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デンソー、東北大、筑波大のグループが世界初の快挙! 高性能レアアースフリー磁石の実用化に大きく前進!FeNi超格子磁石材料の高純度合成に世界で初めて成功

  • 2017/10/18
  • Motor Fan illustrated編集部
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NITE法によるFeNi超格子の合成スキーム

東北大学金属材料研究所の嶋田雄介助教、水口将輝准教授、高梨弘毅教授は、NEDOプロジェクトにおいて株式会社デンソーを中心とする産学連携グループとともに、鉄とニッケルが原子レベルで規則配列したFeNi超格子磁石材料の高純度合成に世界で初めて成功したと、10月18日に発表した。

FeNi超格子磁石は、高い磁石性能を期待されており、今回の成果は高性能レアアースフリー磁石の実用化を大きく前進させるものだ。
今後は、FeNi超格子磁石材料のモーター用永久磁石への適用を目指して、高い性能を引き出す材料形状や成形法を検討していくという。
この研究成果の詳細は、2017年10月16日に英国の科学雑誌Scientific Reportsに掲載された。
(以下プレスリリースより)

1.概要

現在、日本における総消費電力の過半は、モーターが占めている。加えて、自動車の電動化にともない、今後モーター需要の拡大が予想されている。そのため、中長期的なエネルギー需給戦略で、モーターの省エネ化は最重要課題のひとつとなっている。
モーターの効率は磁石や鉄心(軟磁性材料)などの磁性材料に大きく依存するが、NEDOプロジェクトにおいて、高効率モーター用磁性材料技術研究組合(以下、MagHEM)では、供給リスクの高い重希土類元素、いわゆるレアアース(主にジスプロシウム)、さらには希土類元素(主にネオジウム)を使用しない革新的高性能磁石の開発に取り組んでいる。
鉄とニッケルが原子レベルで規則配列したL10型の規則合金であるFeNi超格子は、1960年代に鉄隕石中から発見され、レアアースフリーでありながら高い磁石性能を持つことが予測されている。
MagHEMの組合員であるデンソー先端技術研究所が主体となって、東北大学金属材料研究所と構造解析を、筑波大学数理物質系と合成方法の開発を行なう産学連携グループにおいて、50年以上に渡って誰も成し得なかったFeNi超格子磁石材料の高純度合成に世界で初めて成功した。

今回、新たに開発した合成方法は、ガスとの反応を用いたシンプルなプロセスで工業的な生産に適していることに加えて、磁石材料に求められる単一相で粉末形状のFeNi超格子を得ることができる。この成果は、希土類元素をまったく使用しない高性能レアアースフリー磁石の実用化を大きく前進させるものだ。今後は、FeNi超格子磁石材料のモーター用永久磁石への適用を目指して、高い性能を引き出す材料形状や成形法を検討していく。

2.今回の成果

【1】FeNi超格子磁石の合成方法
一般的に規則合金は、ランダム合金を熱処理し、原子を拡散させることで得られる。FeNi 超格子 場合、規則化するための熱処理温度が320°C以下と低く、規則化には 10億年以上と天文学的な時間を要する。これまでに、拡散を促進するアプローチとして、中性子照射、高圧ひずみ加工、アモルファス金属のナノ結晶化などが提案されてきたが、規則度が低い、もしくは、含有率が低いといった課題が残されていした。
これを達成するために、規則化した安定中間物を経由した規則合金形成プロセスである NITE (Nitrogen Insertion and Topotactic Extraction)法を新たに考案した。
NITE法では、原料である(a)FeNiランダム合金の粉末を窒化することで、規則化した(b)FeNi 窒化物を合成し、その後、規則構造を壊すことなく窒素原子を引き抜くトポタクティック脱窒素により、短時間で高い規則度の(c)FeNi超格子を得ることができる。具体的には、窒化はアンモニアガスとの反応、トポタクティック脱窒素は水素ガスとの反応によって行なう。これらは非常にシンプルなプロセスであることから、工業的な生産に適して いる。

【2】合成したFeNi超格子の構造

X線構造解析結果(図中矢印は超格子に特有なピーク)

NITE 法で得られた粉末試料の 線構造解析結果(図2、なお左側は 25°~45°を50倍に拡大)、トポタクティック脱窒素後の試料のSTEM-EDX 像 から、Feと Niが原子レベルで規則的に配列していることが明らかになり(図3)、FeNi 超格子の合成に成功したことが確認された。また、中間物である FeNi 窒化物が単 一相で得られていることからも、FeNi 超格子も単一相で得られているものと考えられる。

図3 NITE法で合成したFeNi超格子のSTEM-EDX像 (a) 左図の結晶上面から原子像を観察した結果  (b) 左図の結晶側面から原子像を観察した結果

3.今後の予定

開発した NITE法は、ガスとの反応を用いたシンプルなプロセスであるため工業的な生産に適している。加えて、FeNi 超格子を単一相で、磁石化に適した粉末形状で得ることができる。これらの成果は、高性能レアアースフリー磁石であるFeNi 超格子磁石の開発を飛躍的に加速できると期待される。

今後は、FeNi超格子磁石のモーター用永久磁石への適用を目指して保磁力をさらに高めるための結晶方向の整列、粒子形状 制御や成形法を検討していく。

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