ショーファーカーにしてオフロードも万全な最強SUV、レクサス LX600を初試乗

レクサス LX600に死角なし! オフロードもこなす最強のショーファーSUVを初試乗

レクサス LX600の走行シーン
豪華かつ快適な乗り心地を実現するラグジュアリーSUVは、すっかりショーファーカーとしての地位を築いた。群雄割拠するこのセグメントに、大本命とも言えるレクサス LX600が名乗りを挙げる。
レクサスのフラッグシップSUV、LXが4代目となった。デザインも質感もレクサスらしいプレミアムに満ちているがフレーム構造ならではの走破性もまたその魅力のひとつだ。市街地から高速道路、オフロードまで性能を確かめた。

Lexus LX600

豪奢で屈強、しかも本物

LXは、世界一タフなトヨタ ランドクルーザー(以下ランクル)と基本骨格を共有するレクサスであり、レクサスで最も長い歴史をもつSUVでもある。初代LX(日本未発売)はランクル 80をベースに1996年に北米で発売されたが、それは初代RX(日本名ハリアー)がデビューする2年も前だった。

LXが日本でも正しい形で販売されるようになったのは、2007年に北米で発売された200ベースの3代目=先代からである。レクサスは05年から国内展開をスタートしており、3代目LXもすぐに国内導入されても不思議はなかったが、実際には大きく遅れた。当初は3代目LXの日本導入予定はなかったそうで、結局はマイナーチェンジを機にした15年の国内導入となった。

セレブの移動手段として定着したラグジュアリーSUV

日本でのLXの立ち位置がなかなか定まらなかった理由はいくつかある。ひとつは日本におけるレクサスの扱いだ。ご記憶の向きも多いように、レクサスの国内スタート当初は、ラインナップ拡大には慎重だった。もうひとつは従来のLXがあくまで「ランクルの化粧直し版」の域を出なかったからだ。先代LXはエンジンこそ専用の5.7リッターV8だったものの、ほかにランクルとの技術的な差別化は多くなかった。新型LXの開発を率いた横尾貴己チーフエンジニア(CE)も「先代までの開発ははっきりと、ランクルが主でLXが従でした」と明かす。

しかし、現在のLXを取り巻く環境は、先代の開発当時とはまるで異なる。レクサスのフラッグシップSUVとして日本でも認知されただけではない。今や中東の富豪たちにもモテモテだし、キャデラック エスカレードなどの例からも分かるように、LXの最大市場である合衆国では、セレブの移動手段として、大型高級SUVがすっかり定着した。

「LX」ありきの乗り心地基準を見越した専用設計

レクサス LX600のシャシー&パワートレイン
ベースとなるランドクルーザー同様に軽量高剛性なフレーム構造を採用する。モノコックとはまた異なる乗り味をもたらすが、さすがそこはレクサス風に仕上げた。

新型LXはランクル 300ともども、大幅軽量化したプラットフォームやボディからパワートレインにいたるまで、ゼロベースでの開発となった。前出の横尾CEも「今回はLXありきで開発しました。基本段階からLXを想定した設計を多く入れています」と胸を張る。それはフレームやボディの開発時に、レクサス専用の静粛性対策やシートアレンジ、あるいは乗り心地基準を見越した設計を織り込んだということだ。

環境対応に膨大な手間のかかるエンジン(日本はガソリンのみ)こそランクルと共通化されたが、今回はランクルとは異なるLX専用部分が大幅に増えた。例えば、サスペンションは、エアと油圧を組み合わせて車高調整機能も持たされたAHC(アクティブハイトコントロール)が先代に続いての採用だが、新型のAHCはLX専用となった(先代でも一部のランクル 200もAHCだった)。また、ランクル 300のパワステは油圧と電動の重ねがけになっているが、「すっきりと奥深い走り」を標榜するレクサスのLXはあえて純粋な電動式とされた。

「エグゼクティブ」は22インチホイールを採用

新型LXのグレードは大きく3種。素のLX600に加えて、現時点では日本専用という「オフロード」、そして最大の注目株はショーファードリブンを想定した「エグゼクティブ」という布陣である。

今回のメディア試乗会での最初のメニューは、なんとオフロードコースだった。しかも、そこに用意されていたのは「オフロード」に加えて、22インチタイヤを標準で履く「エグゼクティブ」だったのだ。

