新たなスポーツツアラー「スズキGSX-S1000GT」、その装備とスペックを読み解いてみる。

新型GSX-S1000GT
フルカウル装備のツーリング&ストリート向けバイク「スズキGSX-S1000F」を全面改良した、まったく新しいコンセプトのスポーツツアラー「スズキGSX-S1000GT」が発表され、2021年10月より世界各国で順次販売。国内でもリリースが予定されている。スーパースポーツバイクのDNAを受け継ぎつつ、ツーリング性能を高めたNEWモデル・GSX-S1000GT。日本での発売価格や国内仕様の詳細はまだ発表されていないが、海外の情報を元に、GSX-S1000GTの最新情報を徹底リサーチしてみた。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
※注:写真及び詳細はすべて欧州仕様車 / 情報はすべて2021年9月23日現在のものです

価格:529万9000HUF(欧州のハンガリーフォント価格)→日本円換算で約191万5000円

GSX-S1000GT Features & Benefits | Suzuki

 低速域からでも使いやすいスムーズなトルク特性を持ち、全回転数域で余裕のあるパワフルな水冷4ストローク直列4気筒DOHC 4バルブ999ccエンジンを搭載。電子制御システム「S.I.R.S.」や、スズキ初となるスマートフォン連携機能付きの大画面フルカラーTFT液晶メーター等を採用し、日常での扱いやすさと長距離ツーリングの快適性や高速安定性を追求した、注目のNEWスポーツグランドツアラー・スズキGSX-S1000GT。

 防風性能をさらに高めたツーリングスクリーン、フルフェイスヘルメットが入る大容量サイドケースセット、グリップヒーターなど、快適性や利便性を向上させるアイテムも豊富にオプション設定されている。

 国内での発売も期待される1台だが、正式な発売日、価格、仕様等は未発表。アナウンスがあり次第、レポートするのでお楽しみに!

スズキGSX-S1000GT(スタンダード)。カラーはブルー、ブラック、シルバーの3色。
ハンドルバーの幅を広げ、ハンドル位置をライダー側に近づけることで、よりツーリングに適したアップライトなライディングポジションを実現。
スズキGSX-S1000GT。写真は防風性能をさらに高めたツーリングスクリーン、フルフェイスヘルメットが入る大容量サイドケースなどを装備したオプション装着車。
オプション装着車。
オプション装着車。
オプション装着車。
オプション装着車。
オプション装着車。

長距離はもちろん、街乗りも得意な高トルク型の999ccエンジン

最高出力は112kW(152.3PS)/11,000rpm。最大トルクは106N・m/9,250rpm。イエロー部分は変更箇所。

 GSX-S1000GTは、グランドツーリングモデルの神髄を極めるため、高性能かつパワフルな、スズキGSX-S1000F用ベースの水冷4ストローク直列4気筒DOHC 4バルブ999ccエンジンを搭載。エンジンはテストと改良を重ね、出力を増加させつつ、厳しいユーロ5排ガス規制をクリアさせた。

 このエンジンは振動を最小限に抑えつつ、スーパーバイクレベルのパフォーマンスを秘めているのが特徴。また、大きな累積トルク生成を特徴とする、広くて滑らかなトルク曲線を描き、高速道路での長距離走行はもちろん、街乗り走行でも扱いやすい1台に仕上げられている。

エンジンは先代の「GSX-S1000F用」をベースに、乗りやすさを追求

 GSX-S1000GTの排気量は999cc、ボア径×ストローク長は73.4mm×59.0mm、圧縮比は12.2(すべて公表値)。水冷4ストローク直列4気筒DOHC4バルブ1000ccクラスのエンジンを搭載した、国内で発売中のGSX-S1000、KATANA、GSX-R1000R ABSは、

