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ランクル300のライバルを中東で試す!
いま、日産にはこんなフラッグシップが必要なんじゃないか。2024年秋にフルモデルチェンジで生まれ変わった「パトロール」を前に、そんな気持ちが強くなった。
パトロールとは、かつて日本で「サファリ」として売っていたモデルの海外名称。日本では2002年をもって販売を終了したけれど、中東やオーストラリアなど海外では「ランドクルーザー」のライバルとして販売が継続されている。根強い人気があるのだ。
そんなパトロールの魅力といえば、まず存在感だろう。全長は5350mmで全幅は2030mm。あの「ランドクルーザー300」よりもひとまわり大きく、「シボレー・タホ」や「キャデラック・エスカレード」といったフルサイズのアメリカンSUVたちと同等のサイズなのだ。おそらく日本だと「もてあますサイズ」なんて言われてしまいそう。けれど、この大きさに憧れてしまうのは生まれながらに持つ“オトコの性(さが)"なのだろう。
車体構造はもちろん、強靭なラダーフレーム。今回のフルモデルチェンジはラダーフレームの設計を刷新し、より強い骨格を身に着けた。エンジンは排気量3.8LのV6自然吸気(320ps/386Nm)をベーシックタイプに、排気量3.5LのV6ツインターボ(431ps/700Nm)を上位モデルに搭載。2本立てで展開する。
「VR35DDTT」と呼ぶ後者は新型パトロールのデビューに合わせて新開発されたもので、巷では「日産最後の非ハイブリッド用エンジン」なんて噂されているけれど、どうやらそれもガセではなさそうだ。今後もハイブリッド(e-POWER)と組み合わせるエンジンは開発していくらしいけれど、ハイブリッドではないパワートレイン用のエンジンの開発は予定されていないらしい。
もしかすると「VR」という型式を見てピンとくる人もいるかもしれない。R35型「GT-R」などスポーツユニットの流れを組むもので、「スカイライン400R」やZR34型「フェアレディZ」に積むVR30DDTTに近い設計だ。エンジンブロックは新設計だが86mmというボアはVR30DDTTと共通で、ストローを86mmから100.2mmへ拡大して排気量アップが図られている。
従来モデルのパトロールに搭載されていた上位エンジンは排気量5.6の自然吸気V8(406㎰/475Nm)で、新型の3.5Lターボエンジンはいわばダウンサイジングユニットとなる。しかし、パワーもトルクも大幅に上がっていて単に速いというだけでなく、実際のドライバビリティもスポーツユニットの血筋だけあって回転上昇のフィーリングや高回転のパンチ力など躍動感も見事なもの。さらにパフォーマンスアップしたフェアレディZのエンジンをイメージすればいいだろう。大きなSUVでありながらも、まるでスポーツカーを運転しているかのように錯覚させる味付けがいかにも日産らしい。
ちなみにこのV6ターボエンジンはライバルであるランクル300が積む3.5Lガソリンツインターボエンジンの最高出力である415㎰も、最大トルク650Nmも上回るものだ。
ランクル300との違いといえば、インテリアの考え方も全く違う。オフローダーの王道的といっていい安定感あふれるデザインのダッシュボードとしたランクル300対して、新型パトロールの上位モデルは14.3インチのディスプレイをふたつ並べた先進的なデザイン。そのうえダッシュボードの広範囲をレザー張りとし、独自のキルティング処理を施したシートを組み合わせたラグジュアリーに満ちあふれた空間なのだ。
どことなく華やかさに欠けるランクル300とは明確に異なる新型パトロールのインテリアの鮮やかさと上質感は、お世辞抜きにレクサスのようなラグジュアリーブランドの水準に到達している。実に見事だ。
砂漠だってガンガン突き進む!
今回の試乗コースは一般道を中心にオフロードコースや砂漠も用意されていた。ただ、本格オフローダーだけにオフロード走破性や砂漠での走りのレベルが高いことは当然といっていいだろう。都会派の軟弱なSUVとは一線を画する走行性能を持つ真のオフローダーなのだから。
しいて言えば、単純な走破性云々ではなく砂漠を走るときのコントロール性の良さが印象的だった。滑りやすい路面なのでアクセルを踏み込めばテールスライドを起こすが、その際の挙動が穏やか。そのうえエンジンのレスポンスもいいからアクセル開度でドリフトアングルを自在にコントロールできるのが楽しくて、ついつい遊んでしまう。こんな巨体なのに、クルマとの一体感を感じられるあたりが「さすが日産わかってるねぇ!」だ。
そのうえで、想像をはるかに超えたレベルだったのがオンロードにおける超高速域のスタビリティの高さ。先に言っておくと、悪路走行性能を重視するオフローダーの場合、悪路走破性とオンロードでの走りは相反する部分があり、高い次元での両立は難しいし、それをどうバランスさせるかが開発の腕の見せ所だ。ランクル300などは、かなりオフロードに振っている。
しかし、新型パトロールはハイレベルなオフロードや砂漠の走行性能を担保したうえで、オンロードでの超高速域においても抜群の安定感を見せてくれたのだ。日本の高速道路の制限速度上限を大きく超える領域においてもスタビリティは見事なもので、まったくフラつかずに巡航する能力は目から鱗。凄いじゃないか、新型パトロール。
そんな新型パトロールは現在のところ、とても残念だが日本への導入予定はない。でも、せっかく魅力的な商品があって右ハンドル仕様も存在するのだから、今こそ日産はこういうクルマを日本でも展開するべきではないだろうか。
もちろん、新型パトロールを日本で販売しても「たくさん売れる」ということはないだろう。しかし、販売台数増に直結する商品をそろえるだけではなく、GT-Rのように日産の象徴的な存在を用意し、それが「憧れ」となり日産ファンを増やすような商品展開も、自動車メーカーにとっては大事なのだから。








新型パトロールの理解する10のポイント











STYLEWAGON(スタイルワゴン)2025年2月号より
[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]