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鏡面研磨バルブの威力。ホンダ新型N-WGNも搭載するS07B型エンジン——安藤眞の『テクノロジーのすべて』第34弾

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ホンダS07B型エンジン

ノッキング耐性を高めるため。ガソリンエンジンはさまざまな手段を講じている。ホンダの軽自動車用エンジンであるS07Bには、排気バルブに鏡面研磨加工が施された。その理由と狙いとは。
TEXT:安藤 眞(ANDO Makoto)

 新型N-WGNに搭載されたS07B型エンジン。初出は17年デビューのN-BOXなので、ブランニューエンジンではないが、世界的にも珍しい技術が採用されているので、今回はそれを詳しく紹介したい。
 その技術とは、燃焼室側を鏡面研磨した吸排気バルブ。狙いは耐ノック性の向上だ。

ナトリウム封入バルブ@S07A型エンジン。先代N-WGNの登場時から採用された。

 S07型エンジンは、A型の途中で大改良が加えられ、排気バルブにはナトリウム封入式が採用された。ご存じの通り、これは耐ノック性向上のための定番技術だ。
 熱をため込みやすい排気バルブは、新気を加熱してノッキングを誘発する原因となる。そこでバルブステムを中空にして、金属ナトリウムを封入。排気熱で液化したナトリウムがバルブの上下運動に追随してステムの中を移動し、ヒートマスの大きい傘部から熱をステムに伝達。バルブガイドを通して放熱することで、傘の温度を下げてノッキングを防ぐという技術である。

S07Bで採用された鏡面加工バルブ。

 これに代わってS07B型に採用されたのが、鏡面研磨バルブだ。最初に話を聞いたときには、「さすがに軽自動車にナトリウム封入はコストが高すぎたのか」と思ったら、耐ノック性向上効果は、ナトリウム封入式の2倍もあるという。それでいてコストも安い。

 原理は極めて簡単。熱に曝される燃焼室側を研磨して表面積を減らせば、吸熱量が減って傘部の温度が上がりにくくなる、ということだ。しかも、通常は軽量化のために中央を凹ませる傘部裏は、凹みのないフラットな形状として、表面積を極限まで低減している。
 鏡面研磨すれば赤外線も反射しやすく、その効果もあるのだとすれば、ススが付着したら効果が落ちるのでは?と思ったのだが、「そういう実験もしてみたが、効果はほとんど変わらなかった」とのこと。表面積の低減による効果がほとんどのようだ。

 もっとも「ナトリウム封入バルブの2倍」というのは、ナトリウム封入の効果がそもそも少なかったのではないかとも考えられる。660cc3気筒エンジンでは、バルブステムの太さもそうそう太くはできない。それを中空にしても、内径はせいぜい2mmぐらいにしかならないはずで、登録車用のエンジンに較べると、放熱効果そのものが小さいことは、容易に想像が付く(とは、半ばイチャモンかも知れないが)。

 公式には謳われていない効果として、もうひとつ考えられるのが、冷却損失の低減だ。ナトリウム封入式は「放熱」であるため、バルブが吸収した熱エネルギーを外部に捨ててしまう。一方で鏡面研磨は「吸熱の抑制」だから、バルブに奪われる熱エネルギーは小さくなる。効果がどれくらいあるかは定かではないが、ノッキングの起点にならない吸気バルブも底面フラット+鏡面研磨しているところを見ると、冷却損失低減効果を狙っているのではないかと思われる。

 今後、鏡面研磨バルブが大きなエンジンにまで展開されていくかどうかは不明だが、こうした要素技術にもまだまだ「攻めどころ」があることを証明したのは紛れもない事実である。

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