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1983年に誕生したダッジ・キャラバンがアメリカで大ヒット!
現在の自動車業界では死語になってしまった言葉がある。そのひとつが「ビッグ3」だ。かつて世界の自動車販売台数ベスト3をすべてアメリカの自動車メーカーが占めた時期があった。それも相当長い期間で、1990年代まで続いた。当時の1位はキャデラックやシボレーなどのブランドを展開するゼネラルモーターズ(GM)。2位はフォードが続いた。そして3位はダッジやジープなどのブランドを展開するクライスラーである。
クライスラーは2008年のリーマンショックにより2009年に連邦破産法第11章が適用され、現在はイタリアのフィアットなどの系列にある。だが元気だった頃のクライスラーはユニークさが傑出していた。
またクライスラーは折々でニッチな商品を送り出し、新たなマーケットを生み出すことでも知られる。古くは1968年に登場した「プリムス・ロードランナー」。当時はシボレー・カマロやフォード・マスタングなど比較的安価で、高性能なマッスルカーが人気を呼んでいたが、ジリジリと価格は上昇していた。そこで思い切りコストダウンして「3000ドルでゼロヨン14秒」を実現したのがロードランナーだった。これがアメリカで大ヒットする。
そんなクライスラーが1983年に1984年モデルとして登場させたのが「ダッジ・キャラバン」だった。海外向けは「クライスラー・ボイジャー」を名乗った。注目すべきはFFモデルであり、室内は3列シートで7人乗り。リアには片側だけだがスライドドアを採用していたこと。まさに現在のミニバンと同じ定石がほぼすべて達成されていた。このクルマがアメリカで大ヒットとなる。
当然のことながら、あわてたほかのビッグ3も追従して、GMは1985年に「シボレー・アストロ」を市場投入。フォードも1986年に「エアロスター」を発売する。サイズやスタイル、車内を見ると、どちらもキャラバンを模倣したクルマなのは明らかだった。
結論から言うとこのダッジ・キャラバンこそがミニバンの元祖となる。全長4・5mほどと確かに当時のアメ車では小さいがミニと呼ぶほどでもない。なぜミニバンと呼ばれたのかはさらに歴史をヒモ解く必要がある。
1961年、フォードは「エコノライン」という大型のバンを登場させた。GMも1964年、同じコンセプトの「シボレーバン(シェビーバン)」をリリース。クライスラーは小型の「ダッジA100」を1964年に登場させ、1970年にはこれを大型化した「トレーズマン/スポーツマン」に進化させている。また、現在はブランド化した「ラム」は、当時はダッジの車種名として存在。1980年には「ダッジ・ラムバン(ダッジバン)」が登場した。
これらのクルマは商用バンがメインユースではあったが、乗用モデルもラインアップし、キャンピングカーなど、レジャー用に使うユーザーも一定数いた。
いずれも短いボンネットを備え、ロングキャビンのクルマだった。全長は5mを遥かに超えるモデルも存在し、フルサイズバンとも言われているほど。まさにアメ車のバンというイメージにピッタリで、アメリカでは1960年代からこういうクルマが日常的に走っていたということだ。
そんななかで登場したのがダッジ・キャラバンだった。形だけだと従来からあるフルサイズバンに非常に似ている。だが、大きさはふたまわりくらい小さかった。フルサイズではなく小さい=ミニ、ということで「ミニバン」と呼ばれるようになったのだった。つまり相対的に小さくなったというのが正しい。
ではなぜダッジ・キャラバンはミニバンという俗称がつくほどヒットしたのか? カギを握るのは意外にも「女性」だった。郊外に住む比較的裕福な家庭では、学校への送迎はクルマが定番。さらに習い事なども子供の送迎は必須だった。日本とは違い、治安などの理由から、子供を徒歩などで単独で行かせるのは危険で、そんなことをすると児童虐待に問われる州すらある。
もっぱら送迎するのはママだ。フルサイズバンはさすがに広大なアメリカとはいえ、大きすぎて運転したくない。他家の子供も送迎する場合もあり、多人数乗車ならばなにかと便利。ミニバンならサイズ的にも運転しやすいし、セカンドカーとしても維持できる。そんなモデルとして登場したダッジ・キャラバンは大きさも手頃でピッタリで、絶好の「ママズカー」となり大ヒットしたのだった。
ミニバンはここから!
そもそも、なぜミニバンなのか? そのルーツはアメリカにあり
これでも小さくなって人気者!!
他メーカーも追従
▷新連載”ミニバンの起源” まとめはこちら
[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]