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トリガー=「拳銃の引き金を引く」ような制度とは?
トリガー条項とは、2010年度の税制改正で導入された制度で、レギュラーガソリンの全国平均価格が「3か月連続で160円/L」を超えた場合に、「暫定税率分の25.1円/Lを課税しない」というものだ。
国民生活に大きな影響があるガソリン価格が一定基準以上になった場合に、拳銃などのトリガー(引き金)を引く、つまり「税金を引き下げる」ことで、価格の安定を図ることが目的だ。
そもそもガソリンの価格には、ガソリン税(揮発油税と地方揮発油税)が課税されているが、本来の税率(本則税率)は28.7円/L。ところが、現在は、暫定税率として25.1円/Lが上乗せされている。その25.1円/Lの徴収しないというのがトリガー条項といえる。
ちなみに、この暫定税率は、もともと道路財源の不足を補う目的で設定されたもので、一時的に課税されるもの。つまり、目的が達成されれば課税されなくなる「当分の間」の税金だ。
実際に、2010年に一旦は廃止されたが、すぐに同額分の特例税率が創設されており、今でも課税は続いている。しかも当初は道路財源が使用目的だったのに対し、現在は一般財源に充てられていることで、これを問題視する声も多い。使っているのが道路ではないことや、「当分の間」が延々と続いていることに異論を唱えるといった意見をよく聞く。
ともあれ、現状では、本来の税額より25.1円/L多く課税がなされているのだが、前述の通り、もしトリガー条項が発動されれば、この暫定税率分が課税されないことで、「ガソリン価格はもっと安くなるはず」というのが、この制度復活を要望する人たちの意見だといえる。
なぜ発動されないのか?
ところが、現在、トリガー条項は凍結状態だ。資源エネルギー庁のデータによれば、レギュラーガソリンの全国平均価格は、2021年10月4日時点で160円/Lになって以来、ずっと160円/L以上を続けている。そのため、本来であればこの制度が発動され、前述した2023年9月11日現在の184.8円/Lよりも安くなることが期待できる。
では、なぜ、トリガー条項が凍結されているかというと、理由は、2011年に発生した東日本大震災の復興財源を確保するため。そのため、レギュラーガソリンの全国平均価格が180円台となっても、依然として「税金額はそのまま」の状態が続いているのだ。
もちろん、現行の補助金制度においても、ガソリン価格が一定水準を超えた場合に(燃料油元売り会社に)支給されるため、結果的に価格が抑えられていることは確かだ。資源エネルギー庁の発表によれば、もし補助金がない場合、レギュラーガソリン全国平均価格は200円台を超える可能性があるというから、ユーザーにとって有り難いことは確かだといえる。
いずれにしろ、補助金も税金から出ているし、トリガー条項を発動した場合に停められる暫定税も税金。もちろん、「当分の間」であるはずの暫定税率をいつまで課税するのかということも問題だが、一方で、ガソリンに関する税金を下げると、結局は「そのほかの税金が上がるのでは?」といった声もある。
ガソリンの価格については、税金はもちろん、原油価格の高騰や円安など、さまざまなファクターが絡んでいるだけに、非常に難しい問題であることは確かだ。100%電気で走るBEVの普及にはまだまだ時間がかかる。そのため、現時点でガソリンは、バイクやクルマが走るために必須なだけに、できるだけ早急に比較的安い価格へ落ち着いてくれることを願いたい。