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プロドライバー2名が参戦を発表
2023年シーズンは、6ラウンド12レースを日本各地のサーキットで開催される「BMW ＆ MINI Racing」。BMW M2 CS レーシング、MINI JCW、MINI クーパーSという3つの車両クラスが混走するBMW公認レースである。今シーズン初の関西開催となった第3ラウンドには、22台のエントリーが集まった。
大阪を拠点とする「TECH-M eWeLL Racing」は、BMW M2 CS レーシングでBMW ＆ MINI Racingに参戦。「富士スピードウェイ」で行われた第2ラウンドは、チームを率いる水元寛規（みずもと・ひろのり）が、レース1とレース2を勝利で飾り、開幕からの連勝記録を4に伸ばしている。
第2ラウンドから約1ヵ月のインターバルを経て迎えた、岡山国際サーキット。前戦はマシンが間に合わなかった神頭政志（しんどう・まさし）の50号車が無事にリペアを完了。片山 剛（かたやま・つよし）の70号車と共に、3台体制が揃うことになった。
「レースの1週間前に50号車の修理が完了して、シェイクダウンまで漕ぎ着けた感じです。岡山に関してはホームサーキットと言われると少し違うんですが、確かに地元の利はありますし、セッティングに関してもある程度の蓄積があります。ただ、自分としても未だに極められていない印象もありますね」
そして、第3ラウンドを前に、BMW M2 CS レーシング・シリーズにビッグニュースがもたらされた。プロドライバーの近藤 翼と山西康司のエントリーが明らかになったのである。どちらのドライバーも実績・実力は十分、エキスパートドライバーとして最高出力420PSのBoP（バランス・オブ・パフォーマンス）が課されることになった。ただ、前戦の優勝ドライバーである水元もまた、420PSでの走行が義務付けられている。
「正直、ジェントルマンレースにプロドライバーを参戦させることに違和感を持ったことは確かです。このシリーズでトップを走っている僕でも厳しい状況になるでしょうし、他の参加者は勝負に絡めなくなってしまいます。『勝ちたい、表彰台に立ちたい』と誰もが思って出てきているわけですから、アマチュアドライバーにチャンスがなくなってしまうのは問題だと考えています」
あえて爪を隠した予選と第5戦
迎えた、6月24日午後の予選は、下馬評どおり近藤が1分39秒331のポールポジションを獲得。水元は2番手の山西の1分40秒084からわずか0秒200差、1分40秒284の3番手タイムで予選を終えた。また、TECH-M Racing勢としては片山が1分41秒367の4番手タイム、２戦ぶりの登場となった神頭は1分41秒853の5番手タイムを記録している。
「予選で目の当たりにした近藤選手と山西選手の走りは痺れましたね。もちろん思うところはりますが、あそこまでの実力を持った人が同じクルマに乗ってくれるのは勉強になります。めちゃめちゃ参考になりました。今回の予選は、富士の段階で試していたコレだと思うセットアップをベースに、スパイスを効かせた仕様で走りました。ただ、アタックラップの最後にミスをしてしまって、山西選手にコンマ2秒届きませんでしたね」
6月25日の第5戦決勝レース、3番グリッドからスタートした水元は、あえて予選でのセッティングとタイヤのまま走行。近藤、山西に続く3位でレースを走り切った。
「あえて第5戦は予選のままのセットアップと中古タイヤで走ることで、『レースラップはこんなものか』とトップのふたりを油断させる作戦です。ただ、やっぱりキツかったですね」
このレースは神頭が4位、僅差で片山が5位に入った。決勝レース1（第5戦）の各クラス上位60％に対しては、レース2（第6戦）のスタート順に「リバースグリッド」が採用されるため、第6戦は片山が1番グリッド、神頭が2番グリッド、水元が3番グリッドと、TECH-M Racing勢がトップ3を独占した状態でスタートを迎えることになった。