◎GSX-S1000→排気量:998cc ボア径×ストローク長:73.4mm×59.0mm 圧縮比:12.2 最高出力:110kW(150PS)/11,000rpm ※すべてカタログ値
◎KATANA→排気量:998cc ボア径×ストローク長:73.4mm×59.0mm 圧縮比:12.2 最高出力:109kW〈148PS〉 / 10,000rpm ※すべてカタログ値
●GSX-R1000R ABS→排気量:999cc ボア径×ストローク長:76.0mm×55.1mm 圧縮比:13.2 最高出力:145kW(197PS)/ 13,200rpm ※すべてカタログ値

 GSX-S1000GTは、名称を「GSX-S」としている通り、エンジンは、現行のGSX-R1000R用エンジンではなく、GSX-S1000やKATANAに搭載される、ボア径73.4mm×ストローク長59.0mmのエンジンエンジン、いわゆる2005〜08年の“K5/K6”エンジンと呼ばれるパワーユニットをベースとした。

 サーキット走行を想定した、超ショートストローク型&高回転型のGSX-R1000R ABS用エンジンとは異なり、GSX-S1000GTのエンジンは、街乗りも視野に入れた、トルクフルなセッティング。最高出力も152.3馬力(GSX-R1000R ABSは197馬力)まで抑えられているものの、欧州仕様は国内仕様のGSX-S1000やKATANAよりもパワフルなのが特徴だ。

GSX-S1000のフルカウルバージョンとして登場したGSX-S1000F ABS。フレーム、足周り、エンジンは基本的にGSX-S1000と同じ。最高出力は148PS/10,000rpm。国内仕様は2019年モデルをもって生産終了。
スズキ GSX-S1000/143万円(消費税10%込)。スーパースポーツバイク「GSX-R1000」のエンジンと車体をストリート向けにチューニングした、高揚感のある加速と軽快な走りを楽しめるストリートモデル。スズキの最新電子制御システム「S.I.R.S.(スズキ・インテリジェント・ライド・システム)」も各種採用。
スズキ KATANA/154万円(消費税10%込)。今や伝説であり、超お宝バイクとなった「GSX1100S KATANA」「GSX750S KATANA」を現代に復活させたモデル。先代よりもホイールベースを縮めるなど、1000ccクラスのビッグバイクながら、コンパクトな外観にまとめているのが特徴。
スズキ GSX-R1000R ABS/215万6000円(消費税10%込)。スズキのMotoGPマシン「GSX-RR」に採用されている、正確なバルブコントロールを実現する「スズキレーシングフィンガーフォロワーバルブトレイン」をベースに設計。スズキの最新電子制御システム「S.I.R.S.(スズキ・インテリジェント・ライド・システム)」がフル投入されており、スポーツライディングを徹底サポート。

スズキクラッチアシストシステム(SCAS)

 シフトダウン時にスムーズな減速を可能にする、スリッパークラッチを導入。加速時のクラッチのクランプ力を高め、より柔らかいスプリングを導入できる新しいアシスト機能を採用している。これによりクラッチレバーの操作が軽くなり、シフトチェンジや半クラッチを繰り返す長時間の渋滞路運転など、クラッチ操作時の左手の疲労を軽減。

優れた空力特性と防風性を獲得

 フロントカウル、フロントスクリーン、ミラーはすべて綿密に設計し、徹底的にテスト。ダイナミックなパフォーマンスとリラックスできる快適性を追求した結果、高速ツーリングの要求を満たす、極めて優れた空力効率と防風性を獲得。

 風を頭部からそらすことに加え、側面に沿って導入された折り目により、肩と膝を保護。ミラーとミラーステーは、空気の流れを合理化し、当たる風の力を和らげるのが特徴。大型のカウルやスクリーンは、風、雨、寒さから身体をガードし、快適性の確保と疲労を軽減。ライディングに集中できるため、高速道路での長時間走行も安全に楽しむことができる。

