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Benz Motor-Velocipede
130年前、世界に革命を起こした1台
2024年3月、メルセデス・ベンツのジンデルフィンゲン工場において、130年前に製造された世界初の量産4輪自動車「ベンツ モーター ヴェロシペード」が初披露された。ジンデルフィンゲン工場は、生産ロジスティクスに人型ロボットを導入するなど、最先端の生産技術を備えた工場。130年前、自動車の世界に革命を起こしたベンツ モーター ヴェロシペードの公開は、技術革新を祝う機会となった。
ヒストリック部門のメルセデス・ベンツ・クラシックは、フェルバッハにあるメルセデス・ベンツ独自のクラシックセンターの専門知識を駆使。最高水準のオリジナリティを備えた状態で、走行可能な状態に復元した。今回のような歴史的価値のあるプロジェクトには、メルセデス・ベンツ・クラシックのアーカイブにある膨大な歴史的資料や情報が最大限活用されている。
ベンツ モーター ヴェロシペードは、シュトゥットガルトのメルセデス・ベンツ・ミュージアムに展示されていた車両。2024年は130年の歴史を持つこの貴重な車両を様々なイベントで一般公開し、走行シーンを披露する予定だ。
1894年から1902年に1200台を製造
1894年、革新的な軽量構造を持ったベンツ モーター ヴェロシペードは、自動車産業に大きな転機をもたらすことになった。1909年に行われたインタビューにおいて、カール・ベンツは「この自動車に対する需要は文字通り圧倒的でした。私たちが作った車両は飛ぶように売れたのです」と語っている。
1894年から1902年にかけて、ドイツ・マンハイムにあったベンツ&シーの工場において、ベンツ モーター ヴェロシペードは約1200台を製造。略して「ヴェロ」と呼ばれたこのモデルは、史上初の量産乗用車となった。
1894年の段階で、ベンツ モーター ヴェロシペードは1.5馬力の1.0リッター単気筒エンジンを搭載。その2年後の1896年のカタログには「ヴェロシペードは20km/hで走行可能で、良好な路面であれば10%の勾配を登ることができる」と記載されている。当時の価格は2000マルク、最高級の内外装とランタンを完備していた。
絶え間なく続いた技術革新
当時、技術革新は急ピッチで進んだ。1896年以降、ベンツ&シーはよりパワフルなエンジンと追加装備のオプションを導入。豪華版として登場した「ベンツ コンフォータブル」は車体が長くなり、より精巧なシート表皮、後ろ向きの子供用シート、始動を容易にするクランクを標準装備。オプションとして3速ギヤや、より快適な乗り心地を提供する空気入りタイヤも用意されている。
1900年まではベンツ モーター ヴェロシペードとして、1902年まではベンツ コンフォータブルとして生産。その間、さらに開発が続けられており、最終的に縦型フライホイールを備えた1.0リッター単気筒エンジンの出力は、1894年の1.5馬力から、1902年には4.5馬力にまで向上している。
輸出でも成功を収めたことは、1901年のドイツ語/英語/フランス語で記載された当時のカタログに示されている。フランスにおいてヴェロは「エクレール(Éclair)」として販売。また、1895年にベンツ&シーは英国のエンジニアリング企業アーノルド(Arnold)に、ベンツ モーター ヴェロシペードのライセンス製造を許可、「アーノルド モーター キャリッジ(Arnold Motor Carriage)」は、英国初の自動車のひとつとなっている。