20分＋1周で行われる第6戦決勝レース、シグナルオールレッドからブラックアウトし、22台が一斉にスタート。抜群の蹴り出しを見せた水元は、コース真ん中からチームメイトの片山と神頭をかわしてトップに立った。
「第6戦に向けて20分間のフルプッシュに耐えられるセッティングに変更しました。さらにニュータイヤで勝負しています。スタートでTECH-M Racingとしてプロのふたりを抑えて、僕が抜ける作戦だったんですが、片山選手と神頭選手がスタートで出遅れてしまって……。ふたりはかなり緊張したそうです（笑）」
「今回、レース中の無線をチーム全員で共有していたんです。走行中も色々と発言し合いながら、チームプレイを楽しむことができました。実はスタート10秒前に、神頭選手からスタートの手順を突然質問されたんです。あんなに時間があったのに、なぜ今なのかと（笑）。とにかくチームで戦うことが、ひたすら楽しかったですね」
白熱を極めた三つ巴のバトル
スタートでは山西も4番手から2番手にジャンプアップ、近藤も1周目終盤には3番手に浮上し、水元を先頭に3台が僅差で争う展開へ。緊迫した三つ巴のバトルが最終ラップまで続くと思われた9周目。レッドマンコーナーでコースオフ車両が発生し、残り3分の段階でセーフティカーが導入。そのままレースはフィニッシュし、水元がプロのレーシングドライバーを抑え切ってシーズン5勝目を飾った。片山が4位、神頭は5位でレースを終えている。
「レース中、山西選手の動きをコントロールしつつ、その後方にいる近藤選手も抑えることができました。この走りを続けることができれば勝てると考えていましたが、1回でもミスすれば、それを見逃してくれる人たちではありません。バックマーカーを挟んでも、全然離れませんでしたから。アマチュアドライバーとして、プロドライバーへと挑戦する気持ちを持ったまま、走り切ることができました。このバトルは本当に楽しかったですね、最高でした」
今回、TECH-M Racingの地元大阪から比較的アクセスの良い岡山ということもあり、40名ものゲストがチームの応援に駆けつけることになった。このレースは単に観戦するだけでなく、非常に楽しい企画が盛り沢山で、そのひとつにピットウォークがある。間近でレースカーやピットの雰囲気を感じられるのだ。今回の岡山ラウンドでは多くのゲストがTECH-M eWeLL Racingのピットに集結し、チーム代表の水元が、M2 CSレーシングの紹介を行った。チーム代表として、マシンの作り手として、そして昨年のシリーズチャンピオンの乗り手として、全てをこなす水元だからこそ語れる言葉に、来場したゲストも興味津々で耳を傾けていた。
パドックに設けられた快適なホスピタリティで食事を堪能しつつ、白熱のバトルが繰り広げられた第6戦をたっぷりと楽しんだようだ。興味のある方はぜひ参加してほしい。
次戦（8月5～6日）は、シリーズ唯一の東北開催となる「スポーツランドSUGO」が舞台。関西ベースのチームにとってはなかなか走り慣れていないサーキットではあるが、高低差のあるレイアウトは走り応えも十分。TECH-M Racingの3台が、どのようなバトルを見せてくるのかに注目だ。
「今回はドライバー水元として、プロに勝つことが目標でした。それがフィニッシュの段階では、これまで戦ってきたアマチュアドライバー達の代表として、プロと戦っている気持ちになっていました。
次の菅生も豊富な経験を持つプロのふたりに、その気持ちを持って挑んでいきたいと思っています。関東では砂子塾さんが頑張っていますし、『西のTECH-M、東の砂子塾』としてアマチュアレースを盛り上げていきたいです」と、水元は意気込みを語っている。
「BMW ＆ MINI Racing」は、シリーズ全戦を、公式Youtubeチャンネルでライブ配信中。岡山国際サーキットで開催された第3ラウンドも予選・決勝がすべてがアーカイブスとして公開されている。ぜひ、白熱の戦いをチェックしてほしい。
