フライングスパー ハイブリッド上陸! ベントレーの電動化を探る

ベントレー電動化促進のキーマンに訊く、次世代ラグジュアリーへの覚悟

ベントレーのセールス&マーケティング担当取締役を務めるアラン・ファヴィー氏
新型フライングスパー ハイブリッドを上陸させたベントレー。同社のセールス&マーケティング担当取締役を務めるアラン・ファヴィー氏に、ビヨンド100を掲げるベントレーの電動化についてインタビューした。
ベントレーのハイブリッド第2弾となるフライングスパー ハイブリッドが日本でお披露目された。ラグジュアリーブランドの中でも積極的に電動化を進める同社の今後の戦略を、セールスとマーケティング担当責任者に訊いた。

Bentley Flying Spur Hybrid

PHVモデル、フライングスパー ハイブリッドを国内展開

ベントレー フライングスパー ハイブリッドのフロントスタイル
東京・六本木で披露されたフライングスパー ハイブリッド。デリバリーの開始は2022年第2四半期の予定だという。

ビヨンド100戦略に基づいて、持続可能なラグジュアリーブランドを目指すベントレー。現行型ベンテイガのPHVに続き、フライングスパー ハイブリッドを発表、2021年末に同車を日本で初披露した。25年に初のBEVを発表し、30年までに全ラインナップをBEVにするというビヨンド100は、当初は無理な計画のように思われたが、ベントレーはその目的を着実に遂行しつつあるようだ。

「2021年は我々にとって大きな成功の年でした。11月末時点で約1万3000台の世界販売、日本では約600台を販売しました。これはいずれも過去最高の数字です。また、利益率が10%を超えたのも大きなニュースでした」

と語るのは21年5月に同社のセールス&マーケティング取締役に就任したアラン・ファヴィー氏だ。今後は全面的な電動化に向けてさらにブランドの価値を高めていく、と語るファヴィー氏。しかしラグジュアリーブランドですべてをEVにするというのは、言うまでもなく大きなチャレンジだ。内燃機関のラグジュアリーカーに親しんできたユーザーは、EVのベントレーをすんなりと受け入れてくれるのだろうか。

ラグジュアリーなパフォーマンスこそベントレーのDNA

ベントレー フライングスパー ハイブリッドのリヤスタイル
外観上の違いはフロントフェンダーのエンブレムと楕円4本出しのマフラー、そしてリヤフェンダーの充電口など僅かだ。

「BEVについては、しっかりとした戦略を立てる必要があります。お客様がラグジュアリーブランドに求めるBEVの価値とは何か、それを見極めて確実に実現しなければいけないと思っています。25年末に初のBEVを発売する予定ですが、その時にはその価値をお客様に提供できるはずです」

ではラグジュアリーブランドのBEVは、その価値をどこに置くのか。少なくともモーターはエンジンよりは他との差別化が難しい。BEVベントレーの走りはどのようなものを目指すのだろうか。

「ベントレーは快適さや運転の安心感を提供し、そこに走りのパフォーマンスを組み合わせなければいけません。これこそベントレーのDNAです。これはEVでも変わるものではありません。ラグジュアリーなパフォーマンスと言ってもいいのですが、我々はこれを実現することができると思っています。他との差別化はあまり心配はしておりません」

「ベントレーの魅力は、電動化と対立するものではないのです」

ベントレー フライングスパー ハイブリッドのインテリア
フライングスパー ハイブリッドのインテリア。シートやインパネのパネルなどに多くの選択肢が用意されるのは今までのモデルと同様。フラッグシップサルーンにふさわしい静粛性が味わえるだろう。

ファヴィー氏は、電動化はまたベントレーに新たな価値を加えることになる、と考えているようだ。

「私はベンテイガ ハイブリッドに乗っていますが、インテリアは極めてラグジュアリーですし、走っていても非常に静かです。我々が電動化でお客様に提供するのは、このような洗練です。マテリアルも選び抜かれたものを提供し、電動化による静けさ、精緻さを楽しんで頂く。つまりベントレーの魅力は電動化と対立するものではないのです」

「もちろん個性の表現は必要ですが、例えばポルシェ タイカンやアウディ e-tron GTなどは、BEVも個性を実現できるということを表しています。我々はベントレー的な手法で他ブランドとの差別化を目指しますし、それが可能だと考えています」

2030年に全モデルを電動化するベントレー

ベントレー フライングスパー ハイブリッドの給電シーン
ベントレー フライングスパー ハイブリッドの給電シーン。3.0リッターV6ツインターボに電動モーターを組み合わせ、システム最高出力544ps/750Nmのパフォーマンスを発揮する。

またベントレーBEVが特別なものであることは、走っている間だけのことではない。充電についても、ベントレーならではの世界を構築するという。

「最初のBEVを発売する25年末までには、バッテリーの技術もより進化していることでしょう。なるべく長い航続距離を実現することも重要ですが、それだけではなく充電でもラグジュアリーな体験を提供したいと考えています。ベントレーBEVのお客様にとっては、充電も他の一般のBEVとは違うものでなければなりません。もちろん、これは簡単なことではありませんが」

そして初のベントレーBEVは、SUVではなくもっとオリジナルなものになるでしょう、とファヴィー氏は付け加えた。すべてのベントレーがBEVとなる2030年、ラグジュアリーカーの世界は、今とはまったく違ったものとなっているのかもしれない。

REPORT/永田元輔(Gensuke NAGATA)
PHOTO/Bentley Motors、GENROQ
MAGAZINE/GENROQ 2022年 3月号

「ベントレー フライングスパー ハイブリッド」がアイスランドツーリングを敢行、再生可能エネルギーで733kmを走破

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ベントレーフライングス パーハイブリッドのエンジニアリングプロトタイプが、最終テストと再生可…

【SPECIFICATIONS】
ベントレー フライングスパー ハイブリッド
ボディサイズ:全長5316 全幅2013 全高1483mm
ホイールベース:3194mm
車両重量:2505kg
エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ+モーター
排気量:2894cc
エンジン最高出力:306kW(416ps)/─rpm
エンジン最大トルク:550Nm(56.1kgm)/─rpm
モーター最高出力:100kW(136ps)
モーター最大トルク:400Nm(40.8kgm)
システム最高出力:400kW(544ps)
システム最大トルク:750Nm(76.5kgm)
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前265/40ZR21(9.5J) 後305/35ZR21(11J)
最高速度:285km/h
0-100km/h加速:4.3秒
車両本体価格(税込):2450万円

【問い合わせ】
ベントレーコール
TEL 0120-97-7797

【関連リンク】
・ベントレー 公式サイト
https://www.bentleymotors.jp/

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著者プロフィール

永田元輔 近影

永田元輔

『GENROQ』編集長。愛車は993型ポルシェ911。