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スバルのAWDシステム4態、その特質

  • 2019/01/03
  • Motor Fan illustrated編集部
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スバルと言えばシンメトリカルAWD! そのスバルのAWDシステムには4つの種類があるのをご存じの方も多いはず。それぞれの特質をご紹介しよう。

アクティブトルクスプリットAWD

SUBARUのウェブサイトより
「ドライバーのスキルにかかわらず、あらゆる走行状況においてAWDのメリットを最大限に引き出すことができる安定性重視のAWDシステムです。前60:後40のトルク配分を基本に、加速、登坂、旋回などの走行状態に合わせてリアルタイムにトルク配分をコントロール。前輪のスリップを検知したときは、後輪へのトルクを増やして駆動力を確保できるよう制御します。一部車種には、VDCからのハンドル角、ヨーレート、横加速度信号などの車両情報をモニターすることでより緻密なトルク配分を実現する新制御を採用しています。」

 油圧式多板クラッチによるAWDシステム。ATで発生させる油圧(近年ではCVT油圧)をクラッチ制御用に分け与え、断続に利用する。

 インプットシャフト後端とアウトプットシャフト前端が入れ子状のカップ形状になっていて、その間を湿式多板のクラッチで接続する構造。そのクラッチを油圧で締結解放することで、前後のトルクを配分する。イニシャルセッティングは前軸配分が多め、前100:後0(厳密にはゼロまで至らない)から前後直結(50:50、ただしクラッチのトルク容量限界まで)の間で自在に変化させる。

 スバル車においては最大勢力といえるシステムで、中排気量車を主に多くのクルマに搭載される。

VTD-AWD

SUBARUのウェブサイトより
「シンメトリカルAWDによる基本的な走行安定性を維持しつつ回頭性を高め、積極的でスポーティな走行を可能にしたAWDシステムです。センターデフによってトルクを前45:後55に不等配分。後輪により大きなトルクを分配することによって、コーナーでのスムーズなハンドリングを実現します。また、走行状況に合わせてトルク配分を連続可変制御することにより、直進時の安定性も高度にバランスさせています。」

 VTDとはバリアブル・トルク・ディストリビューションの頭字語。センターデファレンシャルとは、前後の常時駆動力を配分する装置。傘歯歯車機構を用いれば50:50に、遊星歯車機構を用いれば歯数によって任意の不等配分とすることができる。VTD-AWDのセンターデフは副列式の遊星歯車機構を用いていて、前45:後55をイニシャルセッティングとしている。
 スバル車においては、大排気量の車両およびWRX S4に搭載されている。

 副列式の遊星歯車機構は、異径ながら歯数を同じにし同軸とした前後の遊星歯車をキャリアで保持、大径の第1サンギヤと小径の第2サンギヤと噛み合う構造。差動装置として機能する。
 たとえばインプットシャフト(第1サンギヤ軸)固定の状態でアウトプットシャフト(第2サンギヤ軸:後軸駆動用)が時計回りに回転したとき、同軸の遊星歯車は半時計周りに回転、勢いキャリアも半時計回りで回転する。キャリアは前軸駆動ギヤとして接続されているので、前軸と後軸は反対方向に回ることとなり、差動装置として機能することができる。
 このほか、油圧式多板クラッチによる差動制限装置も備える。

DCCD方式AWD

SUBARUのウェブサイトより
「より良く曲がり、より速く走る。まさに“意のまま”のドライビングを目指した電子制御AWDシステムです。前41:後59を基本にトルクを不等配分。遅れのないリニアな制御が可能なトルク感応機械式LSDと、緻密な制御が可能な電子制御LSDを組み込むことにより、より大きな駆動力を発揮しながら高い安定性を確保しています。また、ドライバーの好みやシーンに応じて電子制御LSDの効き具合を任意で設定することが可能です。」

WRX STIが搭載する6速MT。セカンダリシャフトの後端、丸囲みのあたりにDCCDが備わる。
DCCDユニット。中央に見える内筒状の部品が遊星歯車機構におけるサンギヤ、それを囲むように遊星歯車とキャリアが見てとれる。中央外周部には機械式LSDが、左側にはソレノイドユニット+多板クラッチが備わる。

 トルク感応式LSDと電子制御式LSDを組み合わせた、WRX STIに採用されるAWDシステム。遊星歯車機構はセンターデフとし、前41:後59の配分をイニシャルセッティングとした。

 直結四駆における駆動配分が荷重移動によってその都度変化するのと同様、センターデフ式でも前後荷重変化によって駆動力はパッシブに変化、差動制限装置を備えているのでアクティブに制御することもできる。DCCDではソレノイドで多板式クラッチをコントロールし、連続的な駆動力可変配分を実現している。もちろん、任意で差動制限力を設定することも可能。さらに、トルク差でクラッチを締結させるカム機構も組み込まれているのが特長である。

ビスカスLSD付センターデフ方式AWD

SUBARUのウェブサイトより
「SUBARUのAWDシステムで唯一電子制御を用いていない、もっともコンベンショナルなシステムです。駆動力を最大限に引き出す前50:後50を基本にトルク配分を適正化し、安心感のある走りからスポーティなドライビングまでオールマイティにカバーします。メカニカルならではのリニアで自然なフィーリングにより、クルマを操る歓びをより深く味わうことができます。」

 傘歯歯車機構のセンターデフとビスカスカップリングによる差動制限装置を組み合わせた、AWDシステムとしてはもっともベーシックなシステム。先述のとおり、傘歯歯車機構を用いているため、イニシャルの前後駆動力配分としては50:50。

 ビスカスカップリングとは、シャフト接続のインナープレートとケース接続のアウタープレートを複数枚置き、内部にシリコーンオイルを充填した構造の装置。シャフト側からの回転を受け、オイルを媒介してケースが回転するビスカスモードと、回転が続きオイルが発熱膨張することで容器内圧力が高まり、それによりインナーとアウターが接触して力を伝達するハンプモードがある。前者は通常走行時、後者は連続高回転時に生じる。

 スバル車としてはMT仕様にこのシステムが採用されていたが、国内仕様からMT車が消滅。2019年1月現在では日本市場では入手が不可能となってしまっている。

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