車に積める20インチの自転車?バイク? 電動全盛の今、31.7ccエンジンのモペッドに乗った。|FK310 bb20

自社製の自転車風フレームに、軽量コンパクトな国内設計・国内生産の空冷2ストローク31.7ccエンジン「BE30」を搭載した、欧州製モペッドとはコンセプトの異なる新感覚のシティコミューター「FK310 bb20」。製造発売するのは、国内某超大手メーカーのレース用ファクトリーバイクの委託設計製作を請け負う等々、生粋のモーターサイクルのエキスパートである「フキプランニング」。20インチタイヤを採用したFK310 bb20は、大径26インチタイヤの「FK310 LAⅢ classic」とは異なる、小径タイヤならではの機動性の良さと軽量コンパクト感を獲得。欧州のモペッド、電動バイク、電動アシスト付き自転車とは異なる、独自の構造と乗り味を実現した超個性派のシティコミューターをクローズアップ。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●フキプランニング http://www.fuki.co.jp/

フキプランニング FK310 bb20……12万9800円(消費税込み)

前後タイヤ径は街中でも扱いやすい20インチに設定。前後タイヤサイズは標準的な20”×2.00”。
写真は荷物搭載に便利なオプションの「FK310bb20専用アルミフロントキャリア ブラック(5000円/税込)」と、「FK310bb20専用リアキャリア スチール ブラック(6600円/消費税込み)」装着車。
サイズは全長1,520mm×全幅670mm(ハンドル)/580mm(ハンドル)/440mm(ペダル)×全高880~980mm(ハンドル)。重量は28kg(ミッションオイル250cc含む)。
形状にこだわったアルミ製の燃料タンク(容量は約1.8L)や、BE30エンジンをバランス良くレイアウトした美しい取り回しのフレームワークも魅力的。
フロントブレーキはVブレーキ、リアブレーキはローラー式を採用。どちらも自転車用。

20インチタイヤは近頃人気の「シェアサイクル」と同じサイズ

20インチタイヤを採用したシェアリングサービスの電動アシスト付き自転車。26インチタイヤ採用車に比べ、街中では小回りが効いて扱いやすいのが特徴。

携帯電話会社の最大手「NTTドコモ」が都心部で展開する自転車のシェアリングは、乗りたい時に借りて、行きたい場所で返却(乗り捨て)することができる、電動アシスト付き自転車の共有サービス。

同車はスマホのアプリで会員登録、もしくはサイクルポートにある自転車にICカードをタッチすれば、誰でも手軽に借りることができる。

電動アシスト付きサイクルのシェアリングサービスは2023年現在、様々な企業が参入。都心部だけでなく、郊外や観光地などでも積極的に導入されている。

電動アシスト付きシェアサイクルの多くは、世代・性別・体型を問わず、誰でも手軽に乗車可能な、大き過ぎず小さ過ぎないコンパクトな中径の20インチタイヤ装着車を採用。20インチ採用車は車道でも安定して走行できるとともに、狭い路地などでもストップ&ゴーが繰り返せ、小回りが利きやすいのがポイントだ。

電動アシストモーターを装備した同車は、電動アシストのない自転車に比べてとにかく楽。通常の自転車にありがちな、漕ぎ始めのペダルの重さがまったくなく、背中を「ポンッ」と押される感じでスムーズに発進。坂道でも“立ちこぎ”することなく、シートに座ったまま走行できる。

「FK310 bb20」は20インチタイヤを採用してコンパクト化し、乗りやすさをアップ

写真は精悍なピアノブラック。赤茶系の可憐なボルドー、清楚なイメージのホワイトもあり。
エンジンは「BE30」と呼ばれる、国内で開発・製造されたFK310シリーズ専用設計の空冷2ストローク単気筒31.7cc。最高出力は0.8ps/4500rpm~5500rpm、最大トルクは0.15Kgm/3,500rpm~4,500rpm。2ストエンジンならではの優れた加速性や登坂性を発揮する。

フキプランニングが製造販売する写真の「FK310 bb20」は、上記の電動アシスト付きシェアサイクルと同様、扱いやすい20インチタイヤを採用しているが、開発コンセプトは180度異なる。

FK310 bb20は空冷2ストローク単気筒31.7ccエンジンを搭載。ウインカーやストップランプが非装備のために道路交通法上、一般公道での最高速度は20㎞/hに制限される。なお法律を踏まえた上では、足漕ぎペダルでアシストする場合に限り、20㎞/hを超えて走行することは問題ない。

