排気量車が人気で、スクーターモデルを販売していないカワサキでも、Z125プロを用意。コンペモデルを除けば、最小排気量となる125ccのスポーツネイキッドモデル1機種をラインアップしている。
販売台数の伸びが著しい原付二種
近年、原付二種バイクの人気が高いことは、二輪車販売台数の推移を見てもよく分かる。日本自動車工業会が発表したデータによれば、2021年における2輪車全体の販売台数は、前年比113.7%増の41万5892台。2015年以来6年ぶりに40万台を突破した。
排気量別では、原付第一種が4.3%増の12万7736台、原付第二種は23.5%増の12万5674台、軽二輪車は6.1%増の7万8911台、小型二輪車は24.0%増の8万3571台だった。
特に、原付二種は、ここ数年、販売台数の伸び率が高い。例えば、5年前の2016年には10万1424台、10年前の2012年では9万291台だった。2021年の増加率は、5年前と比べ23.9%、10年前と比べると39.1%となっている。
一方、原付一種の販売台数は、5年前の2016年で16万2130台、10年前の2012年では24万6095台。5年前と比べ21.3%減、ここ10年では48.1%も減少している。
そのほかの排気量では、126〜250ccの軽二輪車も好調で、5年前の2016年と比べ69.9%増加、10年前の2012年と比べても29.9%の増加だ。
251cc以上の小型二輪車は、10年前の2012年と比べると57.5%減少だが、5年前の2016年との比較では32.8%増加なので、復活の兆しが見えてきているといえる。
このように、かつては減少傾向だった2輪車の販売台数は、ほとんどの排気量がここ5年ほどで増加傾向となっているが、原付一種のみが減少傾向で、10年前の約半分になってしまった。一方、原付二種は、10年前と比べても、堅調な伸び率をみせている。
二輪車販売台数全体の構成率では、原付一種は2021年でも依然として高い。だが、これも、10年前の2012年と比べると55.6%→30.7%と、構成率自体も低下。対する原付二種は、2012年20.4%→2021年30.2%。原付二種の販売台数は、全体的にも存在感を増してきていることが分かる。
新規ユーザー層の増加が人気の要因
このように、原付二種は、軽二輪車と共に、ここ数年における2輪車市場の成長を支える重要なカテゴリーとなっている。そして、その背景には、以前から市場を支える40代以上のベテランライダーなどに加え、10〜20代の新規参入も増えたことが指摘されている。
例えば、運転免許教習所では、2輪免許取得を希望する若い世代が急増したことで、予約が取れない状況になっているという。また、街中でも、最近は若い世代のライダーをよく見かける。そして、そうした若い世代の初心者ライダーにも扱いやすいのが、原付二種のバイクなのだ。
軽量でコンパクトな車体は、駐車場などでの取り回しも楽だし、足着き性もいいことで、細い路地を切り返したり、低速のUターンなどでも立ちゴケする心配は比較的少ない。しかも、前述の通り、原付一種のスクーターなどと比べると、2段階右折などの規制もない。
さらに、価格が比較的リーズナブルなことも魅力だ。最近は、250ccのバイクでも90万円台のモデルもあるし、逆に50ccのスクーターでも20万円前後とかなり価格が高騰している。一方、原付二種は、ほとんどのモデルが30万円台から40万円台だ。特に、バイクの購入代などにあまりお金をかけられない若い世代にとっては、比較的手が届きやすい価格帯であることなども人気の要因だろう。
実際に、ヤマハでは、前述した発売予定の原付二種スポーツモデル3機種について、「伸長する若年層の二輪免許取得者に対応」したモデルであることを明かにしている。
また、同時に155ccのフルカウルスポーツ「YZF-R15」も市販予定車とすることで、「軽量な軽二輪モデルおよびハードルの低い原付二種スポーツモデルを導入することで、ヤマハのバイクでより気軽にバイクライフを始められるようにすることが狙いです」と言及している。
つまり、現在、若い初心者ライダーのエントリーモデルとなっている原付二種のバリーエーションを増やすことで、ユーザーの選択肢を増やすことが目的だ。前述の通り、現在、ヤマハの原付二種ラインアップはスクータータイプのみ。このカテゴリーに属する機種を増やすことで、バイクでスポーティな走りを楽しみたいなど、より多様な嗜好のユーザー層を取りこもうとしているのだ。
時代と共に変化したエントリーモデル
余談だが、50代後半の筆者が若い頃は、初心者ライダーのエントリーモデルといえば原付一種のバイクだった。当時の50ccモデルには、スクーターだけでなく、ギア付きのスポーツモデルも数多く販売されており、逆に、125ccなどの原付二種は、中途半端な排気量である感が強かった。
当時、バイク好きの若者といえば、まず16歳で原付免許を取得し、手軽に乗れる50ccのバイクを買うことが多かった。そして、その後に、当時の中型限定二輪免許(現在の普通自動二輪免許)を取得し、250ccや400ccといった軽二輪車へステップアップするのが王道。125ccのバイクに乗るライダーはあまりいなかった。
それが、今や、若いライダーのエントリーモデルといえば、原付二種が主流となっている。また、昔バイクに乗っていたが子育てなどで一旦辞め、子どもの成長や独立を機に久々に乗り始めるリターンライダーにも乗りやすいことなどで人気が高い。今や、より幅広いユーザー層が、原付二種バイクに乗っていることを考えると、時代の大きな変化を感じる。
ともあれ、今後もさまざまな原付二種モデルが登場し、多くのライダーを魅了することで、2輪業界の好調ぶりをさらにけん引してくれることを願いたい。