ベースは名車・セロー! 東京消防庁が誇る特殊オートバイも『トミカ』になった!!

災害や事故現場に真っ先に駆け付けるヤマハ セローがベースの特殊オートバイ! | トミカ × リアルカー オールカタログ / No.40 消防活動二輪車 クイックアタッカー

発売から50年以上、半世紀を超えて支持される国産ダイキャストミニカーのスタンダードである『トミカ』と、自動車メディアとして戦前からの長い歴史を持つ『モーターファン』とのコラボレーションでお届けするトミカと実車の連載オールカタログ。あの『トミカ』の実車はどんなクルマ?
No.40 消防活動二輪車 クイックアタッカー (ライダー/スタンド付き・希望小売価格550円・税込)

2022年12月の第3土曜日に、それまでの『トミカ』の『No.40 ホンダ シビック TYPE R』に代わって登場したのが『No.40 消防活動二輪車 クイックアタッカー』です。消防活動二輪車(クイックアタッカー)とは、事故現場へいち早く到着し、負傷者の救出や救護、車両の消火活動を行なう、東京消防庁の人命救助や消火活動を行なうための二輪車部隊、『消防活動二輪部隊(通称・クイックアタッカー隊)』で用いられている専用オートバイです。

クイックアタッカー Ⅰ型 実車左サイドビュー。Ⅰ型は通常、リヤキャリアに可搬式消火器具を装備して出動する(写真は非装備状態)。(PHOTO:東京消防庁)
クイックアタッカー Ⅰ型 実車右サイドビュー(PHOTO:東京消防庁)

クイックアタッカー隊は、1995年に発生して各地に甚大な被害をもたらした阪神淡路大震災の教訓から、1997年に誕生しました。地震によって建物が崩壊すると、散乱した瓦礫などが道路をふさいでしまい、自動車だけでは充分な対応ができなくなるため、機動力に優れたオートバイを活用して災害・事故現場の情報収集や先行救助などにあたる部隊が誕生したのです。

クイックアタッカー隊は10ヵ所の消防署所に配備されており、事故や災害が発生した際にいち早く現場へと向かい、消防車や救急車が到着する前に負傷者の救助や応急救護、消火活動を行なったり、震災や水害時には大渋滞を起こしている道路を縫うように走って市街や橋などの状況をくまなく調査し、情報収集にあたるという基本的な任務は変わりませんが、市街地に配備された部隊は高速道路上の交通事故や車両火災への対応が、山間部に配備された部隊は登山客の救命救助が主な仕事となっているそうです。

クイックアタッカー Ⅱ型 実車左サイドビュー。Ⅱ型は通常、リヤキャリアに簡易式救助器具や救急資器材を装備して出動する(写真は非装備状態)。(PHOTO:東京消防庁)
クイックアタッカー Ⅱ型 実車右サイドビュー(PHOTO:東京消防庁)

クイックアタッカーは基本的に2台1組で出動します。配備されている消防署所によって少し任務が違うため、その装備はわずかな違いはありますが、可搬式消火器具と呼ぶ圧縮空気を利用して放水を行なう携行型の消火器――高圧放水銃――を装備したⅠ型と、交通事故によって変形してしまった自動車のドアなどをこじ開けたり、ボディなどを切断するために使用する簡易式救助器具――油圧カッター、あるいは油圧スプレッダー――や救急資器材を装備したⅡ型があり、この2台でコンビを組みます。

たとえば交通事故の場合、現場に到着したクイックアタッカー隊は、まず信号紅炎で後続車に事故を知らせて現場の安全を確保。Ⅱ型の装備する簡易救助器具を使ってドアをこじ開けて負傷した乗員を救出。そしてエンジンから出た火がガソリンに燃え移らないようⅠ型の装備する可搬式消火器具で消火作業を行ないます。ちなみにⅠ型に積まれる可搬式消火器具は約20kgの重さがあり。Ⅱ型の積む簡易式救助器具も約10kgの重さがあります。また、赤色警光灯やサイレンも装備しているため、通常のオートバイよりも重量が重く、特にⅠ型は可搬式消火器具のタンクの中の水が動くためにバランスが取りにくく、運転するためには高度な運転テクニックが必要とされるそうです。

クイックアタッカーのベース車、ヤマハ セロー250(2020年モデル)(PHOTO;YAMAHA)