最新の電子制御システム「S.I.R.S.(スズキ・インテリジェント・ライド・システム)」

 最新情報によれば、GSX-S1000GTは、下記のスズキ最新の電子制御システム「S.I.R.S.(スズキ・インテリジェント・ライド・システム)」を採用。

・出力特性を3つのモードから選択できる「SDMS(スズキドライブモードセレクター)。
・選択幅を広げ、制御量を5段階から選択可能とした「トラクションコントロールシステム」
・クラッチレバーを操作しなくてもシフトアップ/ダウンできる「双方向クイックシフトシステム」
・スロットルの操作不要で設定速度を維持する「クルーズコントロールシステム」
・新しいケーブルフリーシステム「ライドバイワイヤー電子スロットルシステム」

 なお、国内仕様の「GSX-R1000R ABS」に採用されている下記、

・発進・停車を繰り返す市街地走行などでの操作性を向上する「ローRPMアシスト」
・スターターボタンを押すと一定時間スターターモーターが回転する「スズキイージースタートシステム」
・車両の動きと姿勢を検知する「IMU」
・レースにおける効率的なスタートの加速をサポートする「ローンチコントロール」

 の有無は、2021年9月23日現在、アナウンスされていない。

 最新ツアラー・GSX-S1000GTへの導入が発表された、電子制御システムの各機能のポイントを解説しよう。

スズキ・ドライブモード・セレクター(SDMS)

 スズキ・ドライブモード・セレクター(SDMS)は、左ハンドルバースイッチにより、「A」「B」「C」の3つの走行モードから任意のモードを選年び、エンジン制御マップの切り替えが可能。ワインディング、市街地、高速道路など、様々なライディングコンディションにおいて、ライダーの好みに応じた走行モードを選択することができる。どのモードでも、最高出力値は変わらないのがポイント。

Aモード(アクティブ)最もシャープなスロットルレスポンスであり、すべてのスロットル開度において最大のエンジン出力が得られる特性。
Bモード(ベーシック)Aモードより中間のスロットル開度においてスロットルレスポンスがややマイルドな特性。スロットル操作に対する発生出力がリニアで扱いやすいことが特長。
Cモード(コンフォート)Bモードより高いスロットル開度までスロットルレスポンスがマイルドな特性。最も穏やかなスロットルレスポンスとトルク特性が特長。
GSX-S1000のSDMS例。

スズキ・トラクション・コントロールシステム(STCS)

 STCSはエンジン出力を効率よく路面に伝えることが可能な、より快適なライディングを楽しむことができるシステム。路面の状況やライダーの好み、経験等により、5段階+OFFの6モードからトラクションコントロール介入レベルを選択。前後輪の速度センサー、スロットルポジションセンサー、クランクポジションセンサーおよびギヤポジションセンサーの情報により、リアタイヤのホイールスピンを検出した際、速やかにエンジン出力を低減してくれる。

STCSの構造イメージ。車両はGSX-R1000R ABSの例。

双方向クイックシフトシステム

 シフト時のクラッチ操作から解放され、ライディングに余裕ができる双方向クイックシフトシステム。ライダーがクラッチやスロットル操作をせずに、シフトアップ&シフトダウンが可能。

 このシステムは、シフトリンケージの動きとストローク、シフトカムの回転、スロットルバルブポジションを検知。シフトアップ時、自動的に出力をカットし、トランスミッションギヤドッグに噛合っている駆動トルクの負荷を瞬間的に抜く。これにより、アクセル全開でも滑らかでスピーディなシフトアップが可能となり、ほぼ連続的な加速を得ることができるのがポイント。

 シフトダウン時は、スロットルのブリッピング(シフトダウン時にエンジン回転を合わせるため、スロットルを一瞬だけ開ける行為)や、クラッチ操作を行う必要なし。自動的にスロットルバルブを開き、エンジン回転数を次のギヤ比に見合う回転数まで上げてくれるので、スピーディかつスムーズなシフトダウンを行うことができる。

双方向クイックシフトシステムの大まかな構造。車両はGSX-S1000の例。
双方向クイックシフトシステムは、コーナーが続くワインディングロードでもスムーズで安全な走りを実現。