※注:エンジンを搭載したFK310シリーズは原動機付自転車であるため、エンジンを停止し、ペダルのみで自走を行う時もヘルメットの着用が必要。またエンジンを停止し、ペダルのみで自走を行う時も歩道や普通自転車専用道路の走行は不可。

FK310シリーズと各車の主な違い

カテゴリー必要な運転免許ナンバープレートヘルメットの着用義務法定速度
FK310シリーズ原動機付自転車原付免許必要あり時速20km/h 
モペッド(トモスなどのペダル付バイク)原動機付自転車原付免許必要あり時速30km/h
電動バイク(定格出力0.6kW以下)原動機付自転車原付免許必要あり時速30km/h
ペダル付電動バイク(定格出力0.6kW以下)原動機付自転車原付免許必要あり時速30km/h
電動アシスト付き自転車普通自転車必要なし不要なしアシスト機能は時速24kmまで
※足漕ぎペダルでアシストする場合は20㎞/hを超えて走行可能
フレームはすべて自社設計とし、自社工場で製作。フレーム(スチール製)や容量約1.8Lのガソリンタンク(アルミ製)は傷が付きにくく耐久性も高い粉体塗装を実施。
エンジンの腰上にあるシリンダーは放熱性に優れたアルミ製。腰下部分にはヘッドライト点灯用のジェネレーター(アウターローター/発電機)も導入。

20インチタイヤを採用した「FK310 bb20」は、①エンジンのみ ②急な上り坂で有効的なエンジン+ペダルでのアシスト ③ペダルのみ、以上の3パターンの走行が可能。

フレームはすべて自社で設計・製作。国内の自転車は、フレームの接合に昔ながらの「ロウ付け(ハンダ付けに似た溶接手法)」を使用するのが定番。一方、フキプランニングはレースマシン製作のノウハウを駆使し、現在では自転車製作の世界的主流である「アルゴン溶接」を採用。これにより高強度を保ちつつ、大幅な低コスト化を実現。

フレームやガソリンタンクのペイントは、自社工場にて「粉体塗装」を実施。粉体塗装とはパウダー状の塗料を金属に直接付着させて加熱し、乾燥させて固めることで塗膜とする手法。地球環境にも優しい粉体塗装は密着性が高く、乾燥後は硬くて傷が付きにくく、耐久性も高いのが特徴。

「BE30」と呼ばれるエンジンは、国内で開発・製造された空冷2ストローク単気筒31.7ccのFK310シリーズ専用設計。最高出力は0.8ps/4500rpm~5500rpm、最大トルクは0.15Kgm/3,500rpm~4,500rpmで、2ストエンジンならではの優れた加速性や登坂性を発揮。エンジンはシンプルな設計のため、点検も容易。吸気系はキャブレターを採用。

燃料は白煙や臭いが出にくいガソリン50:オイル1の「混合燃料」を使用

2ストロークエンジンを搭載したFK310シリーズは、ガソリン50:オイル1に混ぜ合わせ、メインフレームに搭載された燃料タンクに補給する混合式を採用。混合式のメリットは、かつて市販車に多用されていた分離式とは異なり、マフラーから白煙が出にくいこと。

今回の試乗では、マフラーエンドから白煙を吹くこともなく、「このエンジンは2ストではなく4ストなんじゃない?」と感じさせた。また2ストエンジン独特のオイルが燃える臭いもなし。アイドリングや走行時の排気音も非常に静かで、住宅街での走行も気兼ねなく行えた。

写真左は草刈り機やチェーンソーにも使用できるガソリン50:オイル1の比率であらかじめミックスされた2ストエンジン用混合燃料(1L)。ホームセンターなどで購入可能なお手軽燃料だ。写真右はガソリンに混ぜて使用する2ストエンジン用のゼノア純正エンジンオイル(1L)。

「FK310 bb20」は20インチ車ならではの軽量コンパクトな車体がポイント

26インチタイヤを採用した「FK310 LAⅢ classic(14万8500円/税込)」に比べ、20インチタイヤのFK310 bb20は非常にコンパクト。車体重量はFK310 LAⅢ classicが30kg、FK310 bb20が28kg。数値的には2kgの差だが、実際に両腕で抱えてみた印象は、FK310 bb20の方が遥かに軽量なイメージだ。

●FK310 bb20(20インチタイヤ)
全長×全幅×全高:1,520mm×580mm(ハンドル)/440mm(ペダル)×880~980mm(ハンドル)
重量:28kg(ミッションオイル250cc含む)
シート高:700mm~1,400mm

●FK310 LAⅢ classic(26インチタイヤ)
全長×全幅×全高:1,750mm×670mm(ハンドル)/460mm(ペダル)×1,050mm
重量:30kg(ミッションオイル250cc含む)
シート高:800mm~1,050mm

FK310 bb20(20インチタイヤ)
FK310 LAⅢ classic(26インチタイヤ)

小回りが利く「FK310 bb20」は住宅街や街乗りがラク!