悪路すらショーファーカーの乗り心地

富士スピードウェイ敷地内に特設されたコースは、担当者も「ここをすべてクリアできるのは、LX以外にはプラドとハイラックスだけでしょうか。RAV4は厳しい」と評する過酷なものだった。しかし、LXは悪路素人の筆者の運転でも、そこを涼しい顔でクリアしていく。

押し出し満点のスピンドル顔もあって、アプローチアングルこそランクル 300にわずかにゆずるLXだが、700mmという最大渡河水深などはまったく変わりない。悪路に不似合いすぎる22インチタイヤで岩場を走るのは胃が痛くなる思いだったが、LXのそれは専用開発品という。レクサスならではのオンロード性能に加えて、強靭なサイドウォールと、岩場でもソフトにたわむトレッドを両立しており、「・・・といった素晴らしいタイヤなので、できればアフター品への交換はオススメしません」と横尾CEは笑う。

さらに、今回は開発を担当した「匠」がステアリングを握っての後席オフロード体験・・・というオツなメニューまで用意されていた。エグゼクティブの後席に身を沈めると、匠はまずリクライニングをほぼ最大限まで寝かすように提案する。それは「NASAが提唱する中立姿勢」を参考にした最大48度のリラックス姿勢で、それに加えて助手席を前方に追いやり電動オットマンも使うと、全身がピタリと安定した。上へ下へ右へ左への悪路走行なのに、どこかにつかまるでもなく身体のどこも力を入れず、そのまま眠ってしまいそうになったほどだ。このキツネにつままれたような安心感。やっぱりNASAってすごい(笑)。

期待以上の快適な乗り心地と圧倒的な悪路走破性──脱帽の出来だ

レクサス LX600のリヤスタイル
レクサスの伝統である抜群の静粛性と快適な乗り心地はオフロードでも発揮される。悪路でも後席でオットマンを使ってリラックスできる最強のショーファーカーだ。

その後は、いよいよオンロードに繰り出すが、まずは圧倒的な静粛性に驚く。ランクル300は良くも悪くも牧歌的だった。上下して、ステアリングもオフローダー的にあいまいだったが、新型LXではそれらが見事にレクサス風味に脱皮している。舗装路での無駄な動きは明らかに減り、ステアリングフィールは正確になった。そして乗り心地も明らかにまろやかになった。レーダークルーズとレーントレース機能による半自動運転でも、ピタリと直進するようになったのは電動パワステのおかげもあるだろう。細かい凹凸路面でのリジッド特有の振動も皆無ではないが、全体としてはランクル300より圧倒的に乗用車である。

エンジンを含めたパワートレインは前記のとおり、ランクル300と基本的に共通でピーク性能も変わりない。しかし、実際にはトルク特性やスロットル特性が専用チューンとなっており、横尾CEによると「LXではフラット姿勢のまま前に押し出す感覚を重視しました。ランクルはフロントが持ち上がってでも、あえてグイッと前に出る感覚にしてあります」とのこと。そういわれると、LXは同乗者を不快にさせない滑らかで上品なドライブがしやすい。なるほど、新型LXはスミズミまでレクサスとなっていた。

REPORT/佐野弘宗(Hiromune SANO)
PHOTO/平野 陽(Akio HIRANO)

ジープ グランドチェロキー Lとトヨタ ランドクルーザー GRスポーツのフロントスタイル

日米の威信を懸けたオフローダー対決! グラチェロとランクルを比較インプレッション

10年ぶりにフルモデルチェンジを遂げたアメリカンSUVの老舗グランドチェロキー。一方、GA-Fプラットフォームを採用して快適性と走破性を向上させたランドクルーザー。7人乗りのプレミアムSUVとしてコレ以上のライバル関係はないはずだ。日米が誇る老舗SUVのキャラクターを比較してみよう。

【SPECIFICATIONS】
レクサス LX600 オフロード(5人乗り)
ボディサイズ:全長5100 全幅1990 全高1885mm
ホイールベース:2850mm
車両重量:2540kg
エンジン:V型6気筒ツインターボ
総排気量:3444cc
最高出力:305kW(415ps)/5200rpm
最大トルク:650Nm/2000-3600rpm
トランスミッション:10速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後リジッドアクスル
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前後265/65R18(7.5J)
燃料消費量:8.1km/L(WLTCモード燃費)
車両本体価格(税込):1290万円

【問い合わせ】
レクサスインフォメーションディスク
TEL 0800-500-5577

【関連リンク】
・レクサス 公式サイト
http://www.lexus.jp

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