MINI最新の最強コンパクトSUV「JCW カントリーマン ALL4」に試乗

最新の激辛コンパクトSUV「MINI JCW カントリーマン ALL4」の乗り味は蒙古タンメン中本北極級?

MINIの最新コンパクトSUV「クロスオーバー」……ではなく「カントリーマン」に試乗した。しかもグレードは最強バージョン「MINI ジョン クーパー ワークス カントリーマン ALL4」である。衝撃の乗り味とは?

MINI John Cooper Works Countryman All 4

デカくなったとはいえ

これまでは商標登録の関係から日本では「MINI カントリーマン」を名乗ることができず、「MINI クロスオーバー」という仮初の名前を使っていたけれど、新型はついにヨーロッパと同じ名称を使えるようになった。おめでたいことなので、声に出して呼ぼう。MINI カントリーマン!

ちなみに、新型MINIカントリーマンは従来型に比べて全長が130mm長くなっており、全体にひとまわりサイズアップしている。これはおめでたいのか、おめでたくないのか。守旧派MINIファンは眉をひそめるだろう。全長4.5mにおよばんとするMINIは、はたしてMINIなのか。

いっぽう、家族や仲間と移動するためのクルマを探している方には、ルーミーになったことは歓迎されるだろう。しかもデカくなったとはいえ、「トヨタ カローラ クロス」に比べると45mm短い。

つまりMINIのSUVだと思うとデカいけれど、コンパクトSUVだと考えれば標準サイズ。参考までに、ホイールベースの2690mmは基本骨格を共用するBMWの「X1」「X2」と同じだ。

オリジナルMINIのようにシンプル

サイズ拡大以上に変化の幅が大きいと感じたのがインテリア。ダッシュボードの真ん中には直径240mmの巨大な円形タッチスクリーンが鎮座。ここにインターフェイスが集約されるから、物理的なスイッチやダイヤルは激減して、インテリアはとてもすっきりした。見ようによっては、オリジナルMINIのようにシンプルな内装だ。

新型MINIのインテリアは「体験をデザインする」というのがコンセプトで、「MINIエクスペリエンスモード」を操作すると円形タッチスクリーンはエコになったりレトロっぽくなったり、スポーティになったり、さまざまに表情を変える。

言葉でこう書くと、おもちゃっぽいと思われるかもしれない。実際、ギミックっぽさはあるけれど、BMW傘下になってからの新生MINIは、実用車というよりも人を楽しませるためのエンタメ車。「MINIエクスペリエンスモード」は機能としてどうしても必要なものではないけれど、それは人を楽しませるクルマというキャラに合っている。

バッキバキのスポーティ仕様にあらず

試乗車は最高出力317PSを発生する最強バージョン「MINI ジョン クーパー ワークス カントリーマン ALL4」。これまでのJCWはどんなスタイルのMINIであってもバッキバキのスポーティ仕様、蒙古タンメン中本の北極のようなホットハッチだった。だから、覚悟を決めてドライバーズシートに座る。ところが……。

拍子抜けというか肩透かしというか、乗り心地が想像よりはるかにやさしい。ハーシュネスは見事に抑えられ、首都高速の路面のつなぎ目を強行突破しても4本の足が自在の伸び縮みして、衝撃を緩和してくれる。そして突破したあとはきちんとダンパーが作動して、フラットな姿勢を保ってくれる。

足まわりのセッティングを最適化するアダプティブサスペンションの手柄か、あるいは同じ基本骨格でBEV仕様もラインナップするためにボディ剛性を引き上げたことの効果か。おそらく、その両方が相まって、乗り心地はいい塩梅で引き締まったものになっている。

エンジンも低回転域からもっちりとトルキーで、力強く車体を押し出す。7速DCTが滑らかに変速することもあって、気分よく加速する。けれども、いいクルマではあるのに、なにかが足りない……。これだとフツーによくできたお洒落なコンパクトSUVだ。足りないものは、刺激とゴーカートフィーリング。そこで円形タッチスクリーンの下に位置するトグルスイッチで「MINIエクスペリエンスモード」で「ゴーカート」を選択。すると円形タッチスクリーンが巨大な速度計に変身して、ドライバーの気分を盛り上げる。

10秒間だけフルブーストの状態

盛り上げるのは気分だけでなく、エンジンの回転が高まり、7速DCTの変速スピードも高まる。パワステの手応えも増し、アダプティブサスペンションも硬派なセッティングになる。

さらに──。赤い文字で「BOOST」と記されたパドルを引っ張ると、10秒間だけフルブーストの状態になる。刺激的な排気音が室内を満たし、アクセル操作に対する反応はカミソリの鋭さになる。コーナリングでも、瞬間に平行移動するかのようにスパッと向きを変える。これは蒙古タンメン中本の北極のようにホットだ。うかつにすするとムセる。

つまり新型MINIカントリーマンのJCWは、小さな高級車からホットなコンパクトSUVまで、非常にダイナミックレンジが広いクルマに仕上がっている。「MINIエクスペリエンスモード」をおもちゃっぽいと書いたけれど、紳士淑女を楽しませる大人のおもちゃだ。

値段を見ると「おっ!」と思うけれど、これ1台があればなんでもできる。4駆だからタイヤさえ換えれば、冬でも無敵だ。

SPECIFICATIONS

MINI ジョン クーパー ワークス カントリーマン オール4

ボディサイズ:全長4445 全幅1845 全高1645mm
ホイールベース:2690mm
車両重量:1680kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1998cc
最高出力:233kW(317PS)/5750rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2000-4500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後245/40R20
車両本体価格:667万円

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