目次
Maison Mistral Narrow Design
Mercedes-AMG G63
Mercedes-Benz G350
飽くなき研究心を色濃く感じさせる仕上がり
Gクラスの歴史をたどり、各時代ごとの仕様を研究してたどり着いたのが、メゾンミストラルナローデザイン（MMND）のコンプリートカーである。ブラックアウトされたスチールグリルと、五角形のヘッドライトシュラウドからナローに絞り込まれた造形がもたらす、どこか愛くるしい顔つきはW460（W461）そのもの。しかしベースとなるのはW463型。この造形を構築するにあたってヘッドライトからフェンダー、前後バンパーまわりまでの大改良が必要となったが、その結果として「外面は約40年前のW460ながら、内包されるメカニズムは現代モノ」となった。
いくら姿カタチが昔風情とはいっても、内包させるメカニズムに対して常に研究開発を続けるのがMMNDの姿勢だ。2025年の東京オートサロンに出展されたこの2台は、彼らの飽くなき研究心を色濃く感じさせるものだった。白い個体はG350ブルーテック・エディションゼブラ、デザートサンドはAMG G63エクスクルーシブエディションである。
MMNDの発足当初は、AMGモデルや、W463型の最終モデルであるG350dやG550になると、ラジエターの形状やオーバーフェンダーなどの関係で、W460時代の表情をメルセデス純正部品でつくるのが難しかった。そこでMMNDでは、ウインカー類のブラケットやドアミラーブラケット、電動の角度調整ができるドアミラーブラケットなどをオリジナルで製作するかたわらで、五角形のヘッドライトシュラウドとフロントグリルまでオリジナルで再現した。これがバージョン2と呼ばれるものだ。
そのうえでAMG G63だ。特にこれは5.5リッターV8エンジンを搭載し、最高出力571PS、最大トルク760Nmを発生させるAMG G63エクスクルーシブエディションである。当然ながらエンジンは巨大で発熱量も多く、非AMGモデルに比べて冷却部品が抜かりなく敷き詰められる。昔ながらの顔つきにすれば、その行き場がなくなってしまう。
レストモッドしたかのような凄み
そのためMMNDでは、冷却部品の大規模な移設を実施した。バンパーの真ん中にあるオイルクーラーをアンダーガードの下に、またバンパーの左右に装着されるサブラジエターをひとつはミッションの前に、もうひとつはリヤデフの横に持っていった。この作業にバージョン2のパーツを組み合わせることによって、ご覧のようにW460の顔つきへと見違えさせたのだ。これらは日本のレースエンジニアの技術がふんだんに活かされたという。そうした意味で、この愛くるしい顔つきを成立させているのはレーシングカーの技術だといって差し支えない。
工夫はほかにもある。AMG G63はよりタイヤ幅がファットで、20インチ以上がデフォルトとなる。AMGキャリパーを逃すための大径化でもある。そこでMMNDは発足当初に開発したオリジナルホイールのBLS16（7.0J×16インチ）とはまた別に、BLS18（9.0J×18インチ）を新開発した。それでもクラシカルな雰囲気を残すために18インチにとどめながら、巧みにAMGキャリパーをかわしているところにセンスと技術が光る。耐荷重性能を満たし、AMG G63の出力性能を十分に受け止めるだけの“強さ”を得るために、最高峰の鍛造製法を用いて生産される。
これらの工夫を知ったうえで、あらためて2台を見る。オリジナルのW460と比べたら、タイヤサイズやフェンダーの寸法など微妙な差異はある。それは決してネガティブなものではなく、当時モノを綺麗にレストモッドしたかのような凄みを感じる。しかし真の姿は、レストモッドではなく高年式のGクラスを用いた原点回帰モデルだ。メカニズムや安全装備、そしてインテリアの誂えは現代そのものである。つまりは我慢不要のままクラシカルな雰囲気を味わえるわけで、これこそまさに温故知新の極みである。
REPORT／中三川大地（Daichi NAKAMIGAWA）
PHOTO／山本佳吾（Keigo YAMAMOTO）
MAGAZINE／GENROQ 2025年4月号
【問い合わせ】
Maison Mistral Narrow Design
TEL 03-5566-0259
https://maison.mistral-co.jp
【取材協力】
アルティメットモーターカーズ
TEL 047-316-5800
http://www.ult-cars.co.jp