20インチならではの急激な小回りや急停車時も挙動を崩すことなく、バランスの良い走りを実現。

燃料コックをONにし、センタースタンドを掛けた状態で左右のペダルを吹き込めば、エンジンは簡単に始動OK。安定感に優れたセンタースタンドを払い、またがってみた最初の感想は、想像以上に車体が軽い! ということ。

20インチタイヤを採用した上記シェアリングサービスの電動アシスト付き自転車と比べても、体感的な差はほとんどない。軽量コンパクトな空冷2ストローク単気筒31.7ccのBE30エンジンは、見た目以上に重量が軽い模様で、「自転車にエンジンが搭載されている」という感覚がまったくない。

ウインカーやリアストップランプの装備されていないFK310 bb20は道路交通法上、公道での最高速度が20㎞/hに制限。私有地でテスト走行したところ、最高速度はメーター読みで時速30㎞/hに到達。

2ストのBE30エンジンはスポーティで、体感的には最高出力0.8馬力という数値以上のパワフルさを発揮。平坦路はもちろん、傾斜の緩やかな一般的な坂道ならば、足漕ぎのペダル補助がなくてもスムーズに走行。前後20インチタイヤとの相性も良好だ。

時速20㎞/hの制限速度内では、フレームや足周りの剛性も十分。ハンドルのブレやフレームの捻じれもなく、安全に楽しくライディング可能。前後ブレーキは自転車用だが、制動力も問題なし。

レバー型のスロットルは右グリップ側に設置されており、親指で操作するシステム。FK310シリーズには、ペダルのみの走行時はもちろん、エンジンのみの走行時にも活躍してくれる「シマノ製3段ギア」を導入。右手親指でスロットルを開けながらスピードを上げつつ、左グリップにあるシマノ製ギアを回転させて2速~3速へとシフトアップすれば、スクーターのごとくスムーズに加速してくれる。

FK310シリーズの場合、大径26インチの「FK310 LAⅢ classic」はゆったりと乗車できる直線ツアラー仕様、中径20インチの「FK310 bb20」は小回りの利く街乗り用ストリート仕様というイメージだ。

右グリップ側に固定されたスロットルレバーは右手親指で操作するしくみ。
左グリップの根元を回して変速させるシマノ製3段ギアを装備。手動式ベルの奥に見えるレバーは、冬場のエンジン始動時等に重宝するチョークレバー。

ペダルのみではエンジンの重みを感じさせないスムーズな走りを実現

エンジン左側に設置された、オイルキャップのような丸くて黒い凸状のツマミを指で回転させれば、エンジン走行からペダルのみの走行に切り替え可能。
エンジンを搭載したFK310シリーズは原動機付自転車であるため、エンジンを停止し、ペダルのみで自力走行を行う時もヘルメットの着用が必要。またエンジンを停止し、ペダルのみで自走を行う時も歩道や普通自転車専用道路の走行は不可。

FK310シリーズは、①エンジンのみ ②急な上り坂で有効的なエンジン+ペダルでのアシスト ③ペダルのみ、以上の3パターンの走行が可能。

エンジン走行→ペダルのみの走行・ペダルのみの走行→エンジン走行への切り替えは、エンジン左側に設置された黒いツマミを操作するだけで、至極簡単に変更可能。

軽量コンパクトな「FK310 bb20」で、③ペダルのみの走行をした場合。またがった時と同様、20インチタイヤを採用した上記シェアリングサービスの電動アシスト付き自転車と比べても、体感的な差はほとんどない。繰り返しになるが、「自転車にエンジンが搭載されている」という感覚がまったくないのだ。

エンジンのみの走行時にも活躍してくれる「シマノ製3段ギア」は、ペダルのみの走行でも強みを発揮。通常の自転車のように、走り出しから巡行までスムーズに走行してくれる。

※注:エンジンを搭載したFK310シリーズは原動機付自転車であるため、エンジンを停止し、ペダルのみで自走を行う時もヘルメットの着用が必要。またエンジンを停止し、ペダルのみで自走を行う時も歩道や普通自転車専用道路の走行は不可。

