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  • 2017/07/08
  • Motor Fan illustrated編集部 鈴木慎一

TRBってなに? 洗車のついでに、Bピラーを見てみる

欧州・米国勢が使う差厚鋼板とは?

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マイカー、BMW320iのBピラー。TRB材を使っている。
あまりにも自分のクルマが汚れていたので、ちょっと洗車をしてみた。そのついで、Bピラーをまじまじと見てみる。BMW3シリーズのBピラーには、TRBという鋼板が使われているのだ。TRBとは、テーラー・ロールド・ブランクである。

忙しさにかまけて、まったく洗車していなかった自分のクルマ。現行のBMW3シリーズ・セダン。とりあえず、それなりに綺麗にしてドアを開けてみる。そこに見えるのは、Bピラーである。Bピラーというのは、フロントドアとリヤドアの間にある「柱」のこと。BMW車の場合、このBピラーには「TRB」と呼ばれる素材が使われている。

TRBとは、テーラー・ロールド・ブランク材のことで、日本語訳では「差厚鋼板」となる。つまり、1枚の鋼板を打ち抜いて、金型を使ってプレス成形するのだが、その鋼板の厚さが部分によって違う鋼板なのだ。
だから、テーラード・ブランク(TB)というわけだ。

自動車用ボディは、デザイン、強度、剛性、防錆、耐久、衝突エネルギー吸収などさまざまな性能が要求される。そのためボディ各部は細かく板厚や材質が設定されるわけだ。とはいえ、細かく板厚や素材を変えれば、ボディパネルの数も増えて、生産性も生産精度も下がってしまう。部品点数は少ない方がいいのだ。

テーラード・ブランクとは、溶接によって複数の鋼板を目的に合わせて仕立てたプレス素材のことをいう。TB材なら、1枚の素材の特性を部分的に変えられるし、部品点数も少なくできるわけだ。

ただし、板厚の違う鋼板を接合して1枚の鋼板にするので、どうしても接合部分が必要だ。これに対して、TRBは、間に入っているRが示すように、ローラーで圧延する際に、精密に板厚を変えた鋼板なのだ。高負荷がかかる部位は厚く、その他の部位は薄くできるので、軽量化につながる。また部品統合(レインフォースが不要になる場合がある)や組み付けを容易にできたりするわけだ。

この技術を持っているのは、ドイツのサプライヤー、ムベア社である。
TRB材を使うのは、もちろんBピラーだけではない。さまざまな部位で使用可能だ。BMWはBピラーやサイドシル、フロントやリヤのクロスメンバー、車種に寄ってはAピラーにもTRBを使う。
アウディ、VW、メルセデス・ベンツ、ボルボ、ルノーなどの欧州勢、GM、フォード、クライスラーのデトロイトスリーもTRBを使う。

一方、日本の自動車メーカーは、日本の優秀な鉄鋼メーカーの最先端の素材を使える。1.5GPa級の超高張力鋼板でも冷延できる素材が日本の鉄鋼メーカーから供給されるのだ。これは、間違いなく日本の自動車産業の競争力の一例である。そのおかげで、TRBの採用には消極的だった。

その日本勢にも変化の兆しがあるようだ。
スバルの新しいプラットフォーム、SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)を採用するインプレッサやXVの北米仕様のBピラーにはTRBが使われている。最も厚い部位で2.75mm、最も薄い部分で1.4mmのTRB材をスバルは使っている。この素材については、5月に開催された人とくるまのテクノロジー展で展示されていた。
いよいよ、日本の自動車メーカーもTRB材を採用するようになったわけだ。この流れが加速するかどうかはわからないが、素材や成形・接合技術の進化は日進月歩。ホットプレスがいいのか、コールドプレスがいいのか? スポットよりレーザー溶接がいいのか? はたまた接着剤がいいのか? 絶対的な正解はないだろう。

今回、7/15発売のMotor Fan illustrated Vol.130「剛性」と「強度」の取材をしていて、新しい知識を得ることができた。超高張力鋼板(ハイテン鋼)を使えば、それで軽くて剛性の高いボディができるわけではないし、アルミやCFRPが万能なわけでもない。ボディ(だけではなく、さまざまな部位の取材をした)設計者の発想力と、メーカーが蓄積してきたノウハウの上にしか、軽量・高剛性ボディは作れないのだと思い知ったわけだ。TRBについても詳しくレポートしているので、ぜひお楽しみに。


Motor Fan illustrated Vol.130「剛性と強度」
MFi Vol.130のテーマは、「剛性と強度」。高剛性ボディ、剛性感など、自動車雑誌では「剛性」はよく出てくるワードです。でも、剛性と強度がどう違うのか、じつはちゃんと理解していない人も多いと思います。今回は、自動車のボディ、モーターサイクル、クルマのハブ、ステアリング、ドアヒンジなど、さまざまな角度で「剛性と強度」を探ります。発売は7/15です!

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