記者会見には国内の2輪関係4社の重鎮が顔を揃えた。冒頭の写真は左から順に、日高祥博(ヤマハ発動機代表取締役社長)、伊藤浩(カワサキモータース代表取締役社長執行役員)、鈴木俊宏(スズキ代表取締役社長)、塚本飛佳留(本田技研工業執行職二輪パワープロダクツ開発生産統括部長)のご歴々。簡単に言うと、ライバル関係にある各社の垣根を取り外し、強力な協力関係のもとで基礎研究を行おうというもの。その研究対象は、水素を燃料とする内燃機関、つまり水素エンジンのこと。特に小型モビリティ用のパワーユニットに的を絞った研究が行われ、バイクや汎用エンジンに活用するためのベースとなる技術を培おうというものだ。
下のフリップで示すように、各社はそれぞれに役割を持ちつつ連携して取り組む。なお別の関連企業や大学研究室の参画にも対応する構え。エンジンの構造自体は既存の物がベースになるだろうが、従来の内燃機関とは引火(着火)性や燃焼速度が大きく異なり、発熱や水素ガスの供給(吸気)、水分の混入が懸念される潤滑ノウハウにも、今後の研究成果がものを言う。バイクに搭載する上で、燃料補給の手段等、実用面での課題クリアも期待される。
現時点では、技術研究組合設立の申請が、この5月に経済産業省より認可を取得したばかり。具体的な活動はこれからスタートし、区切りとして5年を目処に実用化への成果披露を目指すと言う。カーボンニュートラルへの取り組みの名の下のに、グローバルではモビリティの電動化一辺倒への動きが目立っていたが、今回の水素小型モビリティ・エンジンにおける各社の技術連携は、実のところ目指すアプローチが多岐に及ぶ「マルチパスウェイ」(多様な選択肢)があることへの具体的なアピールのひとつになるだろう。翌18日には日本自動車工業会も記者会見を開き、G7サミット開催に向けて「カーボンニュートラルにも、多様性を」というメッセージを訴求。
昨今、エンジン開発は中止されるという話題が取り沙汰されていたが、日本は「マルチパスウェイ」で対応していき、水素エンジン開発もその中のひとつとしているわけである。「HySE(ハイス)の動向と今後の研究成果に期待したい。
カーボンニュートラルを目指す取り組みはひとつじゃない。
登壇者全員で記念撮影。左端から順に水素小型モビリティ・エンジン研究組合理事候補の古谷昌志(本田技研工業)、同じく理事候補の田中強(スズキ)、副理事長候補の松田義基(カワサキモータース)、理事長候補の小松賢二(ヤマハ発動機)。(敬称略)