リッター43kmの低燃費!FK310 bb20はモペッド・電動バイク・電動アシスト付自転車のどれとも異なる、新感覚のシティコミューター

FK310シリーズは通常走行時で1リッター43km(メーカーカタログ値)の低燃費性能を発揮し、エンジン搭載車ながら驚くほどの軽量さと軽快感を実現。また自転車としての優れた機動性や駐輪性の良さも確保。電動アシスト付き自転車並、もしくはそれ以下の低価格を実現しているのも見逃せないところ。

FK310シリーズの購入層は、「手軽にバイクを楽しみたい」「現代のバイクは高性能だけど価格が……」と感じる50代以上がメイン。FK310シリーズは北は北海道から南は沖縄まで、全国各地に代理店を展開中。

モペッド・電動バイク・電動アシスト付自転車のどれとも異なる、新感覚の20インチ・シティコミューターのFK310 bb20は、手軽さと利便性の良さに加え、内燃機の面白さや魅力がじっくりと吟味できる、電動車とは一線を画す大人の一台に仕上げられている。新車で購入でき、一般公道を走行できる2ストマシンとしての希少価値にも注目だ。

※購入時、車両はフロントタイヤ、ハンドル、ペダルを取り外した状態で配送される。組み立ては慣れていれば15分程度で完了。詳しい組み立て説明書付属。納期は早い時で3~4日、遅い時で半月が目安(モデルや仕様により異なる)。

ディテール

LEDフロント砲弾ライトはエンジン始動時、アウターローターにて発電・点灯。FK310シリーズはすべて法定速度20km/h未満の仕様なので前後のウインカーとリアのストップランプは非装着。
日没後にエンジンを切って自力走行する場合は、フロントタイヤ接触型の発電機でヘッドライトを点灯させるしくみ。
写真はオプションの「FK310bb20専用アルミフロントキャリア ブラック(5000円/税込)」を装着。
軽量コンパクトな空冷2ストローク単気筒31.7ccエンジン。吸気系はキャブレターを採用。
鍵付きタンクキャップを採用した燃料タンク本体はアルミ製。容量は約1.8L。燃費は43km/L(カタログ値)なので、満タンならば80km前後走行可能。
ユーザー層の幅の広さを想定し、シート高は700mm~1,400mmに調整可能。
スプリングを導入した肉厚のサドルシートは座り心地が良く、疲労感も軽減。
前後タイヤは世代や性別を問わずに扱いやすい、中径の20インチサイズをチョイス。
スリムで美しいマフラー。排気孔は地面方向にレイアウト。
リアブレーキはローラー式を採用。前後タイヤサイズは20”×2.00”。
街乗りしやすいセミアップ型フラットハンドルを採用。ユーザー層の幅広さを想定し、ハンドルの高さは880mm~980mmに変更可能。前後ブレーキ(左レバーはリアブレーキ・右レバーはフロントブレーキ)は自転車用を採用。
ASSIZEの液晶デジタル式スピードメーターを装備。メーターは時刻も表示。
赤いボタンはエンジン停止用のキルスイッチ。

フキプランニング FK310 bb20 主要スペック

全長×全幅×全高1,520mm×580mm(ハンドル)/440mm(ペダル)×880~980mm(ハンドル)
重量28kg(ミッションオイル250cc含む)
シート高700mm~1,400mm
エンジン(BE30)空冷2ストローク単気筒ピストンバルブ式 フキプランニングオリジナル
排気量31.7cc
吸気系キャブレター
最大出力0.8PS/4,500 ~ 5,500rpm
最大トルク0.15Kgm/3,500 ~ 4,500rpm
最大速度20km/h
燃費1Lあたり43km (通常走行)
燃料タンク容量およそ1.8L(タンクキャップにいたずら防止用鍵付き)
始動方法ペダルスタート
フレーム材質ハイテンスティール
変速機内装3段ギア
前ブレーキVブレーキ
後ブレーキローラーブレーキ
前後タイヤサイズ20”×2.00”
スタンドセンター両立スタンド
ヘッドライトLEDフロント砲弾ライト
スピードメーターASSIZEデジタルスピードメーター
価格129,800円(消費税込み)
※購入時、車両はフロントタイヤ、ハンドル、ペダルを取り外した状態で配送される。組み立ては慣れていれば15分程度で完了。詳しい組み立て説明書付属。納期は早い時で3~4日、遅い時で半月が目安(モデルや仕様により異なる)。

キーワードで検索する

著者プロフィール

北 秀昭 近影

北 秀昭