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日立がABB社のパワーグリッド事業を買収し、エネルギーソリューション事業を強化

  • 2018/12/19
  • Motor Fan illustrated編集部
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ABBのウェブサイトより

日立製作所は、17日、ABB Ltdのパワーグリッド事業を買収することを決定し、ABB社との間で買収に関する契約を締結した。日立は、2020年前半をめどに、ABB社から分社されるパワーグリッド事業会社に80.1%の出資を行うことで、同社を連結子会社化し、さらに、新会社発足から4年目以降に、完全子会社とする予定。

 近年、再生可能エネルギーの普及や新興国におけるエネルギーの需要・供給の増加、さらには、電気自動車、蓄電池などを活用した分散型電源の拡大、各国・地域における電力分野の規制緩和、電力システム改革の進展などで、パワーグリッド市場は大きく拡大している。2020年のパワーグリッドの市場規模は1,000億米ドル(約11兆円)*1以上で、2017年から2020年の年平均成長率は4%*1以上と着実な成長が予測されている。なかでも、再生可能エネルギーの普及および地域ごとの特性に応じた柔軟なエネルギーインフラの構築に貢献する、デジタル技術を活用した電力供給、貯蔵、制御を行う高度なエネルギーマネジメントシステムや次世代送電ネットワークの実現に向けたグリッド分野におけるイノベーションが急速に進んでいる。

 ABB社のパワーグリッド事業は、電力ネットワークの安定化のための保護制御システムや遠隔監視制御システム、ならびに、電力取引のための需給調整市場管理システムを手掛ける「グリッドオートメーション」、また、システムインテグレーションやサービスソリューションなどのデジタル変電所システム、高圧直流送電(High Voltage Direct Current/HVDC)システム、パワー半導体などの「グリッドインテグレーション」、さらには、ガス絶縁開閉装置(Gas Insulated Switchgear)などの製品を取り扱う「ハイボルテージプロダクツ」、鉄道向けの変圧器を主力製品とする「トランスフォーマー」の4事業で構成されており、いずれもグローバルトップレベルのポジションを有している。

 例えば、再生可能エネルギーの増加により、市場が拡大しているHVDCにおいては、世界中の直流送電系統の約半数を占める約120件、130,000メガワット相当の直流送電プロジェクトを手掛けるとともに、主要機器の大半を自社で開発、製造するなど、最先端の技術も有している。さらに、世界の主要電力会社に加えて、鉄道や石油などの天然資源、ITなどの幅広い業種の顧客基盤もグローバルに確立している。2017年の同事業の売上高は約100億米ドル(約1兆1,000億円)*2で、Operational EBITA*3は約10億米ドル(約1,100億円)。世界各国・地域に約100カ所の製造拠点やサービス拠点、さらには、約200カ所の販売拠点を有し、従業員数は約36,000人を数える。

 現在、日立は、「IoT時代のイノベーションパートナー」として、進化した社会イノベーション事業で顧客との協創を加速するため、グローバル推進体制の構築やフロントの強化を図るとともに、日立のOT×IT×プロダクトに関する知見・ノウハウを結集した「Lumada」を活用したソリューション事業を強化している。なかでも、電力・エネルギー事業は、「持続可能な開発目標(SDGs)」やSociety 5.0において掲げられている「豊かな社会」の実現を支える社会インフラの構築を担う事業として、日立の社会イノベーション事業の中核を担っている。
 また、日立は、パワーグリッド事業の強化を図るなかで、2014年12月にABB社と戦略的パートナーシップ契約を締結しており、2015年11月には、日本国内向けのHVDC事業に関する合弁会社が営業を開始したほか、国内電力事業者向けの電力システム改革ソリューションなどで共同事業を展開している。

 日立は、今回、ABB社のパワーグリッド事業を買収することで、同社が世界をリードするグリッドソリューションやプロダクトと、日立の有するデジタル技術を融合し、革新的なエネルギーソリューション事業をグローバルに展開する。さらに、社会全体でより効率的な電力の活用を実現するエネルギープラットフォームを構築することで、電力・エネルギー分野の枠を越えて、鉄道や電気自動車などのモビリティ分野、スマートシティ、ビルなどのライフ分野、生産設備、プラントなどのインダストリー分野においても進化した社会イノベーション事業を展開し、さまざまな業種の顧客に革新的なエネルギーソリューションを提供していく。

■ 日立製作所執行役社長兼CEO 東原敏昭氏のコメント
「デジタル技術により、グローバル社会が大きく変化し、エネルギーの需要・供給のスタイルが多様化するなか、今回の日立とABB社の合意は、世界の電力・エネルギー市場において大きな転換点になると確信しています。日立は、ABB社のパワーグリッド事業が有する強みと、日立のデジタル技術を融合し、エネルギー分野のイノベーションに貢献するエネルギープラットフォームを構築することで、ライフ分野やインダストリー分野向けにイノベーションを生み出し、社会課題の解決と人々のQuality of Lifeの向上に貢献していきます」

■ ABB社CEO ウルリッヒ・シュピースホーファー氏のコメント
「ABB社と日立は、パワーグリッド事業の統合により、同事業において、グローバルな社会インフラ分野における長期的なリーダーとしての地位を確固たるものとします。一方で、ABB社は、今回の事業統合をもって、これまで取り組んできた変革の成果を結実させ、デジタルインダストリー分野に注力していきます。日立は、ABB社のパワーグリッド事業を獲得することにより、同事業のポジションをさらに強化するとともに、エネルギーインフラ分野のグローバルリーダーとしての地位を確立することでしょう。今回の事業統合は、ABB社の株主にもリターンをもたらすものです。2014年に締結した戦略的パートナーシップに基づき設立した日立ABBHVDCテクノロジーズも、引き続き、事業を継続していきます」

 日立とABB社は、ABB社から分社されるパワーグリッド事業会社に対する事業価値について、110億米ドルで合意した。買取価格は、本事業価値から負債などを減じたうえで、当初の出資比率80.1%を乗じた64億米ドル(約7,040億円)を見込んでいる。ただし、今後、運転資本、純負債額などの調整をもって確定する予定。
 なお、本取引に関して、日立は、ファイナンシャル面において、単独メインアドバイザーとしてUBS、アドバイザーとしてゴールドマン・サックス証券から支援を受けている。

*1 日立調べ
*2 1米ドル=110円にて計算(以後、同様)
*3 Operational EBITAは、ABB社が用いる経営成績指標。詳細については、ABB社のForm20-Fを参照。

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