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新型は兄弟車ではなく「ライバル」
トヨタの最高級ミニバンとして誕生した初代アルファードの発売から20年あまりがたった。2008年にはヴェルファイアが加わり、2015年の3世代目では「大空間高級サルーン」に進化した。それなりに高価であるにもかかわらず、驚くほどの売れ行きを見せてきたのはご存じのとおりで、8年ぶりにモデルチェンジした新型も、早くも受注状況が大変なことになっているようだ。
発表会のステージに登場した2台は、これまでにも増して、それぞれ強い個性を放っていて、あえて2台が個別に存在する意義をアピールするかのように目に映った。2台は今後も〝ライバル〟として激しく闘い続けるだろうと、壇上で執行役員のサイモン・ハンフリーズ氏は述べた。兄弟車ではなく「ライバル」と表現したのも印象的だった。
ボディサイズは全長が5000㎜、全幅が1850㎜を超えない、日本で使うには大きすぎないサイズと広い室内空間を維持。その上で、「Forceful×IMPACT LUXURY」というデザインキーワードをもとに、突進するような力強さ&躍動感を表現している。
開発コンセプトである「快適な移動の幸せ」というのは、大切な家族との移動や大事なお客様の送迎などのシーンで、運転する人も後席に乗る方も、その空間にいる人すべてがお互い相手を思いやり感謝しあえる、というのが開発陣の考える概念だという。
〝快適〟とはなんぞやを知るために開発陣が最初に実施したのは、欧州の名だたる高級サルーンを徹底的に走り込むことだった。これによりいろいろな学びを得たという。
従来型でアルファード/ヴェルファイアをグローバルに投入し、富裕層が乗るケースも増えて、さまざまな要望があったことを受けて、「我々が持つこの大空間という価値と欧州の高級サルーンの運動性能という価値を融合すれば、まさに快適な移動の幸せを届けられる商品が作れると考えた」という旨を開発責任者の吉岡氏は述べていた。
中でも前出の欧州勢は振動や騒音といった人が不快に感じそうな要素を意図的にかつしっかりと抑え込んでいることに気づいたとのことで、新型もその点に注力し、振動を従来比で約3分の1に低減することに成功した。プラットフォームを新たにTNGAのGA-Kをベースに開発し、高い操縦安定性能と衝突安全性能を達成することもできた。
その上で、足まわりは17から19インチまで3種類あるすべてのタイヤを新規開発したほか、路面の入力に合わせて減衰力を変える周波数感応型ショックアブソーバーにより、ロードノイズとともに乗り心地を向上させた。
足まわりをしっかりと動かすために必要な車体剛性についても、従来比で50%も引き上げた。サスタワーやリアのホイールハウスなどの着力点についても30%向上させることができたという。
実はそのあたりについて、これまでは開口部の大きなミニバンでは仕方がないと考えていた。ところが、たとえば世の名だたるオープンカーは開口部が大きくても高い運動性能を実現できていることに着目し調べたところ、床下を工夫していることがわかった。そこで新型ではV字型のプレースを追加した。
さらに、アンダーボディの構造用接着剤を従来比で5倍もの長さとした。剛性を高めたいところと振動を吸収させたいところで硬さを使い分けて最適に配した。さらに、ボディの環状構造を上手く生かしてサスタワーとタワーバーにより剛性を高めた。
人間に直接触れるシートについて、ビルの免振構造のようなゴムをかませて振動を遮断する防振構造を新たに採用するとともに、振動吸収と姿勢保持のためのパッドを適材適所で使い分けるなどして、極上の乗り心地を追求したという。
室内空間は、「体脂肪率ゼロ」をキーワードに、コンマ1ミリ単位で検討を重ねて徹底的に無駄をなくし、前後席間距離を拡大することにも成功した。従来は天井の各部に点在していたスイッチ類やエアコン吹き出し口などの機能を天井中央に集約した、スーパーロングオーバーヘッドコンソールの採用もポイントのひとつだ。
それ以外にも、「快適な移動の幸せ」を実現するためのおもてなしの装備がいくつも用意されている。運転支援装備についても、非常に充実した機能を備えた最新の予防安全パッケージ「トヨタセーフティセンス」と高度運転支援技術「トヨタ チームメイト」を搭載している。
こだわりが強いヴェルファイアユーザーへ
パワートレインは、TNGAの2.5Lハイブリッドユニットを両車に設定。アルファードには2.5Lのガソリンユニット、ヴェルファイアには話題の2.4Lターボユニットを採用。
今回の新型では、ヴェルファイアの立ち位置がより明確にされたのもポイントだ。実のところ、先代型のとくにマイナーチェンジ以降、ヴェルファイアの販売比率は全体の5%を切るほどまでに落ち込み、当時の企画ではアルファードと統合する予定だった。しかしヴェルファイアこそ、こだわりの強いユーザーに愛用されていると、新型では発想を変え、「ヤング アット ハートなお客様が素直にカッコイイと思える意匠や、ドライビングプレジャーを感じられる運動性能を付与しようと考えた」と吉岡氏が述べるとおり、差別化が図られた。
具体的には、専用の足まわりのチューニングをはじめ、19インチタイヤの標準設定、フロントのパフォーマンスブレースを追加するなどして、ヴェルファイアのお客様が好まれる俊敏な操舵応答性と接地感を追求している。2・4Lターボユニットについても専用設定とし、走り出しから常用域にかけてのノイズを徹底的に下げて高級感と加速性能の両立したものに仕上げたという。
将来的にはPHEVの導入も!?
先代型と新型の二世代にわたって携わってきた吉岡氏は、「正直、8年前にはこれ以上のアルファードとヴェルファイアは作れないというふうに本当に思っていましたが、モデルライフ中で、いろいろな国のたくさんのお客様やメディアのみなさまからたくさんのご意見をいただいたことで、少しずつ成長することができました。そして、まさにこういうボーン イン ジャパンの日本が作り出したおもてなしのクルマを、これからも世界のみなさまにお届けして、快適な移動の幸せをひとりでも多くの人に感じていただきたいというふうに思っています」と述べた。
発売時点では7人乗りのみの設定でバリエーションはあまり多くなく、新旧比では価格もだいぶ高くなっているほか、ボディカラーの選択肢も制約があるが、そのあたりはおいおい拡大されていく見込みだ。
また、将来的にPHEVを投入する予定があることも明らかにされた。ミニバン界の頂点に君臨し、憧れの象徴となっているアルファードとヴェルファイアの新型モデルは、より多くの人を魅了するとともに、かつてない「快適な移動の幸せ」を提供してくれることに違いない。
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