さて、このクイックアタッカーに採用されているのは、ヤマハのセロー250というオートバイになります。1985年に初代モデルがデビューしたセローは、軽量コンパクトな車体に低いシート高、低速トルクを重視したエンジン特性やギヤ設定など、誰でも気軽に山道を楽しめる車体構成を採用し“マウンテントレール”というそれまでにないオフロードバイクのあり方を提案しました。

セローは「二輪二足」というキャッチフレーズと共に登場しましたが、これは現在でもヤマハが提唱している、乗車時に脚を使って安定させるオートバイの乗り方を示したものです。トライアルというバイク競技では、地面に足をつくのは減点対象であり、技術が低くカッコ悪い象徴とされています。しかしその一方、荒れ地を自在に駆け回る獣は四足歩行が基本。本質的に四本足は二本足よりも安定しています。荒れた道や自然の中ではバイクだけに頼らず、ライダー自身も両足・全身を使い、無理せず低速で足を着いて楽しむことこそ、自然でスマートです。日常では別にバイク競技に出ているわけではないので、安全優先で足はどんどん着きましょうという考え方が「二輪二足」です。このため、セローは初心者でもたいへん扱いやすく、乗りやすいオフロードバイクとして評判となり、大ヒットとなりました。扱いやすく、乗りやすいセローはクイックアタッカーのような特殊オートバイのベース車にうってつけで、実際、警視庁でもセローをベースとして作られた災害対策用白バイ、XT250Pを採用しています。

クイックアタッカー同様にヤマハ セロー 250をベースに作られた警視庁の災害対策用白バイ、XT250P。(PHPTO:警視庁)

さて、セローの初代モデルのエンジン排気量は225ccで、これはセロー225として2004年まで5世代にわたって作り続けられました。2005年にはフレームが刷新され、エンジン排気量が250ccにアップした新世代版(初代250)となりましたが、自動車排出ガス規制強化により2017年にいったん生産中止となり、翌2018年に環境性能に対応させた第8世代モデル(第3世代250)が発売されました。初心者からベテランまで高く評価されたセローでしたが、残念ながら2020年の『ファイナルエディション』をもって生産終了になってしまいました。厳しくなる排気ガス規制にあわせて改良すると大幅な改造になってしまい、それはもはやセローと呼べなくなるほど変わってしまうという判断から生産終了となったと言われています。セローは生産終了となったものの、東京消防庁は予備車を持っているため、まだまだセローのクイックアタッカーは第一線で活躍するそうです。

2020年に発売された『ファイナルエディション』。これをもって傑作バイク、セローは生産終了となった。

さて、『トミカ』の『No.40 消防活動二輪車 クイックアタッカー』はセロー250をベースとしたクイックアタッカーをモデル化しています。荷台に積まれた黒いコンテナからⅡ型のように見えますが、実はⅠ型の可搬式消火器具もサイズや形状的にはさしたる違いもないため、どちらとも言い難いスタイルではあります。赤色警光灯やサイレンもきちんと再現されており、この特殊オートバイの魅力を過不足なく伝える1台となっています。また、難易度は高いかも知れませんが、白く塗って警視庁のXT250Pを再現してみるのも楽しいかも知れません。

■ヤマハ セロー 250 (2020年モデル) 主要諸元(『トミカ』と同一仕様・規格のものではありません)

全長×全幅×全高(mm):2100×805×1160

ホイールベース(mm):1360

車両重量(kg):133

エンジン:G3J9E型単気筒SOHC

排気量(cc):249

最高出力14kW(20ps)/7500rpm

最大トルク:20Nm(2.1kgm)/6000rpm

サスペンション(前/後):テレスコピック/スイングアーム

ブレーキ(前後) :ディスク

タイヤ:(前) 2.75-21 (後) 120/80-18

■毎月第3土曜日はトミカの日!

No.78 ホンダ シビック TYPE R (サスペンション可動・希望小売価格550円・税込)

毎月第3土曜日は新しいトミカの発売日です。2022年12月の第3土曜日には、上でお伝えしているように、それまでの『No.40 ホンダ シビック TYPE R』に代わって『No.40 消防活動二輪車 クイックアタッカー』が登場します。また、それまでの『No.78 日産 GT-R NISMO 2020 モデル』に代わって『No.78 ホンダ シビック TYPE R』が登場します。なお、『No.78 ホンダ シビック TYPE R』には、初回出荷のみの特別仕様(特別色)もあります。

No.78 ホンダ シビック TYPE R(初回特別仕様) (サスペンション可動・希望小売価格550円・税込)*初回のみの特別仕様(特別色)です。

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