クルーズ・コントロール・システム

 クルーズ・コントロール・システムは、スロットルを操作せずに設定速度を維持できる便利な電子制御。特に高速道路を一定速度で走行する時の疲労を軽減。左ハンドルバーの(+/-)選択スイッチを使用して、設定速度を上下に調整。左ハンドルバースイッチのRESボタンを押すことで、TFTLCD機器画面で現在の設定も確認可能。クルーズコントロールは、2速以上で2000rpmを超えて走行している時に、30km/h〜180km/hの速度に設定できる。

長時間の高速道路走行に便利なクルーズ・コントロール・システム。

ライドバイワイヤー電子スロットルシステム

 ライドバイワイヤー電子スロットルシステムは、新しいケーブルフリーシステム。機械式スロットルよりもシンプル、軽量、コンパクトであるだけでなく、スロットル操作も軽く、自然なレスポンスを実現。オンボードの32ビットECMを活用することで、機械式スロットルよりもスロットルバルブの動作を正確に制御。乗りやすさと制御性を向上させるほか、高度なシステムを導入することも可能になる。

鋭いスロットルレスポンスを実現するライドバイワイヤー電子スロットルシステム。

スズキ初!6.5インチ大画面フルカラーTFTメーターに、「スズキ my SPIN」アプリを導入

メーターは大画面のため、非常に見やすいのが特徴。

 6.5インチの大画面フルカラーTFT液晶メーターを、スズキ初採用。ディスプレイをデイモード(白)とナイトモード(黒)に切り替えることで、時間や走行状況に関係なく、可視性が大幅にアップ。

 また、スマートフォンに無料の「SUZUKI my SPINアプリ」をインストール後、大型フルカラーTFT LCDに接続すれば、画面に電話、連絡先、カレンダー、音楽、地図アプリのコンテンツが表示される。

カレンダー&連絡先の表示機能

 TFT LCD画面でスケジュールされたイベントや、リマインダーなどの確認ができる。連絡先の表示システムは、スマートフォンの連絡先にアクセスすることで、TFT LCD画面で着信と相手を通知。連絡先リストを使用して電話をかけることも可能。

マップ&ナビゲーションの表示機能

 現在位置をTFT LCD画面に表示。左側のハンドルバーのスイッチを使用すれば、ズームイン/ズームアウトが可能。目的地を検索して、簡単なルーティングの提案を表示することもできる。

運転中に音楽を聴ける、電話が使える機能

 Bluetoothにより、ヘッドセットを介してスマートフォンの音楽ライブラリから音楽を聴くことができる。左側のハンドルバーにあるスイッチを使用してトラックを選択し、オーディオ(音量、再生/一時停止、前方にスキップ、後方にスキップ)の制御もOK。オーディオ再生を、リアシートにいるタンデム者と共有することも可能。また、Bluetoothにヘッドセットを組み合わせれば、乗車したまま電話をかけたり受けたりすることもできる。

明るいLEDヘッドライト&テールランプ

 NEWスタイルのデュアル型LEDヘッドライトは、特徴的な六角形の形状とレイアウトにより、カウルの鋭いノーズと相まって、先進的なスタイリングと新しいフロントフェイスを表現。リアのLEDテールランプは、高い視認性と長寿命を実現し、コンパクトかつスタイリッシュなテールラインを強調。

形状にもこだわった、容量19Lの燃料タンク

 NEWデザインの燃料タンクは、容量19Lを確保。優れた燃費性能に加え、走行距離を拡大し、給油回数の低減に役立っている。

旅へ出たくなる要素がふんだんに詰まった、「究極のロングツアラー」とも呼ぶべき超高性能リッターバイク・スズキ GSX-S1000GT。
スズキ・新型GSX-S1000GT

非公開: 「GSX-S1000GT」|スズキから新たなスポーツツアラーが登場!

スズキ株式会社は、フルカウルストリートバイク「GSX-S1000F」を全面改良した、全く新しいコンセプトのスポーツツアラー、新型「GSX-S1000GT」を発表した。10月より世界各国で順次販売を開始する。

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