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金属のレーザー切断実現へ、航空・宇宙・電気自動車などの産業応用に期待 青色半導体レーザー装置の世界最高出力1kWを達成

  • 2019/01/29
  • Motor Fan illustrated編集部
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青色半導体レーザービームコンバイニング技術の模式図

NEDOプロジェクトにおいて、島津製作所と大阪大学は、青色半導体レーザー装置の世界最高出力1kWを実現した。

 青色半導体レーザー※1は金属に対する吸収効率が高く、赤外半導体レーザーでは困難とされる銅や金などの加工に適しており、次世代レーザー加工機用の光源として応用が期待されるほか、熱伝導型溶接※2やレーザーマーキング用の光源として用途が広がりつつある。一方で、数ミリメートル厚の金属の切断※3やレーザー焼き入れ※4、溶融・蒸散を伴うキーホール型溶接※5には、さらなる高出力化と高輝度化※6が必要とされている。
 そこで、NEDOプロジェクト※7において、島津製作所と大阪大学接合科学研究所 塚本雅裕教授らは、日亜化学工業の協力のもと、青色半導体レーザーの高出力化と高輝度化を追求してきた。

 そしてこのたび、島津製作所と大阪大学は、青色半導体レーザー装置の世界最高出力1kWを実現した。これは、同プロジェクトで開発した出力100Wの従来品※8の10倍の出力。この成果は、青色半導体レーザー光源単体の高出力化および高輝度化の実現と、5本のレーザーを集約して1つの光ファイバーに束ねるレーザービームコンバイニング技術の新開発によるもの。

 この高出力化によって、従来の青色半導体レーザー技術では難しいとされていた数ミリメートル厚の銅や金のレーザー切断加工、レーザー焼き入れ、キーホール型溶接などの実現に向けて前進した。高い精度が要求される航空・宇宙・電気自動車などの産業において、部品加工での利用が見込める。

 NEDOプロジェクトにおいて、島津製作所と大阪大学は、青色半導体レーザー光源のさらなる高出力化と高輝度化を目指すとともに、レーザービームコンバイニング技術をさらに改良し、レーザーを集約する光ファイバーのさらなる小径化を進める。

 なお、島津製作所は、今回開発した単体のレーザー(出力200W、輝度2.6×106W/cm2、直径100μm)光源を、同社が展開する青色半導体レーザー光源「BLUE IMPACT」シリーズに加えることを予定しており、2020年度の製品化を計画している。

今回の開発成果

(1)青色半導体レーザー光源単体の高出力化・高輝度化
 出力200W、輝度2.6×106W/cm2(直径100μm)の青色半導体レーザー光源を開発した。レーザー光源単体としても、世界最高の出力と輝度を達成することができた。なお、これまでの世界最高値は、本プロジェクト成果の従来品が達成した出力100W、輝度1.3×106W/cm2(直径100μm)であり、出力、輝度ともに2倍の結果が得られた。

(2)複数レーザーの集約技術(レーザービームコンバイニング技術)
 青色半導体レーザー光源単体から出力されたレーザーを1本の光ファイバーに集約するために、レーザービームコンバイニング技術を新たに開発した。この技術は、複数の光ファイバーに入力されたレーザーを1本の光ファイバーに集約して出力するもの。入力側光ファイバーの小径化と高い出力および輝度の両立を実現したことで、(1)で開発した高輝度青色半導体レーザー光源単体から出力されるレーザー5本を直径400μmの光ファイバーに集約し、出力1kWを達成した。集約後の出力側光ファイバーでも直径400μmの細さを実現しながら、レーザー加工に必要な高輝度特性を確保している。

 なお、島津製作所と大阪大学は、1月30日から2月1日まで東京ビッグサイトで開催される3Dプリンティング/AM(Additive Manufacturing)技術の総合展「TCT Japan 2019」に、今回開発した青色半導体レーザー光源(図2)、光源を搭載した加工装置、実際に加工したサンプル(図3)などを出展する。

図2 今回開発した青色半導体レーザー光源(図は出力200W光源2台を集約したもの)
図3 今回開発した青色半導体レーザー光源により溶接を行った純銅のサンプル。左:純銅パイプ(φ10㎜、厚み0.5㎜)の突合せ溶接サンプル、左端は銅とSUSの異種接合/右:溶接ビード部拡大

※1 青色半導体レーザー
波長400nm~460nmの範囲の青色光を発振する半導体レーザー。

※2 熱伝導型溶接
熱伝導型溶接は表面からの熱伝導で金属を溶かして溶接すること。出力100W級の青色半導体レーザーで実施可能な加工手法の一つ。

※3 数ミリメートル厚の金属の切断
レーザー切断加工は、レーザーを用いて材料を切断すること。一般的に熱伝導型溶接より高いレーザー出力が必要となる。

※4 レーザー焼き入れ
レーザー焼き入れは、レーザーを用いて金属組織を制御すること。レーザーを照射する面積にもよるが、一般的に熱伝導型溶接より高いレーザー出力が必要となる。

※5 溶融・蒸散を伴うキーホール型溶接
キーホール型溶接は、レーザーにより金属を蒸散させくぼみを作りながら溶接すること。一般的に熱伝導型溶接より高いレーザー出力が必要となる。

※6 高出力化と高輝度化
出力とは、レーザー光自体の強度。輝度とは、単位面積当たりの強度。従って、材料加工には、高い輝度を必要とし、高輝度化のためには高い出力が必要となる。なお、材料によってレーザー光の吸収効率が異なるため、最適化した波長のレーザー光を高出力かつ高輝度に照射することで効率の良い加工が可能になる。

※7 NEDOプロジェクト
高輝度・高効率次世代レーザー技術開発/次世代レーザー及び加工の共通基盤技術開発/レーザー加工プラットフォームの構築/高輝度青色半導体レーザー及び加工技術の開発(2016年度~2020年度(予定))

※8 従来品
(株)島津製作所の青色半導体レーザー「BLUE IMPACT」100Wモデルとの比較。
参考:2018年1月25日ニュースリリース 世界最高クラスの高出力・高輝度青色半導体レーザーを製品化へ

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