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COMMIT GINZA
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UDANJI ICHIKAWA
「世代を超えて受け継がれるもの」
学生の頃から乗り継いてきたクルマは20台以上。中でもポルシェはお気に入りで、911をはじめこれまで10台近くを乗り継ぐ。右團次さんはこの日、ジェームス・ディーン愛用のマックレガーの赤いジャケットを着て黒のカイエンで現れた。
「高校時代の同級生に、年は2つ上なんだけど(笑)、今はスタイリストとして有名な山本康一郎さんがいたんです。彼は在学中から雑誌『ポパイ』のライターとして働いていて、その影響で古着や時計などファッションに目覚めた。20歳の時にうちの師匠がパリでオペラの演出をやるというので帯同させてもらったんです。そのときは滞在期間が2ヵ月ぐらいあって、食費を切り詰めて初めて買ったロレックスが、サブマリーナのRef.5513。当時は15万円くらいだったかな。その後も海外公演にいくたび時計を探していましたね」
そうして手に入れたのが手巻きデイトナの最終型Ref.6265。
「その頃はまだ人気がなくて、新品で13万円くらいとめちゃくちゃ安かった。ずっと気に入って使っていたけど、2000年頃にロレックスが古いモデルのメンテナンスをやめると聞いて壊れる前に手放すしかないかなと、売却してしまったんです」
豊富な専門知識がポイント
その後はロレックスの現行品や他ブランドなど、クルマ同様さまざまな時計を所有するが、やはりRef.6265のことが忘れられなかった。
「銀座界隈で働いているので(笑)、空き時間に時計屋さんを見て歩くのは好きなんです。そうして、店の方といろんな話をしていく中で知り合いになっていく。コミットさんとの出会いもそれで。あるときRef.6265の在庫があるというので現物を見たら我慢できなかった。店選びのポイントはまず専門知識が豊富なこと。そしてコミットさんの魅力はリセールバリュー率の高さで、それまで持っていたモデルを預り販売で高く売って頂いて、元手にすることができました。またメンテナンスにも対応してくれるというのも大きかった。こうしたバックアップがないと、ヴィンテージモデルはキープできないだろうし、僕もまた買い戻そうとは思わなかったと思いますね」
右團次さんの今年中学生になる息子は、2代目市川右近として父と同じ道を歩み始めた。
「あるとき自分の腕に時計をはめて遊んでいて、かっこいいって言うんです。今時はこんな古いものに興味がない子も多いのかもしれないけど、すごく嬉しいことです。古典だって元は新作だったわけで、何十年、何百年をかけて古典になった。これから古いものの中に新しいものを見つけることもあると思うんです」
こうして芸も時計も受け継がれていくに違いない。
REPORT/藤野太一(Taichi FUJINO)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)
MAGAZINE/GENROQ 2023年5月号
コミット銀座
住所:東京都中央区銀座6丁目4-7 G・O・WESTビル1階,2階,12階
TEL 03-6264-5310 営業時間:11:00〜21:00
https://www.commit-watch.co.jp/